5月14日、新型コロナウイルスの特別措置法に基づく、緊急事態宣言が39県で解除されました。
残る8都道府県についても、5月21日をめどに改めて判断をするということで、今後の動向に注目です。
感染拡大をある程度防止できている実績から、フィジカルディスタンスの維持や、三密を避ける対策を設けた上で、経済活動が再開する可能性が見えてきました。
しかし、まだまだ休業が必要な地域・業種は多く、企業にとっても労働者にとっても、コロナショックとともに生きる期間が続きます。
この休業期間に対し、事業主が支払う「休業手当」を補てんする「雇用調整助成金」について、日々内容が変更されるため混乱を招いています。
基本的には、提出書類の簡素化や支給要件の拡充による変更なので、より多くの労働者を対象とする制度へと成長しており、歓迎できる内容です。
現時点での雇用調整助成金について整理し、活用方法の見直しを検討してみましょう。
「雇用調整助成金」とは
本来の雇用調整助成金についておさらいします。
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものです。
今回、新型コロナウイルスに伴う特例措置により、対象となる事業主の範囲が広がりました。

助成金の対象となる労働者は、原則、上記事業主に雇用された「雇用保険被保険者」です。
しかし今回、雇用保険被保険者ではない労働者(学生アルバイトや、労働時間が週20時間未満の労働者)に支払った休業手当についても、「緊急雇用安定助成金」として助成されることになりました。
助成額について、現時点で以下のとおりです。
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新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき、都道府県対策本部長が行う要請に協力し、その他要件を一部または全部満たす事業主に対しては、助成率を10/10に拡充しています。
雇用調整助成金特例のさらなる拡充
当該助成金を活用し、雇用維持をさらに支援する目的で、4月1日から6月30日を「緊急対応期間」とし、全国で全ての業種の事業主に対して、雇用調整助成金の特例措置を実施しています。
本来の雇用調整助成金と、緊急対応期間における変更点は以下のとおりです。

そして、さらなる拡充として、以下の特例が5月1日に発表されました。
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「新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業または営業時間の短縮を求められた対象施設」とは、
・ 遊興施設等
・ 大学・学習塾等
・ 運動・遊技施設
・ 劇場等
・ 集会・展示施設
・ 商業施設
などが該当します。
しかし、注意が必要な部分として、労働者1人あたり8,330円/日が上限のため、休業手当を100%助成されたとしても、支払額を全額補てんできるものではありません。
そのため、事業主の負担は一部軽減するのみで、申請の煩雑さからも申請件数が伸び悩みました。
そこで政府は、8,330円/日の上限を1万5,000円/日程度まで大幅に引き上げ、雇用調整助成金を利用する企業の増加をめざす拡充案を示しました(5月14日)。
企業によっては「休業手当を支払わない判断」もありえる(新型コロナウイルスによる休業は「使用者の責に帰すべき事由ではない」という判断)ため、場合によっては休業手当を支給されない労働者も存在します。
また、助成金は申請後、内容を審査してからの支給となるため、事業主が助成金を受け取る前に資金がショートしてしまう可能性もあります。
そこで、中小企業の労働者を対象に、休業手当を受け取れない労働者へ、直接給付を行う制度(33万円/月程度を上限)の創設が表明されました(5月14日)。
当該給付金は、労働者が直接、オンラインか郵送で申請できる仕組みで調整されています。
アフターコロナでの企業経営のあり方、人的資源のあり方について再考しつつ、休業を実施した企業は「休業手当の支払い」と「雇用調整助成金の活用」をセットで検討してください。
今後も随時、制度内容が変更される予定なので、厚生労働省のホームページの確認をお願いします。(執筆者:特定社会保険労務士 浦辺 里香)