イラストレーター、エッセイストなどのみうらじゅんが19日、都内にて『アウト老のすすめ』(文藝春秋)発売記念イベントを開催。報道陣の囲み取材に応じた。
アウト老(アウトロー)とは、はみ出し老人のこと。同作は、大人げないまま新型高齢者となったというみうらじゅんの珍妙な日常や妄想、愛のメモリーがてんこ盛りの、息苦しい社会に風穴をあけるエッセイ95本が収録されている。

集まった報道陣を前にして「なんか俺、悪いことしたみたいじゃない?謝罪会見じゃないよね?」と、さっそくのみうら節から会見がスタートした。
はじめに、同作のタイトルになっている“アウト老”の定義について聞かれると、「還暦を迎える前に、老いるショック(老いることを自ら宣言して笑っていこうというみうらの造語)を感じたんですよ。老いは当然のことで、考えてもしょうがないじゃないですか。だから、しょうがないことには、しょうもないことをぶつけんのが一番いいなと思ったんです。それで始めたのが“老けづくり”。実年齢よりも老けて見えるような格好をしたり、行動したりすることを心がけようと思って。はみ出し老人みたいなことを考えてやっていくのが、たぶん僕が目指す“アウト老”だと思います」と、今年67歳になるみうらならではの老いとの向き合い方を語った。


続けて、「コロナ禍のときに、逆手に取って老けづくりを始めようと思ったんですけども、僕、残念なことに白髪があまり出なくて。どうしたもんかなと思ってたところ、髭を伸ばしてみたら大量に白い毛が混ざってることに気が付いたんですよ。これが老けづくりのひと役を買ったんですけども。ことあるごとにそういうエッセイを書いていて、それがまとまったっていうのがこの本です」と、アウト老のきっかけを明かした。
還暦を迎え、老いについてよく考えるようになったというみうら。「やっぱりしょうがないことって、歳をとるとシリアスに考えがちだから。そうならないように、こっちはしょうもないことを必死に考えて、ぶつけていくっていうやり口が自分にはあってんじゃないかなとは思ったんですよね」と、胸中を口にした。

具体的に実践してることは?という質問に、みうらは「完璧にどうかしてる状態、DS状態って呼んでるんですけど、その状態に自分を追い込んでいくってことが一番大切ですね。誰かからこうしたほうがいいとか言ってくる世界ではないんで。自分を崖っぷちに追い込む作業が大切だと思います」と、アウト老な生活には、意外な苦労があるという。
また、同作は発売前に重版が決定。イベントチケットは2分で完売している。この人気に対してみうらは「イベントのハイタッチをみんなしたかったんじゃないですかね。アイドルがハイタッチ会をしているっていうのは知っていましたが、おじいさんのハイタッチ会はないだろうっていうことで企画しました。人がやらないスキマを見つけるスキマ産業で45年間やってきたんで、まあそれに付き合ってやるかとおもっていただけたんではないでしょうかね」と、謙遜しながらも嬉しそうな表情を浮かべた。

『タモリ倶楽部』で共演が多かったタモリはアウト老ですか?と聞かれると「僕、そこは一応、アウト老になる前の定義として、“比較三原則”っていうのを考えたんです。他人、親兄弟、それと過去の自分。それと比べると一気に不幸になるだけのことなんで、タモリさんと比べてとか、そういう考えを排除していくのが一番よろしいかと思います」独自の見解を述べた。
最後にみうらは読者に向けて「自分で書いた本だから、なんて言っていいかわからないんだよね。読んでもらうしかないです。それで、しょうがないなこの人とか、俺も年取ったらこうなりたいとか、なんだこいつとか、皆さんの判断に任せます。一応タイトルに「すすめ」って書いてあんだけど、それは俺に勧めてるだけのことで。今の段階ではまだアウト老のすすめは俺に勧めてるだけです」と、コメントした。
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