9月3日に行われた第5回デジタル・ガバメント閣僚会議で、「マイナンバーカード」の普及策について、具体的な方針が打ち出されました。
マイナンバーカードは、2016年の開始から2年以上経過しましたが、交付は現在約1,700万枚で普及率はわずか14%に留まります。
開始前に目標に掲げていた「2019年3月末時点で8,700万枚」には遠く及びません。
そこで2020年に、マイナンバーカード保持者が、別途発行される「マイキーID」と紐づけたキャッシュレス決済を行う場合に、事前チャージで25%相当のポイントを還元する制度を導入する方向で検討を進めているそうです。
驚異的な還元率ですが、果たして本当にマイナンバーカードの普及や消費支援につながるのでしょうか。
目次
事前チャージで驚異の還元率25%
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驚異の還元率で付与されるポイントは「マイナポイント」と名付けられています。
先日、総務省の専用サイトもOPENしました。
「マイナポイント」の付与にマイナンバーは直接使いません。
マイナンバーカード保持者がオンライン上で別途手続きを行うことで、「マイキーID」という別のIDが発行されます。
「マイキーID」と「〇〇ペイ」などのキャッシュレス決済を紐づけた場合に、事前チャージで「マイナポイント」を国が付与します。
チャージ額2万円に対して5,000円程度のポイントを還元する案が、今のところ有力案として挙がっています。
ちょっと見られないような還元率です。
nanacoなどプリペイド方式のキャッシュレス決済では、クレジットカードを使ってチャージを行うことで、チャージ分と決済分のポイントを二重取りする策が使えます。
節約家の間では浸透しているワザですが、最近ではカード会社がこれを警戒して、ポイント付与の対象外にしたり限度額を設けたりするのが一般的です。
このような時代背景の中、チャージで大量のポイントを付与しようという方針に、マイナンバーカードの普及現状に対する国の焦りを感じます。
マイキーID発行までの遠い道のり…追加コストも必要
25%という驚異的な還元率なら、すぐにでも手続きをしたいと感じる方は多いと思います。
しかし、「マイキーID」発行の手続きはなかなか大変です。
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マイキーIDが発行されるまでの道のり
(1) マイナンバーカードを発行してもらう
マイナンバーカードの発行には
・ パソコンかスマホ
・ 証明写真機
の3つの方法があります。
いずれも、自宅に送られてきた「マイナンバー通知カード」(※通知機能のみでマイナンバーカードではない)の下についていた「個人番号カード交付申請書」を使用します。
・郵送
「個人番号カード交付申請書」に必要事項を記入し、写真を貼ってポストへ投函
・スマホかパソコン
専用フォームから「個人番号カード交付申請書」に記載された申請書ID等を入力し、顔写真の画像とともに送信
・証明写真機
機械で証明写真を撮ったあと、申請書IDを入力
どの方法で申請しても、1か月程でマイナンバーカードが自宅に届きます。
(2) 専用サイト「マイキープラットフォーム」から活用ソフトをダウンロード
専用サイト「マイキープラットフォーム」にPCからアクセスします。
そこからマイナンバーカードの情報を読み込むための専用ソフトをダウンロードします。
(3) ICカードリーダーライターかスマホでマイナンバーカード情報を読み込む
専用ソフトをダウンロードできたら、ICカードリーダーライターか、公的個人認証サービス対応のスマホをPCに接続します。
マイナンバーカードの情報をカードリーダーライターかスマホから読み込み、専用ソフトに情報を送信します。
筆者はここが最大の難関だと感じます。
まずPCがなければ手続きできませんし、カードリーダーライターは2,000円~4,000円ほどします。
5,000円のポイント還元を受けるために、3,000円のハードウェアを買うのは気が引けます。
参考:価格ドットコム ICカードリーダーライター 通販 価格比較
また、公的個人認証サービス対応のスマホでも同様の操作はできるのですが、対応しているスマホが少ないです。
iPhoneは現状では対応していません。
参考:マイナンバーカードに対応したNFCスマートフォン(PDF)
獲得したマイナポイントは何に使えるのか?
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苦労して5,000円分のマイナポイントを獲得しても、使える先が限られていればあまり意味はありません。
例えば、国が地方振興を支援するために、「自治体ポイント」への交換に限定するような展開も筆者はあり得ると思います。
自治体ポイントは、マイナポイントと同様に「マイキーID」を使用して付与されています。
発行している自治体は2019年5月時点で約100。
これは全国の自治体の5%に過ぎません。
地域のアンテナショップや地元商店街での使用に限られているケースも多いです。
参考:自治体ポイントナビ
「マイナポイント制度」今後の動きに要注目
増税に関わる消費支援政策を単一で行うのではなく、キャッシュレス決済やマイナンバーカードの普及など、何か他の目的とくっつけて実行しようと国が画策する場面を最近よく見かけます。
便乗して「あれもこれも」と達成しようとすると、制度が複雑になり、消費者にとって使いにくい「支援策」になることが懸念されます。
獲得したマイナポイントが、楽天スーパーポイントやdポイントなどの有名どころに交換できれば、手続きの手間を考えてもなかなか魅力的な制度だと思います。
まだ不明な点も多いため、続報にアンテナを張っていきましょう。(執筆者:石田 彩子)