会社員の高山美里さん(仮名・30歳)は、保険のセールスの人から、
と言って保険をすすめられました。
年収400万円の高山さんが、勧められた保険に入って1年間保険料を支払い、「生命保険料控除」を受けた場合は、
・ 住民税7,000円
合計1万3,000円が、来年の「年末調整」で還付されます。
保険のセールスの人は、「保障を持ちながら、税制優遇が受けられるのだから入らなければ損」と言っているそうです。
みなさんの中にも同じように言われて保険を勧められた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

目次
会社員の方は、「年末調整」の時期
さて、あっという間に来月は令和元年師走で、会社員の方は「年末調整」の時期です。
「年末調整」とは、源泉徴収した税金の年間の合計額と年税額を一致させる精算の手続きで(給与の収入が2,000万円を超える人などは年末調整の対象外)、払い過ぎた分は還付されます。
生命保険の契約をしていると、保険会社に生命保険料を支払います。
支払った保険料は、契約者のその年の所得から一定の金額が差し引かれ、所得税や住民税の負担が軽減される「生命保険料控除」という税制上の優遇措置があります。
保険のセールスの人のいう「生命保険料控除を使い切らないなんてもったいない!」というのは、
ということでしょう。
「生命保険料控除」について簡単に説明
「生命保険料控除」は、平成24年1月1日以降の契約を対象にする新制度と、それ以前にむすんだ契約を対象にする(旧制度)があり、控除額が違います。
新制度
・ 死亡保険など対象にした保険料の「一般生命保険料控除」
・ 入院や通院などを対象にした給付部分の保険料の「介護医療保険料控除」
・ 個人年金保険料税制適格特約のついた契約の保険料の「個人年金保険料控除」
の3つに分かれています。
控除の適用限度額
所得税… 4万円
住民税… 2万8,000円
また、3つとも加入したとすれば、控除を合計した適用限度額は、所得税が12万円、住民税が7万円になります。
旧制度
・ 一般生命保険料控除
・ 個人年金保険料控除
控除の適用限度額
所得税… 5万円
住民税… 3万5,000円
2つとも加入したとすれば、控除を合計した適用限度額は、所得税が10万円、住民税が7万円です。
新旧の制度を併用
合計した適用限度額は、所得税12万円、住民税が7万円です。
控除額がそのまま所得税の軽減額にはならない
控除額は、支払った保険料によって、所得から控除される金額が決まります。
高山さんに示された保険の設計書によると、「生命保険料控除」は、死亡保険、医療保険、個人年金保険ともに上限の所得税4万円なので、1年間に支払う保険料はそれぞれ8万円超、合計で約24万円(毎月約2万円)です。
税金の計算は、
所得税は累進課税で、課税所得が高くなるほど税率も高くなります。
住民税は、所得割と均等割に分かれていて、所得割は基本的に全国一律で10%です。
正確な金額はお住まいの自治体のホームページで確認してください。
控除を受けるために加入する保険はありますか?
夫婦ともに正社員で、子供もまだいないし、会社の団体生命保険で医療保険もお持ちの高山さんに、「勧められた保険のうち、どれか1つでも必要な保険はありますか」と伺うと、「いえ、特には」ということでした。
おっしゃる通り、現在、高山さんに必要な保障はありません。
1万3,000円の還付を受けるために、必要のない保険に入るのはムダですね。
将来、お子さんが生まれた時には、ご夫婦ともに、必要最低額の保険金額の死亡保険に加入し、「生命保険料控除」をお使いください。
それならイデコ(個人型確定拠出年金)の方が得ですよね?」
と言う高山さんに、資産形成の必要性を感じながらも、まだ始めていない確定拠出年金制度について説明をし、掛け金の税制優遇についてお話ししました。

イデコで節税
会社員の高山さんは、毎月上限2万3,000円拠出できるので、1年間で27万6,000円です。
これに税率をかけて計算します。
高山さんの場合は、所得税率5%、住民税10%ですので、節税額は4万1,400円ほどとなります。
税制優遇で考えても、イデコの方がお得です。
資産形成は、将来、歳をとってリタイアしてからの自分の生活を支えるためのものです。
税制優遇の大きい口座を使って行うのは、合理的な行動です。(執筆者:岩城 みずほ)