火災保険は、風で物体が飛来して破損する、または給排水の水漏れによる破汚損といった、火災以外の事故も保険の対象になることは徐々に知られてきました。
さらに細かいケースについての要件をお伝えしていきたいと思います。

目次
落雷でエアコンが使用不能になった場合は
具体的なケースとしては、落雷による過電流が発生しエアコンや分電盤などが使用不能になった時です。
落雷が原因なので、加入している火災保険が落雷も補償範囲に含まれていれば支払いの対象になります。
落雷の補償は、火災保険の補償範囲にはほぼ含まれているので、支払いの対象になります。
ただし建物と家財で火災保険はわかれていることに注意をしましょう。
落雷で、エアコンが使用不能になった場合は、建物の火災保険で支払えます。
ところが、コンセントでつながっている扇風機などが落雷による損害を受けた場合は建物の火災保険では対象になりません。
扇風機は「家財」という扱いになり、家財の火災保険に加入をしていないと補償の対象にならないので注意が必要です。
ボルトなどで壁や床などに固定されている設備は建物とみなし、コンセントなどでつながれているだけのような場合は火災保険では家財とみなすからです。
落雷ではない原因で使用不能になった場合
では落雷が原因ではない要因で、エアコンなどが使用不能になった場合はどうなるのでしょうか?
このケースでは落雷ではないので、支払いの対象にはなりません。
火災保険の特約に「電気的・機械的事故」という特約をつけなければ対象になりません。
通称EM(イーエム)と損保の関係者の人は呼ぶこともあります。
通電火災の事例

どのようなケースでこのようなことが起こるのでしょうか?
2019年9月に記録的な台風が関東で発生し、大規模な停電が発生しました。
機械部分に雨水が入り込みコンセントが損傷している状態で、停電が復旧し電流が流れると通電によりショートして出火する「通電火災」が多く発生したことで話題になりました。
火災に至らなくても、単純に漏電やショートで使用不能になることもあります。
避難をする際はブレーカーを落とし、家電製品のコンセントは抜いておけばある程度予防はできます。
通電火災以外にも、コードやコンセント部分の損傷や、ホコリなどが原因で漏電やショートが発生し、使用不能になることがあります。
このようなケースで、発火して損害があった場合は、火災保険の対象になります。
しかし問題は発火せずに単純に使用不能になってしまったケースです。
前述の通電火災をはじめとした漏電や通電によりショートして使用不能になってしまった場合は「電気的・機械的事故」の特約がなければ補償されません。
電気的・機械的事故は建物のみ補償の対象
電気的・機械的事故は家財扱いのものは対象になりません。
すなわちコンセントでつながっただけの電子レンジ、扇風機、空気清浄機などは補償されません。
ボルトなどで部屋に備え付けられている建物扱いの電化製品が対象になることに注意が必要です。
ただし、これらの家財が漏電やショートで発火に至れば火災保険の対象になるので、家財の火災保険に加入をしていればカバーできます。
「電気的・機械的事故」特約は、「建物」に火災保険をかけていないとつけられず、「家財」の火災保険には付加できません。
電気的機械的事故が対象になる機械設備の例
電気的・機械的事故の特約をカバーできるケースは限定的と思われるかもしれません。
しかし、太陽光発電設備、火災報知機、照明設備、電動シャッター、アンテナ、部屋に固定されて設置されている空調設備、エアコン室外機、分電盤、警報機などその内容は多岐にわたります。
高価な設備もありますので、新しい家でセキュリティや、快適な住居にこだわって高価な設備を取り入れている場合は「電気的・機械的事故」という特約もぜひ知っておきましょう。(執筆者:CFP 金子 賢司)