nanacoポイントの付与率を1%から0.5%へ半減させるという、節約家にとっては残念なニュースが今年4月に発表されて以降、セブン&アイホールディングスの周辺ではトラブルが相次いで発生しています。
頼みの綱だった「セブンペイ」は、不正アクセス問題を発端に多額の被害を出してしまい、9月末をもってサービスを終了させることが先日発表されました。
電子マネーの先駆者であるnanacoが、今どのような課題を抱えているのか、nanaco愛用者の視点から考えます。
目次
セブンイレブンでポイント還元率を1%に戻すキャンペーンさっそく実施中
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ポイント付与率が半減してしまったnanacoですが、セブンイレブンで以前と同様に購入金額の1%のポイント還元をするキャンペーンがさっそく実施されています。
イトーヨーカドーなど他のセブン&アイ系列店では実施されておらず、セブンイレブンのみでの実施です。
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nanacoポイント半減の理由は「セブンマイルプログラム」の普及
nanacoポイントの半減は2019年7月から実施されています。
nanacoポイント半減により、利用者がただ損をしてしまうのかと言うと、そうではありません。
「セブンマイルプログラム」というセブン&アイ系列共通のポイントサービスを利用すれば、これまでどおり購入額の1%のポイント還元が受けられます。
nanacoカードのみで獲得していたポイント数を、nanacoカードと「セブンマイル」の合算で獲得するようになります。
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セブンマイルの1マイルはnanacoポイント1pに交換できます。
(※交換単位は50マイル→50nanacoポイント)
本来なら9月1日から、マイルからnanacoへの交換を上記のレートで実施する予定だったのですが、先日延期が発表されました。
セブンペイの不正アクセス問題で、システムのリリースに慎重になっているのかもしれません。
セブンマイルのnanacoポイントへの交換は、以前のnanacoポイント付与率を半減させた分の「損」を取り戻すカギです。
1日でも早く、交換ができるよう準備を進めてくれることを願います。
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nanacoではなく「セブンマイル」を推す事情は?
セブン&アイホールディングスが、多数の人に愛用されているnanacoカードのポイント付与率を半減させてまで、別のポイントサービス「セブンマイル」に誘導したがるのには、どのような事情があるのでしょうか。
nanacoは日本トップクラスの普及を誇る電子マネーです。
発行枚数は累計6,500万枚を超え、日本人の半数が所持している計算になります。
これだけ強いnanacoですが、サービス運営側にとってネックになっている点があります。
それはプラスチックカードだということです。
セブン側からnanacoカード所有者への情報発信がほとんどできません。
そのため、スマホのアプリ上でさまざまな情報発信のできる「セブンマイル」への誘導を進めているのだと思われます。
「セブンマイル」はセブン&アイ系列共通のポイントサービスです。
イトーヨーカドーとセブンイレブンで分断されていた顧客情報を、「セブンマイル」で統一して管理したいという狙いもあると思います。
「セブンペイ」終了により、レジ前で公式アプリの提示は必須に
セブンマイルを貯めるには、イトーヨーカドーやセブンイレブン等サービスごとに発行する公式アプリを、nanacoとは別にレジで提示しなくてはなりません。
レジ前でいろいろ見せなければならなくなると大変なのですが、これらを一画面にまとめていたのが、あの「セブンペイ」でした。
「セブンペイ」なら支払いから、nanacoポイント、セブンマイルの付与まで、ひとつで済ますことができたのですが、9月末にセブンペイのサービスを終了することが先日発表されましたので、もう頼れません。
面倒でも、サービスごとの公式アプリを提示することが、これからは必要になります。
WAONに学ぶ。サービス利用には「ポジティブな動機」が必要
同じくプラスチックカード型電子マネーのWAONでは、カード所有者の情報をネットで登録すれば、イオン系列店での支払いで2倍のポイントが得られる取り組みを始めています。
条件を満たすと、本来200円で1ポイントのところ、200円ごとに2ポイントつきます。
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この条件なら「WAONはよく使うし、会員情報を登録しても良いかな」という気持ちになる利用者が多いと思います。
まさに「ポジティブな動機」です。
しかし、nanacoの場合は「往来のポイント付与率半減」から、
で、サービスを使い始める利用者が少なくありません。
本当に普及を目指すなら「仕方なく」「しぶしぶ」ではなく、顧客が魅力を感じて使いたくなるように持っていく方が良かったのではないでしょうか。
トラブル続きのセブン&アイは息を吹き返せるか
筆者は10年前にnanacoを初めて使ったとき、「便利なものができたな」と感動したのを覚えています。
クレジットカードよりは発行のハードルが低く、プリペイド型だから使いすぎも防げる。
レジ前での動きもスムーズ&スマートで、ポイントもしっかり貯まる。
現金とスタンプカードでいっぱいだった財布を、すっきりさせてくれることにも魅力を感じました。
時代は変わり「キャッシュレス時代」が到来しましたが、かつて人々の生活を便利でスマートに変えたnanacoが、この波に乗り遅れてしまっているのは残念でなりません。
もう一度、ポジティブな気持ちで使いたくなるような仕組みを見せてくれることを、期待したいと思います。(執筆者:石田 彩子)
〈2019年11月1日追記〉
「イトーヨーカドー」および「セブンイレブン」では、7iD会員情報に登録した「nanacoカード」または「nanacoモバイル(Androidのみ)」での支払いであれば、アプリの提示不要でセブンマイルが貯まります。
nanaco以外の決済方法を利用する場合は、公式アプリの提示が必要となります。
また、「西武・そごう」「アカチャンホンポ」「ロフト」は決済方法に関わらず、それぞれの公式アプリの提示が必要です。