児童扶養手当など、基本的には離婚しないと受けられない公的扶助を早めに受け取れるようにする
あるいは、
お子さまの就学のタイミングに合わせて諸々のことの話が全部つく前に離婚をする
というケースが時々見られます。その場合には、予想外に話がまとまらずに、気付くと請求できるものもできなくなりかねません。
そうならないように請求できるタイムリミットがいつになるのかをしっかりと押さえたうえで話を進めるようにしたいものです。
今回は離婚の際のお金に関連する請求で、請求できる期間がどのように決められているのかを取り上げます。
なお、以下は協議(話し合い)で離婚をして、調停などの手続きをとっていない場合を前提にしています。
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目次
財産分与:2年以内にまとまらないようなら調停申し立て
婚姻期間中に夫婦が共同で築き上げた財産を分けることを指すのが一般的な財産分与です。
分与対象になる財産が預貯金や保険のように評価の基準となる日(普通は離婚したときを基準とするでしょう)さえ明確に決まれば、金額ははっきりするので話し合いでこじれることは多くはないと言えます。
ただし、不動産や株式の場合には評価額自体変動することが多いのが事実です。
従って、離婚時ではなく離婚後の話し合いの時点を基準にするようなときには、時期によって大きく金額が変わってくることがあります。
また、不動産の場合には購入の際に夫婦のどちらかの親(あるいは両方の親)が援助をしていたり、結婚前の預貯金の一部を頭金にあてている場合などは、頭金として入れたものを財産分与でどう考えるかといったことで話がまとまらない可能性もあります。
財産分与については、
ので注意しましょう。
離婚慰謝料:基本は3年、DVの場合は5年のことも
結婚生活が破綻した原因が相手にあるとして、離婚に至ったことについての精神的な苦痛を補うための慰謝料を請求する場合があります。
これについては、離婚から3年で時効になるとされています。
結婚期間のうちに暴力があったなどでけがをした場合には、2020年4月からはそのようなけがをして5年は損害賠償を請求できると法改正されました。
従って、今後は
ことでしょう。
ただ、時間がたつとそのときの証拠収集が難しくなることもあり(病院受診時のカルテなどや警察に相談したときの記録など)、これについても話し合いで解決しそうになければ早めに裁判手続きをとるなりしたほうがよいと言えます。
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年金分割の請求:離婚後2年以内に手続き
年金分割については離婚後2年以内に調停などの裁判手続きをして、もともとの請求期間(つまり離婚した日の翌日から2年)から6か月以内に調停などが成立した場合(つまり最大で2年6か月のうち)に年金分割の手続きがとれると定められています。
養育費:5年で時効になる可能性があるので注意
とりあえず先に離婚をして、養育費の金額について後から決める場合をみかけます。
養育費は子どもの成長にあたって日々発生する費用に充てるためとされていますが、法律上は月ごとに定期的に発生する債権とされています。
上記のような場合には、毎月発生した養育費の支払を求める権利は5年で時効になるとされています。
従って、、支払いのないままに放置していると養育費の請求ができなくなりますので、注意が必要です。
なお、離婚して日がたってから養育費の支払いを受けていないということで、家庭裁判所に調停申し立てをしても、金額を取り決めたことがわかる書類などがないことがあります。
この場合には相手が離婚時から支払うことに合意しない限り、あとで元夫婦双方の収入に基いて養育費の金額を取り決めても、さかのぼって離婚のときからもらえると限らないので、注意が必要です。
早めの手続きが無難
離婚後に話し合いがまとまらない場合には、養育費、財産分与などそれぞれで調停の申し立てをする必要が出てきます。
また、特に財産分与は思ったよりも話がまとまるのに時間がかかることがあるので、いずれにしても早めに手続きを取っておくのが無難でしょう。(執筆者:弁護士 片島 由賀)