確定拠出年金を60歳以降に受け取る時には「一時金で受取るか」「年金(分割)形式で受取るか」により税金の計算方法が異なります。
一時金で受け取る方が課税される税金が少なくなるパターンが多いです。
確定拠出年金以外に退職金がある場合には、必ずしも一時金で受け取る方が有利になるとは限りません。
もう1つの方法も知っておくことで、有利な選択方法が広がります。

目次
確定拠出年金の受取時の課税方法は
確定拠出年金を一時金で受け取る場合は所得税の退職所得として計算され、年金(分割)形式で受け取る場合には所得税の雑所得(公的年金等控除の適用有り)として課税されます。
退職所得
(※)退職所得控除額
勤続年数:20年以下 → 退職所得控除額:40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
勤続年数:20年超 → 退職所得控除額;800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
確定拠出年金を一時金で受け取る場合の勤続年数は掛金払込期間(企業型年金加入者期間と個人型年金加入者期間を合算した期間)となり、1年未満の端数は1年に切り上げます。
退職所得控除額の金額
・ 勤続年数40年の場合:2,200万円
・ 勤続年数35年の場合:1,850万円
・ 勤続年数30年の場合:1,500万円
・ 勤続年数25年の場合:1,150万円
・ 勤続年数20年の場合:800万円
雑所得
(※)収入金額
確定拠出年金以外に国民年金や厚生年金など公的年金等に該当するものの合計額になります。
退職所得の恩恵・退職所得控除額を超える場合がある
退職所得に該当するものが確定拠出年金(企業型または個人型)のみの場合であれば、退職所得のメリットを最大限に受けられるでしょう。
一方で、確定拠出年金以外に退職金を一時金で受け取る場合には、退職所得控除額を超えてしまうこともあります。
例えば、個人型・確定拠出年金(iDeCo)に加入し、会社から退職金を受け取る場合や、会社が企業型・確定拠出年金を導入しておりかつ別の退職金制度(DB)がある場合などです。
下記に確定拠出年金と別の退職金がある場合の退職所得控除額の考え方の概略のみを記載します。
複雑なので、詳しい内容は税理士などの専門家に確認をしてください。

同じ年に確定拠出年金とそれ以外の退職金などを両方ともに一時金で受け取った場合
それぞれの勤続期間(加入期間)のうち「最も早い日」から「最も遅い日」のまでの期間を勤続年数として退職所得控除額を計算します。
確定拠出年金と退職金とを別々の年に受け取った場合
先に退職金(一時金)を受け取り、その後に確定拠出年金の一時金を受け取った場合には、確定拠出年金の一時金を受け取った年または前年より14年以内に退職金(一時金)を受け取っている場合には、退職所得控除額の調整が行われます。
先に確定拠出年金の一時金を受け取り、その後に退職金(一時金)を受け取った場合には、退職金(一時金)を受け取った年または前年より4年以内に確定拠出年金を含む退職金(一時金)を受け取っている場合には、退職所得控除額の調整が行われます。
確定拠出年金を60歳から年金形式で最大5年間受け取る
受け取る退職一時金と確定拠出年金の合計額が退職所得控除額を超えてしまう場合には、退職所得控除額を超える部分は、60歳から年金形式で受け取ることも1つの方法です。
年金形式で受け取ることで、公的年金等控除を用いて雑所得を計算します。
他に公的年金等控除の対象になる所得(年金)がなければ、公的年金等控除が丸々使えます。
65歳未満の場合の公的年金等控除額は最低60万円あります。
年間の確定拠出年金の受取額が60万円以下であれば下記の計算式により、雑所得は0円になり課税されません。
また、男性であれば昭和36年4月2日生まれ以降、女性であれば昭和41年4月2日生まれ以降の場合、公的年金の支給開始年齢は65歳からです。
この生年月日に該当する場合、60歳から65歳までの5年間で300万円(毎年60万円 × 5年)まで、非課税で受け取ることも可能です。
基礎控除の48万円も含めれば、さらに課税されずに受け取れる金額が増えます。
その際には、他の所得の有無により違いが生じます。
今後、退職所得の計算方法の見直しも予測されています。
もし、退職所得の計算方法が改正された場合には、今回ご紹介した方法も参考にすることで節税につながります。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)