会計事務所にいた時の話です。
申告期限の2週間前に相続税の申告依頼が来ました。
依頼者は、
といいます。
確かに所得税の確定申告ならそれもあるかもしれませんが、相続税申告はそんな訳にいきません。
目次
手順その1:財産調査をする
相続税上の不動産評価に時間がかかる
不動産については固定資産税の名寄帳が添付されていますが、相続税評価は原則、
・ 現地に行く
・ 市役所調査を行う
・ 評価する
などがあるので、時間がかかります。
遠方の物件があると大変でが、現地に行けば、減額要因の確認もできます。

預金は、残高証明書だけあればいい?
必ずしも預金の残高証明書がなくても申告書は提出できます。
税務署は前後の動きを含め調査をし、隠れた財産がないか確認しますので、後日税務調査とならないように当方のいた会計事務所も事前に、その調査を行っていました。
依頼者から預かった通帳のコピーの残高と残高証明書の金額が合わないこともよくあります。
それはATM等でカードのみでお金を引き出しているケースです。
そのため、未記帳の動きも調査が必要で、正確な申告書を作成するのに必要な作業です。
後日引き出しが判明すると、他の相続人さんもいやな思いをします。
引き出したお金を特定の家族に贈与しているかもしれないからです。
過去に、トイレ、台所等のリフォームをやっている方
その工事が修繕でなく、「価値が上がっている改築の場合は、それも相続財産です」と税務調査で指摘された苦い記憶があります。
室内の工事をしても、一般には、家屋の固定資産税は変わりません。
何故、税務署は指摘したのかというと、故人の3年前の通帳から1,000万円のお金が引き出され、振込先が工務店だったからです。
過去の通帳の動きは情報の宝庫
株の配当金が入金されていれば、株式の計上漏れの可能性があります。
保険料が、引き落とされていれば、対応する保険の計上漏れの可能性大です。
貸金庫の使用料の引き落としがあれば、貸金庫の調査。貸金庫には現金が入っていることがよくあります。
年金を受給されていたのに、その対応する通帳が申告書に未記載、特にゆうちょ銀行の取引は調査されにくいという過去の伝説を信じている人がいますが、現在は、逆です。
本当に取引がなければ、「ない証明を」出した方がよいのです。
手順2:相続税申告の要否の確認と遺産の分け方の検討
故人の財産調査をしなければ相続税が、いくらかかるのかわかりません。
またかかってもいくらなのかは、必要な情報です。
遺産を誰が取得するかで、相続税が大きく変わります。
「配偶者の税額軽減」という特例のおかげで配偶者が取得する財産には相続税がかからないことが多いですが、配偶者が亡くなった後の2次相続を考えた、税金対策も大切です。
もちろん相続人全員の思いを前提に、税金のことも含め遺産分割の調整をします。
生前からの準備が大切

できれば、終活の一環として生前にあなたと相性がよく相続の経験ノウハウの多い税理士(会計事務所)を見つけておくことです。
そして、自分が亡くなったら、その方に連絡するよう、相続人に知らせておくのです。
相続人が、その方に依頼するか否かも、まずは面談した上で決めるのがいいです。
依頼先が決まれば、戸籍謄本等で相続人の確定し、財産目録を、その税理士と共同で作成します。
それには、3か月ぐらいかかります。
分割についても、3か月ぐらい見ておくといいでしょう。
そういった意味で、相続が発生したら税理士(会計事務所)に早めに連絡し、進め方を相談することが大切です。(執筆者:1級FP、相続一筋20年 橋本 玄也)