「有事の金」という言葉があります。
世界情勢が不安なときこそ自国の通貨が信用できなくなり、世界共通の唯一の価値基準ともいえる「金」が注目を浴びます。
古来からその流れは続いており今なお紛争が相次ぐなか、金の価値が取り沙汰されることが多くなってきました。
金への投資は今までの考え方でいいのでしょうか。
解説していきます。

目次
金の価格はこれからどうなるのか
買った金をどうすればいいか
世界情勢をとりまく不安はいつになっても先行きが見えません。
東西ドイツの統一など一部では解決したようにはみえても、各地で新たな火種が次々に勃発しています。
米ロ中と3大国の思惑、イギリスのEU離脱、日本もおなじように北朝鮮のミサイル威嚇や韓国や中国、ロシアとの領土問題、つい最近も韓国との歴史問題に端を発し隣国すら必ずしも友好とはいえない関係になっています。
そうした地政学的リスクが絶えないなか景気動向は混沌としており、株価、通貨不安が続いています。
金は希少価値の高い鉱物として古代から宝飾品として重宝されていますが、基本的にその考え方はかわりません。
これを「レアメタル」といいますが、金のほかにも銀、プラチナ、パナジウムなどがあります。
各々工業用としても材料として使われますが、金がその中でも世界共通の普遍的な価値基準とされ、各国の中央銀行でも外貨準備のひとつとして保有されています。
これまで人類が金を採掘した重量は約18万トンでオリンピックで使われるプール約4杯分ともいわれています。
まだ採掘されていない埋蔵金は約5万トンあるそうです。
このような限りある資源ですからその希少性が重視され、金が異なる通貨のあいだでも交換手段として成り立つのです。
金の価格変動
経済がうまくまわっている(景気がいい)時には、米ドルのような基軸通貨で決済しても問題がないのですが、世界情勢が不安な状況になると大国の通貨でさえも信用ができなくなります。
そのような状況では投資家は株式など金融資産を売って「金」を買う動きを見せます。
その流れが強くなればなるほど金の価格は上昇するのです。
反対に経済が活況になり株式などに資金が戻ってくると、金を売る動きが増えます。
同時に金価格も下落していきます。
金の希少性を維持する動き
しかし金相場は有事のときに2倍も3倍も膨れ上がるわけではありません。
代表的な指標とされる米シカゴのマーカンタイル取引所(CME)の金価格推移では2011年からの8年間、1トロイオンスあたり1,200USドルから1,500USドルの中におおむね収れんしています。
この価格帯のことをゴールドバンドといいますが、有事が勃発すると1,500USドルに近づき、工業用など実需で使う業界が手を出せない価格になってくることから、リサイクル金が市場に出回りはじめ価格が下がってきます。
また、経済活況になり金が売られ1,200USドルまで落ち込むと今度は金採掘業者の大手が生産調整を行います。
つまり採掘を抑えることで金の希少性を維持し、価格を維持しようとする動きがでてきます。
また、そのくらいの価格になると値ごろ感からインドや中国の中央銀行が大規模に金を購入しようとする傾向から、おおむねこの価格帯で推移しています。
金価格の動きを知ることで世界経済のリスク度合いを知ることができるほか、持っている株式などの金融資産のヘッジ手段として機能するともいえるでしょう。
金に投資するのはどうすればいいか

金投資は実際にどうすればよいのでしょうか。
いくつか方法があります。
金現物をもつ
いちばんわかりやすい方法です。
手元に金のインゴット(金塊)があるのですから。
しかしこれは現実的な方法とはいえません。
自宅に金塊を持っていることは盗難や火災により焼失する危険があります。
銀行の貸金庫に預ける方法もありますが、一番小さいサイスの貸金庫であっても年間1万円以上は手数料がかかりますし、営業時間しか出し入れすることができません。
万一持ち主が死んだ場合、相続手続が終わるまで貸金庫を開けることができないため遺族が遺産を特定するまで時間がかかることにもなります。
純金積立てをする
CMでもおなじみですが純金積立てという投資商品があります。
これは毎月決められた日に一定の金額分の金を買い続けるものです。
金価格が毎日刻一刻と経済情勢の応じて上昇下落を繰り返していますが、毎月同じ金額を買い続けることにより金価格が高い時には少なく、低い時には多く金を買い続けることができ相対的に持っている金の持値を下げることができます。
この方法を「ドルコスト平均法」といいますが、継続的に同じ財産を買い続けることでその財産の取得費を下げる効果があります。
安い時に買って高い時に売るのが投資の儲けとなりますが、まさに買値を安くする方法といえます。
買った金が重さに応じて金のインゴット現物に取り換えることもできますし、そのまま運用会社に預けておくことも可能です。
その場合、保護預かり手数料はかかりますが貸金庫と比べても安価で済みます。
金ETFを買う
金は前述のCME金価格のように国際的に統一された価値基準があることから、金価格に連動した投資信託があり、それを金ETFといいます。
金ETFは「投資信託」です。
金価格の上昇下落に相関して基準価格が上下楽します。
よって金融資産でありながら株式と逆の動きをみせる金ETFをもつことによりヘッジとして有効に機能すると考えます。
もちろん購入時、売却時や預けているだけでも手数料がかかりますが、売り買いが容易であること少額でも購入できること、ネット証券でも取り扱いしていることを考えれば一番身近に金投資が可能な方法であると考えます。
買った金(持っている金)をどうすればいいか

金はいつの時代になっても景気に大きく左右されない資産として長期保有しても決して損はない資産です。
ただ、投資対象として金を選んだ場合、売却する場面は必ずでてくるでしょう。(買いのタイミング、売りのタイミングの目途は前に説明したゴールドバンド)
1,200USドル~1,500USドルの価格帯のなかでどのように推移しているかがわかりやすい判断材料だと思います。
安く買って高く売りその利幅は儲けとなります。
金ETF、純金積立であれば証券会社などに売却注文をすれば、即時現金として使えますが、問題は金現物を売却する場合です。
ひとくちに金といっても金インゴット(金塊)の状態なのか、メイプルリーフのような金貨なのか、指輪やネックレスなどのアクセサリーとなっているのかによって売却場所は変わってきます。
とくにアクセサリーの場合、金の含有量によって買取価格は大きく変わります。
アクセサリーは加工したり表面処理をおこなう関係で金に他の金属を混ぜる必要があります。
金の含有量によって「24K(純金)」~「9K」と段階的にランク付けされています。
最近ではショッピングモールやリサイクルショップの中にも買取をしてくれる業者が増えてきました。
ひとつのショップに任せっきりにせず、複数のショップから見積もりをもらうなど売却先は慎重に選んでください。
資産価値は落ちにくい
金への投資は他の金融資産と組み合わせて、保有することによりヘッジ資産として役に立つほか、現物として持っていても資産価値は落ちにくいものです。
上手に活用しご自身の財産形成の一手段としてもいいと思います。(執筆者:番場 正志)