高校卒業後に大学や専門学校に進学するとなると、多額の進学資金が必要となります。
そこで、奨学金を利用される方も多くいますが、一方で年に数回の割合で「奨学金の滞納」のニュースを目にする機会もあります。
「注意すべき部分はどのような点か」
奨学金を利用する前に確認しておきましょう。
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目次
奨学金は約半数が利用
「平成30年度 学生生活調査報告(独立行政法人日本学生支援機構)」によると、日本学生支援機構(旧日本育英会)や学校からの奨学金など、何らかの奨学金を受給している人の割合は次の通りになっています。
【区分別・奨学金の受給者の割合】
・ 大学(昼間部);47.5%
・ 短期大学(昼間部):55.2%
・ 大学院修士課程:48.0%
・ 大学院博士課程:53.5%
・ 大学院専門職学位課程:41.1%
※調査時点(平成30年11月)における最近1年間に「日本学生支援機構の奨学金」と「日本学生支援機構以外の奨学金(給付・貸与等)」のいずれか、または両方を受給した学生の割合
「平成30年度 学生生活調査結果(独立行政法人 日本学生支援機構)」
次に、平均貸与(利用)総額についても、日本学生支援機構の奨学金で確認しておきましょう。
【平均貸与(利用)総額】
・ 第一種奨学金:237万円
・ 第二種奨学金:343万円
※平成28年3月に貸与が終了した奨学生(大学(学部))の1人当たりの貸与総額。
「奨学金事業への理解を深めていただくために(独立行政法人 日本学生支援機構・平成29年11月)」
多くの方が利用しており、さらに貸与(利用)額も総合計では結構な金額になっています。
どんどんと借りましょうというものではありません。
貸与型については、卒業後にご本人(お子様)が返還していくことになります。
借り過ぎには注意が必要です。
延滞率はどのぐらい?
こちらも独立行政法人 日本学生支援機構のデータになりますが、奨学金の返還(返済)による延滞率は次の通りとなっています。
貸与終了者に占める次年度末時点で延滞3月以上の者の比率
【平成30年度貸与終了者】
・全学校種別:1.6%
・大学(学部):1.4%
・短期大学:1.3%
・専修学校:2.5%
【平成29年度貸与終了者】
・全学校種別:1.6%
・大学(学部):1.4%
・短期大学:1.5%
・専修学校:2.4%
【平成28年度貸与終了者】
・全学校種別:1.5%
・大学(学部):1.3%
・短期大学:1.2%
・専修学校:2.4%
独立行政法人 日本学生支援機構「学校毎の貸与および返還に関する情報」(令和元年度末時点)
住宅ローンの延滞率は正式な統計データはありませんが、1%前後と言われておりますので、奨学金の延滞率が突出して高い訳ではありません。
ほとんどの方が延滞をせずに返還(返済)している状況です。
滞納してしまう理由は?
こちらも、独立行政法人 日本学生支援機構がアンケート調査をしています。
【返還できない事情(アンケート調査)※複数回答】
・ 本人の低所得:64.4%
・ 親の経済困難(本人が親へ経済援助をしており支出が多い)24.2%
・ 親の経済困難(本人の親が返還する約束)23.8%
・ 本人の借入金の返済:29.3%
・ 本人が失業中(無職):24.4%
・ 延滞額の増加:45.0%
独立行政法人 日本学生支援機構「返還金の回収状況及び平成30年度業務実績の評価について」
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【奨学生本人の職業と年収(無延滞者と延滞者)】
<無延滞者>
(職業)
・ 正社(職)員:74.3%
・ 非正規社(職)員・従業員:13.9%
・ 失業中:4.0%
(年収)
・ 0円:4.9%
・ 100万円以下:6.1%
・ 100万円超~200万円以下:9.0%・ 200万円超~300万円以下:22.5%
・ 300万円超~400万円以下:21.2%<延滞者>
・ 正社(職)員:40.7%
・ 非正規社(職)員、従業員:30.9%
・ 失業中:14.6%
(年収)
・ 0円:12.2%
・ 100万円以下:16.0%
・ 100万円超~200万円以下:18.9%・ 200万円超~300万円以下:22.6%
・ 300万円超~400万円以下:14.0%「令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果(独立行政法人 日本学生支援機構)」
借りる前に知っておきたいこと
延滞のケース(理由)は個々でさまざまでしょうが、奨学金の返還を延滞してしまうパターンとしては次の3つが考えられます。
・ 卒業はしたが、就職できなかった。またはフリーターになった。
・ 就職したが、すぐに退職してしまった。
奨学金の貸与型は卒業後に返還(返済)していく必要があります。
利用する側にとっては、言い換えると借金(ローン)と同じ意味合いになります。
貸与型の制度は世間ではいろいろと問題点を含めて言われておりますが、利用する側は奨学金のメリットとデメリットの両方を理解して利用する必要があります。
また、奨学金に限らずに制度は自分自身の利用次第でメリットにもなればデメリットにもなります。
奨学金を利用されている方の多くは延滞せずに返還しています。
メリットにするためには、進学は自分の将来のための自己投資である認識を持つことが必要です。
進学後の学校を卒業したことで、自動的に就職先もセットで付いてくるものではありません。
進学先の学校で自分がどのぐらい本気で取り組むか、どのぐらい充実させるかがポイントになってきます。
したがって、進学さえできればいい、という考え方ではなく、進学先で学ぶ内容や卒業後の進路などを調べることや考えることが必要です。
また、貸与を受ける金額も、目の前のことだけでなく、その先の返還のことも考えて利用する必要があります。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)