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忘れがちな負の遺産
相続は、事前の知識が大切です。
相続税のこと、手続きのこと、その期限のこと、不動産の知識などです。
1番大切なのは、円満な遺産分割です。
親の遺産を、勝手に期待し、ふたを開けていたら債務のほうが、多かったなんてことはよくあります。

河合兄弟(仮名)の実話
5年前、河合さんの両親が亡くなりました。
両親2人が居住していた土地建物は、その後、空き家になっていました。
長男(兄)である、河合さんは転勤族で、実家とは遠距離の広島に住んでいます。
次男(弟)は両親と同じ町内に家を建て、両親の介護も協力してくれていました。
両親が、亡くなってから、実家の家の名義はどうするのか気にはなっていましたが、近くに住んでいた次男からも相談がなかったため、放置していました。
空き家問題が発生
弟から5年たっても空き家について何も言ってこないので、「空き家を放置しているのはよくない」と河合さんがアドバイスしましたが、動きません。
実家の不動産を、兄が狙っていると誤解しているかもしれないと思い、弟に「実家の不動産をもらう気持ちはない」ことを伝え、やっと動き出しました。
実は、解体費用の費用負担の問題もあった
動き出して、びっくりです。
弟が、実家の土地は相続させてもらうが、家屋は、近い将来取り壊す予定だといいます。
そしてその解体費用は両親の預金にて支払ってもいいかと相談してきたのです。
両親名義の預金は、葬儀代金でなくなっていると思い込んでいた河合さんはそれを聞いて安心しました。
「まだ親名義の預金もあったのか」と弟に聞いたところ、実はそれなりの預金があり、もちろん兄弟で均等に分けるつもりだといいます。
金額を聞いてびっくりしたそうです。

棚からぼた餅
河合さんは、空き家の放置が気になっていただけです。
ですので、取り壊し費用も負担するつもりでいました。
その費用が、親の遺産で賄え、予定していなかった親の預金までいただくことができたのです。
両親と弟に感謝です。
もし、実家の土地をきょうだいで、奪い合っていたらどうなったでしょう。
手練手管で、取得したとしても、それは、本当に幸せにつながるとは思えません。
「近くで、両親の面倒を見てくれた弟に実家をまかせ、譲った気持ちがあったからこそ、両親からのプレゼントがあったのだ」と河合さんは言います。
不動産の価値は難しい
遺産の取得で、よく問題になるのは、不動産です。
その不動産を実際利用している方にとって価値のあるのですが、使用してなく、売却しようにも売りにくい土地もあります。
まして、共有、貸地で権利関係が複雑な土地もあります。
古い家屋の場合、修繕費用、取り壊し費用の問題があります。
固定資産税の価値があるとは限らず、むしろ負の財産かもしれないのです。(執筆者:橋本 玄也)