先日、個人投資家に大人気の株主優待銘柄である「すかいらーく (3197)」が株主優待を大きく改悪しました。
参照:すかいらーくホールディングス「株主優待制度の変更に関するお知らせ (pdf)」
今年は、業績の悪化などを理由に株主優待の廃止・改悪が多く発表されています。
個人投資家の中には「すかいらーくが優待を改悪したんだから、他の人気優待も改悪があるかもしれない」と不安で、今にも売ってしまいたいという気持ちが出ている方がいるかもしれません。
そこで、2020年に株主優待の廃止・改悪を発表した銘柄について、よりリスクの高い優待種別や業種を分析しました。
本当に危ないのは飲食業ではありません。では、いったいどの業種なのでしょうか。
目次
株主優待改悪をした銘柄の業種
まずは、2020年に「株主優待を改悪した企業の業種」の円グラフをご覧ください。

業績が悪化している飲食、小売、製造業が多いものの、意外と金融・不動産が多いということが分かります。
次に、「株主優待を改悪した企業の優待種別」の円グラフをご覧ください。

クオカードなどの金券類が50%とダントツです。飲食店の食事券の株主優待は14%とそこまで多くはありません。
では、金券株主優待を改悪した企業が多い業種はどこでしょうか。答えは金融・不動産です。
2020年に金券株主優待を改悪した企業のうち33%が金融・不動産でした。
金融・不動産業は自社製品がないため株主優待を出すとしたら、金券やプレミアム優待倶楽部のようなカタログギフトになる傾向があります。
そして、株主数の増加で企業の負担も増加するので、コロナの影響で株主還元の縮小を機に「今株主優待を改悪しても文句は出にくいだろう」と考える多くの企業が出たのではないでしょうか。
以上のことから
だと言えます。
株主優待廃止をした銘柄の業種
まずは、2020年に「株主優待を廃止した企業の業種」の円グラフをご覧ください。

圧倒的に製造業が多いという結果になりました。
たとえば、「メガチップス」は500株以上の株主に限りゲームソフトがもらえることで人気の優待でしたが、2020年は中止(廃止ではない)を発表して株主を落胆させました。
製造業は飲食や小売業よりは個人投資家人気が高くないため、業績が悪化するとおもいきって株主優待を廃止しやすい業種だと言えます。
配当を減額しているのに株主優待を維持するとなると機関投資家に説明がつかないのかもしれません。
次に、「株主優待を廃止した企業の優待種別」の円グラフをご覧ください。

自社商品・サービスが最も多く、食事券については廃止の発表がほとんどありませんでした。
自社商品を株主優待にする企業の中では「トラスコ中山」のように優待商品費用の増加などを理由に株主優待を廃止する企業が出てきました。
参照:トラスコ中山「株主優待制度廃止に関するお知らせ (pdf)」
株主数増加傾向にある企業は、今後株主優待を廃止するリスクが高くなることでしょう。
2位の金券や3位のプレミアム優待倶楽部は株主優待の新設をしやすい分、廃止もしやすいため、業績が悪化している企業にはより注意が必要です。
プレミアム優待倶楽部は、製造業以外で株主優待廃止が最も多い優待種別でした。
以上のことから、
だと言えます。
株主優待利回りの高い「おいしい」優待は改悪リスクが高いのか
最後に株主優待を改悪した企業の「改悪発表時の株主優待利回りの割合」を円グラフでご覧ください。

株主優待利回り1%台が最も優待改悪リスクが高いというちょっと驚きの結果になりました。
「すかいらーく」のように優待改悪前の株主優待利回りが3%を超える銘柄が改悪を発表すれば目立ちますが、利回りがそこまで高くない銘柄でも会社は株主優待の負担を重く感じているのかもしれません。
株主優待利回りで改悪があるかないかを考えるのはやめるべきでしょう。
業績悪化で今は最も株主優待の廃止・改悪リスクが高い
このままコロナ収束が長引いて企業業績の悪化が続けば、さらなる株主優待の廃止・改悪の発表は避けられないことでしょう。
今回株主優待の廃止・改悪リスクが高いとした業種はもちろん、それ以外の業種でも株主優待は廃止・改悪されるリスクがあることを頭に入れて投資しましょう。(執筆者:株式ディーラー歴10年 勝越 晴)