さまざまな事情でお墓の引っ越しや墓じまいをする人が増えています。
お墓を移すということは、そこにある墓石がなくなるだけではなく、供養をしてくれていたお寺との関係がなくなるということをも意味します。
そこで問題となるのが離檀であり、離檀料です。
この記事では、離檀や離檀料についてとりあげます。
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目次
離檀とはお寺の檀家をやめること
離檀とは、お寺の檀家をやめることです。
檀家というのは、その家の先祖の供養を取り仕切ってくれるお寺(菩提寺)をさまざまな形で支援する家のことを指します。
江戸幕府の政策として、ほとんどの家はなかば強制的にどこかのお寺の檀家になることを義務付けられ、その形が現代にまで脈々と続いているのです。
本来は、信教の自由が保障されているために、人はどのような宗教を信仰してもよいのですが、先祖の遺骨や墓石を守ってくれているという点から、なかなかお寺を変えづらいといった心理が働くようです。
どういう時に離檀が起こり得るのか
最近では親や子が別々の場所に住んでいることが当たり前になり、それに伴ってお墓の引っ越しが増えています。
お墓の引っ越しや墓じまいが離檀のきっかけになることが多いのですが、お墓を移すからといって、それらがすべて離檀につながるかというとそうではありません。
離檀とはあくまでも、「菩提寺と檀家」という関係性を解消することを指します。
たとえば、お墓を大阪から東京に移したとします。
それでも、大切な法事や葬儀はその大阪のお寺にお願いする、あるいは大阪のお寺もわざわざ東京にまでお参りに来てくれるといったケースが多く見受けられます。
こうしたケースでは、菩提寺と檀家の関係性は継続していますし、珍しいことではありません。
また、お墓を処分してそのお寺の納骨堂や永代供養墓に納骨しなおすといったケースも離檀にはあたりません。
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離檀料の相場と考え方
離檀料の相場は5万円から20万円と言われています。
しかし、実際にはお布施に相場はありません。
あくまでも納める側の気持ちに即したものでなければなりません。
大変お世話になったからと、多額の離檀料を納める人もいるでしょうし、不要と考える人もいます。
お寺側でも離檀料を受け取らないというところもあるほどです。
菩提寺は、先祖代々の供養をしてくれているので、離檀料はこれまでの感謝の気持ちを込めたものとして考えられるべきです。
さまざまなメディアで、離檀料をめぐるトラブルが取りあげられています。
お寺と檀家のコミュニケーション不足の中で、お布施という慣習が形骸化しているという側面が否めないではしょう。
お布施や離檀料が感謝という思いを形にしたものであるならば、なおさらお寺側が強制すべきものではないでしょう。(執筆者:五十嵐 信博)