日々の生活の中で、ご近所との関係は避けて通れません。近しい関係であるほど、思わぬところでトラブルが起こることもありますが、言葉に配慮することでスムーズな解決につながることは意外に多いものです。
そこで今回は、弁護士の視点からご近所トラブルが発生した際に「言ってOKな一言」と「言ってはNGな一言」を解説します。

言ってOKな一言「申し訳ありません」
謝罪の言葉は、言ってOKな一言です。ご近所トラブルは、感情的な対立さえ解消できれば円滑な解決に向かうことも多いため、相手の感情に配慮した謝罪は、必要に応じて積極的に伝えることが有益でしょう。
謝罪をしてしまうと、相手の言いなりになってしまうのではないか、自分がすべて悪いと認めることにならないか、と心配を感じるかもしれません。しかし、謝罪そのものにそのような法的効果はありません。
ただし、何に対して謝罪するのかは明確にしておくことが望ましいところです。一例としては、「お気を悪くされたことへの謝罪」「ご迷惑をおかけしたことへの謝罪」などが挙げられます。特に、言い分に食い違いがある場合は、「相手の主張するとおりのトラブルを起こしてしまったことへの謝罪」という内容にならないよう気を付けましょう。
言ってOKな一言「根拠はありますか」
相手から、金銭の支払や特定の行動をするよう求められた場合、その要求に応じる必要があるか疑問であれば、根拠を示すよう依頼する発言はOKな一言です。
法律上、人に金銭の支払や特定の行動を求めることができるのは、その相手が了承した場合か、法的根拠がある場合に限られます。仮に裁判で争うとなると、法的根拠の有無が大前提になるでしょう。
そのため、根拠のない要求には応じることが難しい、というメッセージを伝える意味でも、相手の要求が感情論になってしまっていないか指摘する意味でも、一度冷静に根拠の提示を求めることは有力です。
もっとも、相手の感情を逆撫でする可能性は否定できないため、あくまで冷静に、必要な情報提供をお願いする態度で発言するのが望ましいでしょう。
言ってはNGな一言「やります」「支払います」

相手の求めに応じて支払いや行動を約束する発言は、基本的にNGな一言です。
これらの発言をした場合、そのやり取りによって新たな契約が成立し、支払や行動をする法的な義務を負ってしまう恐れがあります。トラブルそのものに落ち度がなかったとしても、それとは無関係に負担を強制される結果になりかねません。
心から約束したい、約束しても構わない、という場合には問題ありませんが、本当にそのような意思であるかは、一度慎重に確認してから発言することをお勧めします。
言ってはNGな一言「非常識だ」
相手の言動が不合理であるように思えたとしても、それに対して非常識であると指摘することはNGな一言です。これは、実際に非常識な状況、内容であっても同様です。
非常識であるかどうかは、トラブルの法律的な解決には一切影響しない事情です。非常識な人の請求は認められない、というルールはないためです。そのため、非常識であると指摘をしても、トラブル解決へのプラスの効果はなく、ただ相手の感情を刺激する結果にしかならないでしょう。
発言の際の注意点
基本的に、その場で結論を出すのではなく、双方の感情面を鎮めるためにコミュニケーションを取る、という気持ちでいることが望ましいでしょう。ご近所トラブルは互いに何らかの譲歩が必要になりやすいため、まずは落ち着いて譲歩を検討できる段階に移るステップが必要です。
一方で、了承する必要のない要求に対しては、毅然とした態度を示すことにより、解決方針やトラブルの争点をハッキリとさせることも重要です。
適切な対応のためには、その場のコミュニケーションの終わらせ方や、その後のやり取りの流れ、トラブルの主な争点を事前に想定しておくことが必要になります。現場で反射的に発言してしまうのではなく、目指すべきゴールに向けて双方が歩みを進められるような言動をあらかじめ準備しておきましょう。
まとめ
ご近所トラブルは、どんな人にも起こり得るものです。しかし、対応のコツを把握しているかどうかで、結果は大きく変わる可能性があります。
感情的になったり不用意に義務を負ったりする表現は避け、解決に向けた問題点を明確にする方針が重要になりやすいでしょう。
「ちょっとした一言」でトラブルが円満解決することも悪化することもあります。些細な違いを意識して、適切なコミュニケーションを取っていきましょう。