国民年金の「学生納付特例制度」を利用すると年金保険料の納付が猶予されるなどのメリットがありますが、その詳細についてはよくわからない人も多いでしょう。
私も理解していないことが多いので、国民年金機構の「ねんきんダイヤル」に電話し、不明な点について質問してみました。
目次
「学生納付特例制度」とは?
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まずは、学生納付特例制度の概要について簡単に説明します。
学生納付特例制度とは、20歳以上の学生が在学中は、国民年金保険料の納付が猶予される特例制度です。
対象者
(1) 大学、大学院、短大、高校、高専など、国が定めた学校に通う学生
(2) 本人の年間所得が「118万円 + 扶養親族等の数 × 38万円 + 社会保険料控除」より低い
申請場所
・ 自治体の国民年金担当窓口
・ 年金事務所
・ 在学中の学校等
申請に必要なもの
・ 年金手帳/基礎年金番号通知書
・ 学生証など
承認申請は毎年行う必要がありますが、年金保険料の未納期間が2年1か月以内ならさかのぼっての申請も可能です。
その後承認を受けると、国民年金保険料納付の猶予が認められます。
質問1:「学生納付特例制度」にはどんなメリットがある?
ここからは、私が「ねんきんダイヤル」に質問した事項について説明します。
学生納付特例制度のメリット
まず、「学生納付特例制度」のメリットについて尋ねたところ、次の回答がありました。
(2) 本人死亡時に遺族が遺族年金を受給できる
(3) 学生納付特例期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれる
中でも、特に重要なポイントとして担当者が挙げていたのが、学生納付特例期間でも障害年金や遺族年金が満額支給される点です。
学生納付特例制度と「障害年金」の関係
令和元年現在、障害基礎年金と遺族年金の受給額(満額)は、最低で年間78万100円です。障害の度合いや18歳未満の子どもの数により、受給額は増えます。
しかし、学生納付特例制度を利用していない場合、万が一学生時代に障害者になっても障害年金は支給されません。
つまり、学生特例納付制度を利用しているか否かで、年間約80万円の差が生じるわけです。
学生納付特例期間は年金受給資格期間にカウントされる
もう1つのメリットは、年金保険料未納付でも年金受給資格期間になることです。
たとえば、現役で大学を卒業後就職した人は、学生納付特例制度を利用していれば卒業後約8年で年金受給資格を得ることになりますが、そうでなければ資格取得までに10年かかります。
以上の回答から、学生納付特例制度を利用することのメリットはかなり大きいことがわかりました。
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質問2:学生納付特例制度の利用で将来の年金受給額はどうなるか?
次に、「学生納付特例制度」の承認期間に支払い免除となった分の年金保険料が、将来の受給額に影響するについても質問しました。
それに対しての回答がこちらです。
「特例期間は年金未払いでも受給資格期間に影響しないのになぜ?」と思う方もいるでしょう。
その理由は、老齢基礎年金の満額受給するための必要条件にあります。
20歳から60歳まで欠かさず納付する必要があります。
学生納付特例制度を利用した場合、その期間国民年金保険料は全額または一部未納状態となります。したがって、将来受け取る国民年金の額もその分減ります。
質問3:学生納付特例制度の「追納制度」について
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しかし「学生さんは就職後10年間国民年金保険料の追納が可能ですよ」と担当の方は言っていました。
その時の質疑応答がこちらです。
Q:未納分の国民年金保険料は追加で納付できますか?
A:「追納制度」ですね。
学生納付特例制度を利用した場合に限り、承認期間後10年以内なら未納分の国民年金保険料を追納できる制度です。
ただし、3年目からは加算金がプラスされます。
Q:「加算金」とは?
A:年度ごとの国民年金保険料に加算されるお金です。
「加算金」とは、未納した年金保険料につく利息のようなものです。
未納期間が長くなるほど高くなります。
それについては国民年金機構のホームページでもわかると聞いたので、さっそく調べて表にしてみました。
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卒業などで特例制度の期間が終わったあと、2年間は加算金がありません。
しかし、その後は数10円~数100円の加算金がついてきます。
これで、担当者が「余裕があれば追納はお早めに」と言った理由がよくわかりました。
Q:追納金は分割払いもできますか?
A:できます。一括だとかなりの金額になるので、分割納付している人が多いです。
ただし、具体的な追納金の額や納付方法については個別での相談となるため、最寄りの年金事務所に直接問い合わせるように言われました。
Q:追納できないまま10年過ぎてしまった場合の対処法も教えてください。
A:会社員の場合は70歳まで厚生年金に加入できますので、長く働けば厚生年金を増やせます。
60歳で退職する人や自営業などの場合は、65歳まで任意で国民年金保険料を納付できる「任意加入制度」で老齢基礎年金を満額に近づけることができます。
国民年金保険料の追納制度は、承認期間終了後10年を超えると利用できなくなります。
その期間内に追納するのが難しい場合は、60歳を超えても働くしかないようです。
学生特例納付制度についての情報を周囲の大人が正しく伝えることが重要
国民年金保険料の学生特例納付制度は、本来なら学生本人が知っておくべき情報です。
しかし、学生の多くは年金制度について意識していない場合も多いでしょう。
そこで、身近な大人が学生に正確な情報を伝えることが重要です。
特に高校生以上のお子さんがいる親は、今すぐ学生特例納付特例制度について正しく理解しておくことをおすすめします。(執筆者:大岩 楓)