親からの遺産相続は、必ずしも「もらえる」とは限りません。
相続の中には、債務も含まれるため、相続する内容によってはマイナスつまり「お金をもっていかれる相続」になる可能性もあります。
今回は相続の中でも「お金をもっていかれる相続」についてお話しします。

目次
お墓の相続は放棄できない「祭祀財産」とは
親から相続するものはお金や不動産が一般的です。
このような財産は相続財産とよばれ「お金をもらえる相続」がほとんどでしょう。
一方、お墓や仏壇は祭祀財産とよばれます。
祭祀財産は不動産のように売買することが難しく、相続したからといって「お金が増える」わけではありません。
それどころか、相続したものによっては「お金をもっていかれる」もしくは払い続けなければならないことになるのです。
親の財産を調べた結果、もしも「もらえるお金」よりも引き継がなければならない借金の方が多ければ「相続放棄」する方法があります。
相続放棄をすれば、もらえるお金もなくなりますが、支払わなければならない義務も消えるのです。
しかし、相続財産を放棄したとしても、お墓のような祭祀財産は放棄ができません。
都会に暮らしている人が地方のお墓を相続すれば、お墓に行くまでの交通費の負担だけでなく、お寺へ支払うすべてのお金も負担します。
お墓の管理料は毎年数万円の出費になるため、生涯の総額にすると想像以上の負担になるでしょう。
相続した人が「お墓の管理は大変だから墓じまいしよう」と思っても、墓じまいには意外とお金がかかります。
お寺によっては数百万円の請求をされることもあるようです。
お墓のような祭祀財産の相続は、お金だけの問題ではなく「故人への気持ち」が影響するため、簡単に放棄することは難しいでしょう。
相続後にお金がもっていかれる可能性がある祭祀財産については、「相続」が始まる前に持ち主である「本人」がのこされる人としっかりと話し合い、対処しておくことが大切です。
ペットの引き受けは想像以上にお金がかかる

犬や猫などのペットは、法律上は「モノ」扱いです。
モノは相続財産になるため、犬や猫がのこされたときには、相続先を探さなければなりません。
親の相続でペットを受け入れる場合、親と同様にペットも高齢になっていることが多いのではないでしょうか。
動物は、高齢になると体に不調が出て、医療費や介護費用が必要です。
「かわいいから」という理由で気軽にペットを相続してしまうと、想像以上の出費に悩まされるかもしれません。
最近は、集合住宅に暮らす人が多く、ペットを引き取る気持ちがあっても引き取ることができないこともあります。
相続人が誰一人ペットを引き取れないようであれば、ペットは保健所に引き取ってもらうことになるでしょう。
自治体により変わりますが、保健所は5,800円でペットを引き取ります。
しかし、相続人の心の中には5,800円どころではないキズと罪悪感がずっと残るに違いないでしょう。
ペットは相続財産です。
不動産や株券と同じように相続させる人をしっかりと決めておく必要があります。
そして、相続する人は「ペットはお金をもっていかれる相続」であることをしっかりと理解し、ペットを最後まで責任をもって飼い続ける覚悟を持たなければなりません。
もしも「親が犬や猫を飼っているけれど、相続する人はいないだろう」と思うならば、親が元気なうちに「ペットホーム」と信託契約を結んでもらいましょう。
ペットホームとは、年老いた犬や猫の飼育から供養までを行う施設です。
相続先がないペットは、ペットホームで余生を過ごすことになります。
ペットホームに支払う費用は、相続前に信託契約を結んでおくことで対処できます。
相続人が「相続放棄」して巡ってきた財産は要注意

ある日突然「あなたが相続する財産があります」と言われれば、ほとんどの人は驚きと共に期待するのではないでしょうか。
相続といえば、親や兄弟のような近い関係の人をイメージしますが、法律上では6親等まで相続する可能性はあります。
6親等は「はとこ」です。
甥っ子や姪っ子ならば1年に1回、いとこならば数年に1回は会う可能性もありますが、はとこになると「会ったことがない」という人も多いのではないでしょうか。
そんな「会ったことがない人」の財産をある日突然「相続」することがあります。
相続には順番があります。
最初は一番関係が近い1親等から始まり、2親等3親等と続きます。
もしも1親等の人が相続放棄すれば、2親等の人が相続することになります。
このように相続放棄する人が続けば、6親等の「はとこ」に「あなたが相続する財産があります」と連絡がくる可能性もあるのです。
しかし「相続放棄」が続いて巡ってきた相続は、手放しで喜んではいけません。
相続放棄されるからには、それなりの理由があるはずです。
例えば、「もらえるお金」よりも「もっていかれるお金」が多い場合は相続放棄したほうが得になります。
「もっていかれるお金」は、借金のほかにも未払いの税金も含まれます。
相続は、プラスもマイナスも含むため「相続=もらえる」と思い込んでいると大変なことになるかもしれません。
相続放棄が続いて、やっと自分に連絡がきたときにはかなり時間が過ぎてしまい「すでに放棄の手続きができない」と思い込んで相続を受け入れる人がいます。
しかし、相続放棄は「自分が相続することを知ってから3か月以内ならば手続き可能」です。
棚ぼたのような相続話には「裏がある」と疑い、しっかりと調べてから対処するようにしましょう。(執筆者:式部 順子)