株式を売買(取引)する場合には、証券会社に売買注文を出して証券取引所にて取引を行いますが、証券取引所の取引時間外などに株式を売買することができるのがPTS取引です。
世界情勢によって株価に大きな影響を及ぼすことも多くなっており、証券取引所の取引時間内だけでは対応できないケースも増えてきています。
PTS取引とはどのようなものでしょうか。
目次
PTS取引とは
PTSとはProprietary Trading Systemの略称で、私設取引システムと訳されます。
多くの株式の売買取引が行われている東京証券取引所などとは別に設けられた私設取引所での取引をPTS取引といいます。
現物取引だけでなく信用取引もできますが、PTS取引は一部の証券会社でのみ取り扱っています。
東京証券取引所の取引時間は、前場が平日9時から11時30分まで、1時間の昼休みを挟んで後場は平日12時30分から15時までの合計5時間となっています。
なお、それ以外の時間では、証券会社に売買注文を出すことは可能です。
しかし、この取引時間では、会社員の方は仕事中と重なってしまうとともに、日本時間の夜に起きた世界情勢によって機動的に取引を行うことは難しいでしょう。
そこで、PTS取引では8時20分~16時00分まで、さらには夜間取引として16時30分~23時59分まで売買取引ができます。
取引所の昼休みや決算発表後の15時以降も取引ができます。
なお、PTS取引で売買できる時間、夜間取引ができない証券会社などPTS取引を取り扱っている証券会社によっても異なりますので、ご注意ください。
なお、夜間取引も含めたPTS取引ができるネット証券会社は、SBI証券、楽天証券、松井証券となっています。
PTS取引のメリット
取引時間が長いことが最大のメリットとして挙げられます。
自分のライフスタイルに合わせた売買取引が可能になりますが、それ以外にもメリットがあります。
呼値の単位が細かい
株式を売買する場合には、売買単位は100株単位で統一されていますが、1株の株価によって売買する際の価格の刻み幅が決まっています。
これを「呼値」といい、PTS取引では、東京証券取引所などの取引所取引と比べると呼値の10分の1~1,000分の1とより細かく売買注文が可能となっています。(TOPIX100構成銘柄である場合を除く)そのことで、より思い通りの取引が可能です。
<例>呼値の違い・一部抜粋
(1株の基準値段)3,000円以下(取引所取引の呼値)1円(PTS取引)0.1円
(1株の基準値段)3,000円超~5,000円未満(取引所取引の呼値)5円(PTS取引)0.5円
(1株の基準値段)5,000円超~3万円未満(取引所取引の呼値)10円(PTS取引)1円
売買手数料が安くなる証券会社もある
売買手数料を、取引所取引よりもPTS取引の方を安く設定している証券会社もあります。
例えば、SBI証券であれば、取引所取引ではなくPTS取引を行うことにより、昼間取引は手数料が取引所取引より約5%安く、夜間取引は無料となっています。
取引手数料が低ければ低いほど利益が出やすいことから、東京証券取引所にて取引できる時間帯でも、PTS取引を利用される方はいます。
デメリット
デメリットもあります。
まだまだ取引量が少なく、値動きが大きくなることも
PTS取引は全ての証券会社で取り扱っている訳ではありません。
また、PTSで取引される方もまだまだ少ないため、取引量はどうしても取引所取引よりも少なくなります。
特に、夜間取引はその傾向が多いと言えるでしょう。
一部分の大型株を除き、東京証券取引所の取引終了後に個別銘柄特有の大きなニュースや世界的に大きな影響を及ぼすニュースが出た場合を除き、中には、日中の取引所取引では活発に取引されている銘柄でもPTSの夜間取引では出来高がほとんどないというケースもあります。
日中でもあまり多くない出来高の銘柄であれば、夜間取引のPTSでは売り注文、買い注文のどちらかしか出ていない状況、または両方ともにゼロの場合もあります。
取引量が少ないことで、夜間取引での株価と翌日の始値に大きな乖離が出てしまうケースもあります。
思わぬ利益が出ることもあるでしょうが、その逆になることもあります。
なお、日中の取引であれば、取引所取引の株価とPTS取引での株価を比較して注文を出すことになりますので、一般的には大きな株価の乖離は起きにくいと考えられます。
指値注文のみしかできない
株式の売買注文では、「いくらでもいいので〇〇の株式を売りたい・買いたい」といった成行注文があります。
一方で、「この価格で〇〇の株式を売りたい・買いたい」といった指値注文があります。
PTS取引では、指値注文のみとなっています。
したがって、特に取引量が少ないと約定しないケースもあります。
このように、取引量が少ないなど発展途上の部分もありますが、もちろんメリットの部分もあります。デメリットの部分も認識した上でメリットを活かしたいものです。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)