2020年2月の最終週、日経平均は1週間で2,243円78銭(9.6%)もの大幅下落となりました。
これはリーマンショック直後の2,661円71銭(24.3%)に次ぐ下げ幅です。
この直接的な原因は、新型肺炎の世界的な流行への警戒感が一気に高まり、世界で大幅な株安が進行したことでした。
日本でも政府が小中学校の臨時休校を要請したり、スポーツをはじめ大型イベントが中止になったり、新型肺炎の影響はどんどん拡大しています。
どのくらいの規模になるかはまだわかっていませんが、景気を悪化させる恐れが強まってきています。
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ここで忘れてはいけないのが、2月17日に発表された2020年10~12月期の実質GDPが前期比で6.3%減(年率)と、非常に悪い数字が出ていることです。
消費税増税後の3か月間で、日本経済は予想を超える大きな落ち込みを見せています。
新型肺炎は大変な災害で経済的にも大きな損害が出ることが予想されますが、それ以前に政策的な失敗があったことを忘れてはいけません。
今回は、消費税増税の影響がどのようなものだったのか、指標の推移を見ながら簡単に整理していきます。
目次
前回の消費税増税よりも危険な状態
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上記は、2013年以降の四半期実質GDP(年率換算)の推移のグラフです。
消費税を8%から10%へ増税してから大きく落ち込んでいるのがわかります。
2014年4~6月期にも今回と同様大きく落ち込んでいますが、これは前回の5%から8%への消費税増税のタイミングです。
このグラフからは消費税増税の影響があったように見えますが、政府の見解は「景気は(中略)緩やかに回復している(内閣府月例報告 令和2年2月)」というものです。
この見解は1月と同じ内容で、消費税増税後の四半期GDPの結果を見ても姿勢を変えていないことがうかがえます。
では、本当に景気が緩やかに回復しているのか、さまざまな経済指標を統合して1つの数字で表した景気動向指数(CI)を見てみましょう。
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青いラインが現状を示す一致指数で、赤いラインが将来の見通しを示す先行指数です。
上記グラフでは、基準年である2015年が100となっています。
また、薄い色のラインは、細かい上下動をならしたそれぞれの3本移動平均線です。
このグラフを見ると、2018年以降は完全に下方向のトレンドを描いていることがわかります。
先行指数はほぼずっと100以下で推移しており、一致指数も消費税増税で大きく100を割り込んでいます。
これを回復していると解釈するのは、少し厳しいように感じます。
2014年4月の消費税増税のタイミングでは、アベノミクスによって先行指数が急上昇していた頃でした。
そのため、悪影響がある程度は抑えられたところもあるでしょう。
それでもその後は景気が減速し、同年10月には「黒田バズーカ第2弾」とも言われた追加の金融緩和が行われています。
景気下降中の増税
一方、今回の2019年10月の消費税増税は、先行指数の下落が止まらない状態のなかで実施されました。
つまり、前回とは違い、景気が下向きのなかで追い打ちをかけるようなかたちで消費税増税が行われたわけです。
もちろん政府も消費税増税が景気に悪影響を及ぼすことがわかっていたので、2兆円以上の予算を組んでさまざまな施策が行っていました。
しかし、結果的にまったく力不足だったと言わざるを得ないでしょう。
消費税減税に期待したいが…
消費税増税の悪影響にあるなかで新型肺炎という災害が起こり、現在の国内経済は非常に苦しい状況にあると言わざるを得ません。
この最悪な状況から打開するためにまず考えられるのは、政府が10%への消費税増税が誤りだったことを認め、消費税減税に舵を切ることでしょう。
ただ、政府の見解は冒頭で書いたとおり「景気は緩やかに回復している」というものです。
GDPの大幅下落は「台風や暖冬」が原因として説明しており、消費税増税が誤りだったと認める姿勢はうかがえません。
5月中旬には2020年1-3月期の結果が発表されますが、この流れでいくとどんな結果になっても新型肺炎が原因とされるのは目に見えています。
もちろんその影響も大いにありますが、それを消費税増税の失敗の隠れみのにしてはいけません。
今はまだ新型肺炎の影響がどこまで拡大するかわかりません。
もしかすると本当に東京五輪が中止になってしまうこともあるかもしれません。
ただ、どれだけ影響が大きくなるにしろ、大事なのは災害から早く立ち直ることです。
そして、それを可能にできるのは政策です。
個人レベルではありますが、新型肺炎の感染防止への施策に積極的に協力しながら、政府の今後の強く適切な政策に期待したいと思います。(執筆者:貝田 凡太)