相続財産は600万円 しかありませんが、生前に長女と次女に結婚資金を1,500万円ずつ贈与していました。
妻の遺留分の侵害については、誰が負担するのでしょうか?」

目次
解説
遺留分侵害額の負担順序は、受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が負担すると定められています。
受贈者が複数あるときは、後の贈与にかかわる受贈者から負担します。
1. 前提
(a) 被相続人Aは平成30年に死亡。Aの相続人は妻と長女と次女
(b) 相続財産は600万円
(c) 平成25年に長女に、平成27年に次女にそれぞれ結婚資金として1,500万円ずつ贈与
(d) 遺言の内容は長女と次女に2分の1ずつなので、それぞれ300万円ずつ相続する
2. 遺留分の侵害請求の額
遺留分の算定の基礎となる額 … 3,600万円(=600万円+1,500万円 × 2回)
長女と次女の遺留分 … 3,600万円 × 1/4 × 1/2=450万円
妻の遺留分 … 3,600万円 × 1/2 × 1/2=900万円
3. 遺留分の侵害請求の順序
相続財産と生前贈与では相続財産が優先となりますので、相続財産300万円が遺留分の侵害請求の対象となります。
しかし、それぞれの遺留分額が各450万円を超えていないので、遺留分侵害額の請求対象となりません。
そこで生前贈与が対象となりますが、複数の生前贈与のうち後に行われた次女への生前贈与が優先されます。
つまり、次女は生前贈与1,500万円のうち900万円を妻に支払う必要があります。
一方、長女の生前贈与については請求の対象となりません。
この結果の取り分は、妻が900万円、長女が1,800万円、次女が900万円となりま す。
生前贈与の際は順序にも注意する
遺留分を侵害する者が複数いる場合には、相続と贈与ですと遺留分の侵害の負担額の順序が異なります。(贈与を同時に行った場合は価額による按分となります)
生前贈与を行うに当たり、遺留分の侵害の心配があるときは、その順序にも十分注意する必要があります。(執筆者:小嶋 大志)