最新の家計調査によれば、二人以上の世帯における1か月の上下水道料は2019年6月時点の平均で5,104円/月となっています。
加えて、1本100円程度する2リットル入り大型ペットボトルのミネラルウォーターを1日1本買って消費しているとすると、毎月合計約8,000円強を「水」に使っていることになります。
「水」代は、決して安くはないのです。

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値上がりが進むミネラルウォーター
生活用水として水道水を使いつつ飲用・料理用にはミネラルウォーターを使っている、という方は多いかと思います。
ミネラルウォーターの国内生産金額は2000年時点では1,000億円にも満たないものでしたが、2018年には3,000億円近い市場規模まで成長しています。(参考元:食品産業新聞社)
おいしくて安全な水へのニーズが年々高まりを見せているということでしょう。
2019年に入り、日々の暮らしに欠かせないミネラルウォーター、それも、生活に直結する大型ボトル入りのミネラルウォーターの値段が大きく上がりました。
サントリー食品インターナショナルは、2019年5月1日出荷分から「天然水」の1.5リットル、2リットル入り大型ボトルを20円値上げしました(コカ・コーラボトラーズジャパンの「い・ろ・は・す」の2リットル大型ボトルは2019年4月1日出荷分から、アサヒ飲料の「おいしい水」の2リットル大型ボトルは2019年5月1日出荷分から、同様に20円値上げとなりました)。
サントリー天然水といえば、1990年から「ジョージア」が28年間首位となっていた国内清涼飲料水市場で2018年に年間販売数量No.1となったほどの大人気商品であり、愛飲されている方も多いかと思います。
値上げの影響は、決して小さくはないでしょう。
なぜ上がった? 大型ペットボトル入りミネラルウォーターの値段

各社の発表によれば、今回の値上げは、物流費や段ボールなどの梱包資材費の上昇が主な要因とのことです。
そうした各種コストの上昇は、水のペットボトルに限った話ではないようにも思いますが、もともと、こうした大型のペットボトル商品は、競争上、店頭で、同じ内容物が入った小さめのペットボトル以上に割安な実売価格がついていることも多く、メーカーにとっても利益率が薄い商品であったと言われています。
したがって、昨今起きている各種コストの上昇を吸収する余地がいよいよなくなってしまったのだろうと考えられます。
最新の小売物価統計調査を見てみると、実際に物価が上昇していることが確認できます。
「ミネラルウォーター(2,000ミリリットル)」の品目については、長らく93~96円のレンジで安定的に推移していましたが、2019年5月に99円、2019年6月にはついに101円を記録しました(東京都区部)。
「水サービス」の市場にも変化が
ペットボトルの水は値上がりとなりました。
一方、「水サービス」の市場にも変化が起き始めています。
「水サービス」の市場においては、従来は「ウォーターサーバーのレンタル代は無料、自宅に宅配される水代が従量料金」という形態のサービスが主流でした(いわゆる「宅配水」)。
しかし昨今、水道直結型浄水器を取り付けるタイプの「定額制サービス」が台頭しはじめてきています。
いくら浄水を使っても料金は一定、おまけにメンテナンスのサービスもついてくる、というようなサービスが話題を集め始めています。
確かに、宅配型の場合、どうしても「宅配コスト」がかかるため、自身で重たいペットボトルを買いに行くのに比べて便利とは言え、水代は比較的割高であることが一般的でした。
それに比べると「定額制サービス」の場合は月4,000円前後の料金で利用できるものも出てきており、使用する水の量によっては、宅配型より安いのはもちろんのこと、ペットボトルの水を買いにいくよりも割安になるケースもあるでしょう。
プラスチックレスという観点からは環境にも優しいと言えます。
ただし、浄水器を購入するのとどちらがお得かどうかや、レンタルされる浄水器の性能等については、しっかりと吟味したほうがよいでしょう。

水道水も値上がりの可能性が
一方、飲用・料理用にミネラルウォーターを使用してきていた人の中には、値上げを受けて水道水の使用に切り戻そうと考える人が出てくるかもしれません。
「水サービス」についても、定額制サービスが登場してきているとはいえ、月間で4,000円~程度の料金がかかるサービスを導入することに躊躇してしまう世帯も少なくはないでしょう。
一方、日本の水道水は、おいしく安全で、しかも、1リットルあたりの金額でいえば圧倒的に安いものです。
しかし、そんな水道料金の値上がりが、今、じわじわと進みはじめているのです。
水道は、水道法により、地方公共団体が運営する水道局によって営まれ、原則、水道料金による独立採算制で運営することが定められています。
水道料金は、地域によって大きく変わります。
一方、家計調査で推移をみると、2000年からの約20年間、毎年平均して0.3%ほどのペースでじわじわと水道代の支出が増えていることがわかります。
この背景には、各地域でじわじわと水道料金の値上げが進んでいることがあると言われています。
各自治体における水道の経営状況は非常に厳しいと言われており、今後、さらなる値上がりが進んでいくことが予想されています。
2019年8月23日には、静岡市が水道料金を来年4月から約15%値上げする方針を発表したことが報じられました。
水道法改正後の各自治体の議論を注視しよう
このような水道運営を巡る厳しい状況を打開するために、水道の運営の仕方を改善・多様化していくための取り組みを円滑化していくことを狙いとした水道法改正案が、2018年12月6日の衆議院本会議で可決されました。(参考元:厚生労働省)
この改正案を巡っては反対の声も聞かれますが、いずれにしても、このまま何の手も打たずに水道事業を続いていけば、人口減少や老朽化した設備の更新の必要性などから、いずれ大きな料金値上げは避けられないということが明らかになっています。
改正水道法が施行されると、各水道事業者は、3~5年に一度、料金の検証と見直しを行うことが求められていく予定です。
水道法改正について、一律に良い悪いと騒ぐのではなく、この法改正をふまえて、実際に水道事業の運営を行っている各地方自治体が個別具体的にどのような決断をしていくのかをこそしっかりと注視していくことが重要です。
そして、具体的な成功例を積み上げていくことが重要です。
大阪市では、早速、2019年2月に、民間と協業する形の水道事業の新しい運営方針について、素案の公表が行われました。
水は貴重な資源です。
改正水道法の2019年10月1日施行に向けて、状況変化をしっかりと追っていきましょう。(執筆者:独旦寺 悠々)