「助成金」と聞くと「企業がもらえるお金」というイメージが一般的だと思います。
もちろん、正解です。
しかし、政府が用意する助成金のなかでも、厚生労働省の助成金は「労働」に関するものがメインとなるため、求職活動中の人にも知っておいてもらいたい制度が多いのです。
今回は、求職活動が有利になる助成金を紹介しましょう。
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目次
トライアル雇用助成金
就労経験の少ない人がいきなり就職することに不安を感じるのは当然のことです。
特に、ニートやフリーターにとっては、これまで1人で過ごしていた生活環境がガラリと変わる大きな変化です。
そのような不安を解消する助成金が「トライアル雇用助成金」です。
「トライアル雇用助成金」とは、まずは3か月間のトライアル雇用期間を経て、その後に常用雇用に移行するかどうかの判断をできる制度です。
トライアル雇用の対象者は次の図のとおりです。

労働者は、トライアル雇用期間中に仕事や企業について理解を深められます。
また、労働法も適用されるため、たとえば最低賃金、雇用保険や社会保険等の加入等についてきちんと対応してもらえます。
トライアル雇用が終了した後に常用雇用へと移行する割合はおよそ8割です。
もちろん、「自分には合わない」と感じた場合には、その時点(トライアル雇用期間終了時点)で雇用契約も終了となります。
まずは「お試し期間」として3か月のトライアル雇用期間を利用し、自分に合った職場・仕事かどうかを見極めましょう。
企業側には、トライアル雇用対象者1人当たり月額最大4万円(最長3か月間)の助成金が支給されます。
対象労働者がシングルマザー・ファザーの場合には、1人当たり月額5万円(最長3か月)です。
つまり、「トライアル雇用」を採用することで、企業側も労働者の適性や能力を見極める期間を設けられる、かつ助成金を受給できるのです。
求職者にとっても、企業にとっても、雇用のミスマッチを事前に防止できる良い制度だといえます。
特定求職者雇用開発助成金
育児や家庭を守る女性にとって、仕事と家庭の両立はなかなか難しいものです。
結果的に仕事から離れなければならない場合もあることでしょう。
しかし、シングルマザー・ファザーにとって仕事と育児の両立はマストです。
そのようなときに「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」の対象者となる可能性があります。
シングルマザー・ファザーに限らず、障害者やシニア世代も対象者です(下図参照)。
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筆者の顧問先においてもこの助成金はフル活用されており、シングルマザー自らが「助成金対象者です」とアピールをすることもあります。
育児と仕事の両立において「労働時間の調整」は非常に重要なポイントです。
企業側も対象労働者を雇用する代わりに、彼ら(彼女ら)にアジャストする労働環境の提供をする必要があります。
その分の助成金として6か月ごとに下図の支給額を受給できるのです。
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また、「短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)」というくくりがあるため、フルタイムで働くことができない人でも助成金対象者です。
直接お金をもらえるわけではないれど
今回紹介した助成金は、いずれも求職者(または労働者)自身が受給できるものではありません。
しかし、コロナ禍で離職を余儀なくされた退職者が多いのも事実です。
現在、コロナ騒動が小休止と思われる日本において、精力的に求職活動に励む人が多く見られます。
求職者自身にハンディ(生活面、身体面、環境面)がある場合でも、これら助成金の「対象者」として求職活動を行うことで企業側へのアピールになる可能性があります。
生活の安定のためにも、助成金対象者となり得る人はぜひこの制度を活用してください。(執筆者:特定社会保険労務士 浦辺 里香)