シェアリングエコノミー後進国と言われる日本ですが、新しい働き方としてシェアリングエコノミーが徐々に増えてきました。
シェアリングエコノミーとは、人・物・場所・住居・乗り物など個人が所有する遊休資産を、インターネット上のサービスを介して貸し借りや交換、代行することで成り立つ経済の仕組みのことです。
使われていない自動車や住居の貸し出し、専門業者に依頼するまでもないような軽作業や買い物代行など、その分野は多岐に亘ります。
シェアリングエコノミーの中でも、手持ちの自転車を活用して配達代行を行うフードデリバリーの「Uber eats」の配達員や物流版Uber eatsとも呼ばれる「DIAq(ダイヤク)」などは、だいぶ有名になってきましたね。
前回に引き続き、今回も、その配達員などに必要な保険を紹介、解説します。

目次
自転車配達員に必須:保険施設所有者倍責任保険
自転車を使用する場合に、歩行者と接触したり負傷させるリスクがあります。
Uber eatsを例に取ると、業務中にはUber側で加入している賠償保険の適用が受けられます。
ところが、Uber eatsの保険には落とし穴があり、業務中の定義は「店舗で料理をピックアップし、依頼者に届ける間」のことを指します。
・アプリが鳴って(リクエスト)から店舗にピックアップに向かう最中
・待機中
は、Uber eatsの保険は適用されません。
普通に無保険状態です。
また、何らかの個人賠償保険に入っている人もいるようですが、個人賠償保険では業務中の事故は補償されません。
ただし、配達エリアに向かう通勤中であれば補償されます。
保険が切れ目なく適用されるようにしておくのがベストですので、業務用の保険に加入するのが必須と言えるのではないでしょうか。
業務遂行中の賠償事故に対応:施設所有管理者賠償責任保険
自転車を施設とみなして自転車そのものに保険をかけます。
保険の名前に施設所有管理者とついていると何か建物の管理と思われそうですが、この保険は、
です。
配達という業務遂行の際の賠償事故に対応できます。
になると思いますので、これが1番安価かと思います。
保険会社によっては同様の役割の保険でも名称が異なるものがありますが、
と伝えると業界の人間なら分かります。
なお、個人賠償保険のような示談代行サービスはありません。
その他必要に応じて検討したい保険

その他に必要に応じて検討したい保険を紹介いたします。
個人事業主であり、労災適用がないだけに自分自身の保険も考える必要があります。
ここでは「補償(損害の回復、主に損害保険)」と「保障(生活の維持、主に生命保険)」という言葉は、明確に使い分けております。
1. 普通傷害保険・交通傷害保険
です。
「普通傷害保険」は、日常生活、仕事中やスポーツ、レジャー中などのさまざまな事故によるケガを補償します。
「交通傷害保険」は、交通事故(日常生活・仕事中)に補償範囲を絞るため、割安です。
ケガにより死亡・後遺障害、入院・手術、通院すると支払われます(入通院は日数による)。
保険料は補償額の設定次第で変わります。
自分自身の負傷は収益減にも直結しますので、医療費のカバーだけではなく休業のリスクも含めて補償額を検討するとよいでしょう。
2. 就業不能保険
です。
生命保険会社では、就業不能保険や就業不能プランのような名称であったり、給与サポート保険、総合収入保障保険、生活保障特則付家族収入保険など名称はさまざまです。
損保会社には、長期就業不能所得補償保険(GLTD)、所得補償保険があります。
病気による就業不能まで保障範囲に含まれるため、保険料水準は決して安いものではありませんが、特にご家族の大黒柱の方は検討の価値があります。
3. 自動車保険・交通乗用具特約付人身傷害補償
現在ごく一部の損保会社でしか取り扱いがありませんが、自動車保険のケガの補償の1つである人身傷害補償を交通事故全般にまで拡大した特約を取り扱っている保険会社があります。
自転車搭乗中にケガをしたら自動車保険の特約で補償を受けられます。
受けられる補償内容は、
・休業補償
・慰謝料
などです。
逸失利益などで後遺障害を被るようなケガを負った場合には、他の保険より1桁多い保険金が払われることもあります。
補償内容の見方によっては完全に政府労災の上位互換であり、この特約は家族全員に適用されます。
治療費の実費や交通事故によるケガで働けない時の休業損害まで出るのですからこの用途においては非常に割安です。
大学生がバイト代わりに配達をやっている場合は親御さんに保険の切り替えを頼んでみてください。
自動車保険として見るとネット型より割高に感じるこの保険ですが、
となると多いに検討の価値があります。
自分の業務内容と保険との関係を整理する
保険は助け合い制度などと言われることもありますが、事業者サイドからすれば、その位置づけは「他人が損失を肩代わりしてくれる道具」なのです。
どのような損失を肩代わり、つまり、代わって支払って欲しいのか、どのようなリスクに備えたいかなどは、各自の考え方や働き方、扱う荷物によっても変わってきます。
なんでもかんでも保険に肩代わりさせようとすると保険料がバカになりませんので、自分の業務内容に合わせた内容をオーダーするのが肝要です。
バイト代わりに働いてみただけなのに歩行者を跳ねて多額の賠償を追うなどしゃれになりません。
事業主としての自覚をしっかりもって臨みましょう。(執筆者:原山 栄治)