住宅ローンを金融機関から借りようとするとき、誰でも借りられるわけではなく、借り入れ可能であるか金融機関による審査を受けなければなりません。
住宅ローンの審査項目はいくつかあり、勤続年数も審査の対象です。
詳しく見ていきましょう。

目次
住宅ローン審査
住宅ローンを借りようとするとき、住宅ローンを借りられるかどうかの審査を金融機関で受けなければなりません。
住宅ローンの審査は2段階あり、
不動産会社と住宅の売買契約をしたあとにうける「本審査」
とがあります。
住宅ローンは住宅物件の売買契約をしたあとでなければ借りられません。
住宅ローンを借りる目途が立っていなければ売買契約もできません。
そのため、事前審査を行い、住宅ローンを借りられる目途が立ってから、住宅の売買契約を行います。
ただし、事前審査を通った場合でも本審査で借入不可となってしまうこともあります。
住宅ローン事前審査の判断基準
住宅ローンの審査ではどういった点を審査されるのでしょうか。
事前審査では、住宅ローンを借り入れようとする契約者の返済能力について審査されます。
・ 年齢(完済時の年齢)
・ 年収
・ 勤続年数
・ 雇用形態(会社員か自営業者かなど)
・ 健康状態
・ 借り入れようとする金額は返済負担率(年収によって1年間にどれくらい返済ができるか)をこえていないか
・ 信用情報(過去にクレジットカード使用などの返済でトラブルがなかったか)
・ 購入する物件についての審査
本審査では、事前審査で調べた内容についてさらに詳しく審査されます。
購入する物件についてと信用情報については特に慎重に審査されます。
自営業者の場合
自営業者の場合は、勤続年数というよりは、会社の経営状態が良好かどうかが審査基準です。
そのため、審査の段階で、直近3年分の確定申告書の提出が必要となります。(金融機関によって異なる場合があります)
審査は会社員の場合よりも厳しく審査されることが多くなります。

住宅ローンと勤続年数の関係
勤続年数が短い場合、住宅ローンの審査を通らないことがあります。
勤続年数が短いと、その先の収入が安定しているか不透明なため、長期融資となることが多い住宅ローンにおいては、返済が滞るかもしれないというリスクを金融機関側が危惧するためです。
逆に、勤続年数が長い場合は金融機関も安定した返済が見込めるため、審査を通りやすくなります。
そのため、住宅ローンの融資条件を勤続年数3年以上と定めている金融機関も少なくありません。
就職や転職したばかりで勤続年数が短い場合は注意が必要です。
転職が有利となる場合
会社員で転職したばかりの場合は住宅ローンを借りるのに不利となると前述しましたが、転職が有利となる場合もあります。
それは、前職からキャリアアップなどの目的で同職種などに転職し、収入アップできている場合です。
前職よりも収入が増えている証拠となる書類を金融機関に提出できれば、金融機関もそれを認めて住宅ローンの融資に前向きな姿勢を見せてくれる可能性があります。
転職が不利となる場合
何度も転職を繰り返している場合や、まったく違う職種に転職している場合、持続性のなさからその先の安定した収入を見込めず、不利となる場合があります。
勤続年数が審査の対象とならない住宅ローン
勤続年数が短い場合には、住宅ローンを諦めるほかないのでしょうか。
実は、勤続年数の審査を対象としない住宅ローンも存在しています。
ネット銀行
最近人気であるネット銀行の住宅ローンを中心に、勤続年数を要件としない、または短くても借入できる住宅ローンがふえてきました。
例えば、住信SBIネット銀行では勤続年数を要件としない、楽天銀行では勤続年数3か月以上が借入れ条件とされています。
これをうけ、大手銀行でも勤続年数が短い場合でも融資をしてくれるところが増えてきました。
例えば、三菱UFJ銀行、りそな銀行では、1年以上となっています。
一方、三井住友銀行では、勤続年数の具体的な年数指定はないものの、安定かつ継続した収入が見込まれる人が要件となっています。
借入できる要件として勤続年数は短くなったものの、あくまで契約者の返済能力を図ったうえでというスタンスであることがみてとれます。(2020年3月調べ)

フラット35
住宅支援機構という国土交通省と財務省が管轄する独立行政法人が取り扱っている全期間固定金利のフラット35なら勤続年数は審査の要件には入っていません。
他の審査基準に問題がなければ、勤続年数1か月から借入が可能です。
ただし、フラット35を利用する場合には住宅支援機構が定めた技術基準に適合する住宅である必要があります。
【フラット35の適合技術基準とは】
・ 新築住宅の場合は床面積が70平米以上、マンションの場合は30平米以上であること
・ 住宅の構造は耐火構造、準耐火構造、または耐久性基準に適合すること
・ 断熱材を所定の厚み以上に施工しなればならない
・ 一般の道に2メートル以上接すること
などいくつかの審査基準に適合した住宅であることが求められます。
他にも各種要件があります。
事前審査は複数の金融機関で
住宅ローン審査基準について解説しました。
就職したばかりや転職などの理由で勤続年数が短い場合には、住宅ローンの審査を通ることが難しいことがわかりました。
ただし、キャリアアップなどの理由による転職の場合には借り入れ可能な場合もあります。
金融機関に交渉してみましょう。
また、最近人気であるネット銀行では勤続年数が短くとも融資してくれる可能性があります。
ただし、ネットでやりとりすることが主であるネット銀行では交渉する必要がある場合には不利であることを覚えておきましょう。
また、勤続年数の要件がないフラット35であれば、勤続年数が1か月であっても住宅ローンの利用を検討できます。
全期間固定金利であるため金利は高めに設定されていますが、低金利である今であれば十分に検討して良いと思います。
実際のところは、住宅ローンの審査は審査を受けてみなければとおるかどうかはわかりません。
住宅ローンの事前審査は複数の金融機関でうけることが可能です。
いくつかの金融機関で検討してみることをおすすめします。
しかしあまり多くの金融機関に同時に審査を申し込んでしまうと、逆に怪しまれて審査を通常より厳しくされてしまう可能性もあるのでその点注意が必要です。
2~3社の金融機関にしぼり、住宅ローンの借入を検討してみましょう。(執筆者:1級FP、CFP 五十嵐 悠太)