フリーランスが確定申告をするときに一番迷うところが「費用計上」ではないでしょうか。
売上や社会保険などは計上する数字が確定しているため、その数字をそのまま計上します。
一方の費用は、「使った金額」や「請求がきた金額」をそのまま計上してはいけません。
なぜならば、確定申告で計上する費用金額は「仕事で使った分のみ」だからです。
今回は、筆者の経験を踏まえて、とくに初めての確定申告でフリーランスが迷いやすい3つの経費計上について、わかりやすく解説します。
目次
1. 家賃や光熱費の費用計上(自宅=仕事場の場合)
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フリーランスには、職場を自宅兼用にしている人と仕事専用の仕事場を持っている人がいます。
仕事専用の仕事場を持っている人は、仕事場にかかる住居費をすべて費用計上することができます。
一方、仕事場と自宅を兼用している人は費用を2つに分ける必要があるのです。
筆者は自宅と職場が兼用のため、フリーランスになったときに「分ける割合」でとても迷いました。
とくに
「税務署が許す割合はどれくらいまでなのか」
が、わかりませんでした。
例えば、仕事を1日に8時間する人は、1日24時間の約33%を仕事に費やしています。
つまり、1日の33%は自宅が職場になっていると考えることができます。
職場として自宅を使っている時間は、家の光熱費も仕事上必要な費用、つまり経費になるでしょう。
また、部屋がいくつもある豪邸の一室で仕事をしている人は、請求書の金額を部屋数で割ってから仕事時間の割合を出せばより正確です。
フリーランスになったばかりのときは、「税務署からの問い合わせ」が怖いものです。
費用計上についても「税務署が許す割合はどれくらいまでなのか」が気になるでしょう。
しかし、費用計上は数字に根拠があれば問題はなく、費用計上には法に基づいた具体的な基準がありません。
気にすべきところは「許す割合」ではなく「根拠がある割合」を割り出すことです。
2. 備品消耗品費の費用計上
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年末になると家電量販店で「9万9,999円」の表示をよく見かけます。
確定申告と無縁な人は「いっそ1円プラスして10万円にすればいいのに」と思うでしょう。
しかし、この1円にはとても深い意味があります。
フリーランスは確定申告によって支払う税金額が決まります。
支払う税金額を少なくする一番簡単な方法は「経費を増やすこと」でしょう。
税金は「売上-経費」をもとに計算されるため、経費を増やせば税金を減らすことができます。
そのため、利益が想定外に出た年の年末には、急いで経費を使うために家電量販店を訪れるフリーランスがいるのです。
しかし、仕事で使う物の買い物ならばすべて経費なるというわけではありません。
白色申告者は、経費計上できる物は10万円未満です(青色申告者は30万円未満)。
10万円以上になると金額を3で割って3年に分けて費用計上することになります。
さらに20万円以上になると「資産計上してから減価償却する」という複雑な処理が必要です。
手軽に税金額を抑えたいならば10万円未満の備品消耗品を購入するといいでしょう。
家電量販店は、年末に節税対策で10万円未満の商品を探しにくるフリーランスがいることを知っています。
そのため「9万9,999円」という微妙な額のセール商品があるのです。
もしも「今年は想像以上に利益が出た」と思ったら、来年買おうと思っていた備品を前倒しで年内に購入するだけでも節税対策になります。
3. 福利厚生費の計上
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会社員には社員旅行や祝金などの福利厚生があります。
それらの費用は福利厚生費として認められている会社の費用です。
福利厚生費とは、従業員の労働意欲向上などを目的して使われるお金をいいます。
フリーランスの人も、ときには会社員と同じように労働意欲向上のために旅行に行ったり、運動不足解消のためにスポーツジムに行ったりしたいと思うでしょう。
しかし現実的にはフリーランスが福利厚生費を計上することは難しいようです。
なぜならば、フリーランスは雇用主であり従業員でもあるからです。
福利厚生費の原則である「従業員のため」という線引きがフリーランスには難しいのかもしれません。
経費計上のポイントは「数字に根拠」があること
確定申告の費用計上で一番大切なことは、数字に根拠を持たせることです。
「なんとなく」や「だいたい」で出した数字は、税務署も疑問を持ちやすくなります。
とくに、毎年似たり寄ったりの金額を計上していた経費が突然あがったり下がったりしたときには注意が必要です。
もしも理由があって経費計上に変化があったのならば、理由を「本年中における特殊事情」欄に書きましょう。
「本年中における特殊事情」欄は、自由に説明を書ける場所です。
税務署は、疑問に思ったところやあやふやな点を突いてきます。
確定申告の経費計上は、人や仕事によって内容が異なり、「これが正解」という基準も少ないため、迷うことが多いものです。
迷ったときには、自分の経費計上の基準を作ってみましょう。
そして、数字を出した根拠や算出過程はメモにして残しておくといいでしょう。(執筆者:式部 順子)