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毎月固定で出ていく「電気代」
最新の家計調査発表を見ると、家計消費支出29万2,628円/です。 月に占める電気代は1万2,074円/月と、実に約4%相当
電気代を節約できるように工夫を重ねている方は多いと思います。

実際、日本全体で見ても、電力の最終消費量は2007年の3,821ペタジュールをピークに2017年には3,470ペタジュールまで減少し、省エネが進んできているのです。
ですが、「いろいろ工夫しているのに、なかなか電気代が減らないな…」と感じている方も多いのではないでしょうか?

ぐんぐん上昇が続いている電気料金

それもそのはず、資源エネルギー庁が発表しているデータによれば、「1kWhあたりの電気代(家庭向け)」は2010年度に「20.4円/kWh」であったものが2017年度には「23.7円/kWh」と実に約16%も値上がりしているのです。
さらに、小売物価統計調査で最新の状況を見てみると、モデル世帯(東京都区部/1か月441kWhの電気を使用)の電気料金は、2017年1~7月の平均が1万2,029円/月であったのに対して、2019年1~7月の平均は1万3,594円/月と、直近2年間で実に13%も値上がりしているのです。
劇的な変化を生み出せていない電力自由化
2016年4月に電力小売全面自由化が始まってから数年が経ちました。
しかし、2018年9月時点における低圧分野(=主に家庭向け)の新電力のシェアは11.7%にとどまっています(販売電力量ベース)。
また、新電力の中での事業者シェアを見ると、上位3社(東京ガス・KDDI・大阪瓦斯)で合計41%ものシェアを占めています。
電気料金のプランや計算方式は複雑で、単純な料金比較が難しいものです。
そんな中、分かりやすい「セット割」を提供できる事業者が選ばれているということでしょう。
一方、資源エネルギー庁が発表している規制料金(従来通りの電気料金)と新電力の料金の比較を見ると、新電力の平均料金単価のほうが安いとはいえ、その差は1円/kWhに満たないレベルです。
電力自由化による消費者メリットはまだまだ十分に生まれていないと言えます。
参考元:資源エネルギー庁 電気料金の検証2018年12月1(pdf)
電気料金はなぜ上がっている?
資源エネルギー庁の発表資料には「原子力発電の停止影響を補うために石油火力やLNG火力の発電量が増加したこと」が影響のひとつとして挙げられています。
原油価格の見通しは2030年、2040年に向けて長期的には上昇が予想されており、このままの電源構成では電気料金はさらに値上がりしていく可能性があることも予想されています。

一方、もうひとつの影響として、再生可能エネルギーの割合を増やしていくために2012年から導入されている「再エネ促進賦課金」の影響が挙げられています。
電気代の請求書をよく見ると、「再エネ促進賦課金」というお金が加算されているのをご存じですか?
この「再エネ促進賦課金」の単価は、2012年に月間使用電力量260kWhの平均モデル世帯で0.22円/kWh(月57円程度)だったものが2019年には2.95円/kWh(月767円程度)まで大幅に上昇しているのです。
「再エネ促進賦課金」とは、2012年に再生可能エネルギーで発電された電気の「固定価格買取制度(FIT)」が導入されたのと同時に設定が開始されたものです。
要するに、再生可能エネルギーの利用を増やしていくために、電力会社は再生可能エネルギーで発電された電気を定められた価格決定方式で買い取らなければならないのです。
そして、そのコストを電気の利用者も「賦課金」という形で負担しなければならない、という仕組みです。
これからどうなる? 電気料金
日本の電源構成に占める再エネ分(水力除く)の構成比の推移をみると、2010年度が2.2%、2017年度で8.1%です。

国民全体で、決して安くはない額の再エネ促進賦課金を負担していても、この程度の割合までしか増えていないのです。
再生可能エネルギーの設備容量は物凄い勢いで増加していますが、まだまだきちんと電気を生み出せるようになっておらず、また、生み出された電気をきちんと電源に取り込め切れていないことが背景にあると言われています。
また、再生可能エネルギーで電気を生み出していけるようになった分、既存の発電方式による発電量を上手にコントロールしていくことも必要ですが、そうした最適化についてもまだ十分に行いきれていない状況にあると言われています。
また、山を乱暴に削って太陽光パネルを敷き詰める等、再生可能エネルギーを生み出す過程で実は環境破壊が進んでしまっているのではないかという声も聞かれ始めています。
特別措置法であるFIT法には「2020年度末までに抜本的な見直しを行う」旨が規定されており、現在まさに見直しに向けた検討が始まっています。
私たちの経済の基礎であるエネルギーの動向を大きく左右する動きですので、しっかりと注視していくことが必要です。(執筆者:独旦寺 悠々)