Q:「令和1年6月1日に相続が発生し、相続人が3人います。
被相続人の財産の中に賃貸不動産がありますが、相続人同士の遺産分割協議が済んだのが、10月31日です。
遺産分割前の6月から10月までの賃料収入は誰のものになるのでしょうか」

目次
解説
通常、遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼります(民法909条)が、賃貸不動産の賃料まではさかのぼりません。
1. 最高裁の判決
平成 17年9月8日、最高裁で以下の判決がおりました。
(1) 賃貸不動産である土地建物と賃貸不動産からの賃料収入は別の財産であり、 賃貸不動産の帰属を決めたからといって、賃料の帰属を決めたことにはならない。
(2) 相続開始日までさかのぼるとされる遺産分割の効力が、賃貸不動産に及んでも賃料債権には及ばない。
2.「賃料収入の帰属」の取扱い

最高裁の判決を受けて、
遺産分割前の賃料収入は、遺産分割を経ることなく、各共同相続人に対して、それぞれの相続分に応じて分割されて帰属する
こととなります。
つまり、相続開始から遺産分割協議までの賃料は、3人の相続人が相続分に応じて取得するということです。
3. 対策
賃料は賃貸不動産とは別個の共同財産ですが、相続人全員の同意があれば遺産分割協議書に記載することができます。
つまり、土地建物を相続した相続人に賃料収入を帰属させたい場合には、遺産分割協議書に
「今回の相続発生から本遺産分割協議書作成までの間に、各遺産について発生した収益及び費用については、各遺産の相続人が取得及び負担するものとする」
と記載すればよいのです。
要するに
相続発生から遺産分割協議書作成までの賃料収入は、原則として相続分に応じて取得できます。
基本的に、預金の利息や株式の配当なども同様の取扱いです。(執筆者:小嶋 大志)