新型コロナウイルス流行が、経済に大きな悪影響を与えています。
そんな中、文部科学省は令和2年4月1日からの「高等教育の修学支援新制度」施行と同時に特例の施行もスタートします。
家計が急変した学生に向けて授業料等の減額および給付型奨学金の申請を呼び掛けています。
この記事では「高等教育の修学支援新制度」の概要や特例について説明した上で、支援内容や利用の要件についても解説します。

目次
高等教育の修学支援新制度の概要と特例について
まずは、高等教育の修学支援制度の概要について簡単に説明します。
「高等教育の修学支援制度」の概要
令和2年4月より施行された「高等教育の修学支援新制度」は、経済的な理由で大学等への進学が困難な学生を、学費の減免や給付型奨学金で支援する国の制度です。
対象となる学生は、文部科学省が指定する大学、短大、高等専門学校(4・5年次)に進学・在籍する人で、国が定めるいくつかの条件(収入の要件など)を満たす人です。
「高等教育の修学支援制度」の特例について
次は、「高等教育の修学支援制度」の特例についてまず説明します。
通常時の原則と家計の急変に応じた特例の主な相違点は、以下のとおりです。

※所得額に応じた3つの区分があります
参考元:文部科学省(pdf)
中でも特に大きな相違点は、申し込みの時期と支払い開始時期です。
特例では随時受付、迅速な支給開始を行うとしています。
したがって、現在家計が急変している場合は、急変後の世帯所得に応じてすぐ支援を受けることが可能です。
該当する人は、すぐ学生課などに問い合わせてみましょう。
「高等教育の修学支援新制度」の支援内容
ここからは、あらためて「高等教育学校の修学支援制度」について詳しく解説していきます。
まずは、この制度で学生が受けられる支援内容についての説明です。
1. 授業料等減免
授業料は最大約70万円、入学金は最大約28万円減免されますが、1年次後期以降に入学した学生は入学金が減免されません。
2.給付型奨学金
日本学生支援機構による返済不要の奨学金です。
最大で7万5,800円支給されます。
授業料等の減免額や奨学金の支給額は、通う学校の種類や通学方法(自宅・自宅外)、世帯収入に応じた金額です。
「高等教育の修学支援新制度」を利用できる条件

次は、「高等教育の修学支援新制度」を利用できる条件について説明します。
条件1:学修意欲がある
その判断材料として学業成績の基準があります。
学業成績とは、高校・大学の成績、高卒認定試験の合否や入学試験の成績です。
基準を超えていれば支援を受ける要件を1つ満たします。
また、面談の結果やレポート・学修計画書の内容で学修意欲を見るケースもあります。
支援を受けている間も成績の確認は行われ、基準を下回れば支援が打ち切られます。
しかし、家計の急変などの正当な理由があれば、その点が考慮されます。
条件2:世帯収入
この制度は家計が苦しい学生の支援を目的とするため、「住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯」が支援の対象です。
※住民税の計算式は公表されていますが、素人が正しく算出するのは非常に難しいです。
そのため、在学校に世帯年収がわかるもの(源泉徴収票や給与明細等)を持参し、担当者に相談することをおすすめします。
住民税非課税世帯の学生は、
入学金が最大約28万円減免
給付型奨学金は満額(最大7万5,800円/月)支給
されます。
一方、それに準ずる世帯の学生は、世帯収入に応じて満額の3分の2または3分の1となります。
ちなみに、日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」では、およその年収から受給できる奨学金や、支給額の目安を概算できます。
資産額
資産額についても条件があります。
ここで言う資産額とは、現金、預貯金、有価証券などの合計額を指します。
文部科学省の資料(pdf)によれば、資産額の基準は以下のようになっています。
・ 共働き家庭:2,000万円未満
資産額については申告制ですが、上記の基準を超える資産があると判明した場合は支援を受けられない可能性があります。
「高等教育の修学支援新制度」の申し込みから支給までの流れ

最後に「高等教育の修学支援新制度」の申し込みから支給までの流れについて説明します。
まず、在学中の学校で関係書類をもらって授業料減免や給付型奨学金の申し込みを行います。
提出先
・ 給付型奨学金:インターネットで日本学生支援機構に申し込む
通常、給付型奨学金の申込期間は、春(4月~5月下旬)または秋(9月~10月中旬)です。
しかし、家計が急変した学生は特例により、家計急変から3か月以内であれば随時申し込みができます。
その後の流れは以下の通りです。
授業料等の減免
学校により開始の時期が異なります。
給付型奨学金
通常は申し込みの約2か月後に審査の結果が通知され、奨学金の支給が始まります。
しかし、家計急変の場合は特例により、支給対象として認定されたあと速やかに支給が開始されます。
以上について不明な点がある場合は、窓口となる学校にお問い合わせください。
家計が急変した学生は「高等教育の修学支援新制度」の利用を検討しよう
今回の記事では、新たに施行された「高等教育の修学支援新制度」とその特例について説明しました。
新型コロナウイルス流行の影響で家計が急変した学生は「高等教育の修学支援新制度」の利用を検討の上、速やかに学校の窓口(学生課など)で相談することをおすすめします。
その結果、残念ながら給付型奨学金や授業料減免などの支援を受けられない場合は、学校独自の給付型奨学金や、日本学生支援機構などの貸与型奨学金の利用も選択肢に入ります。
学校の窓口はそれらの奨学金についても詳しいので、困ったらぜひ相談してみましょう。(執筆者:大岩 楓)