今、日本経済は停滞から抜け出し、思惑をテコに大きく動き始めています。この一連の流れにおけるキーマンは日本銀行です。しかし、日銀が行っている金融政策について、正しく理解している人は多くありません。また、そういった無理解が「日銀悪玉論」を展開しているとも言えます。

  今回は、現在日銀がやろうとしている金融政策(とりわけ非伝統的金融政策)についてお話ししましょう。

そもそも日本銀行って何をしているの?

  一般的に、日本銀行(中央銀行)の金融政策は「預金準備率操作」や「公開市場操作」などの手法によって行われます。考え方としては、市中に流通するお金や銀行が保有するお金の額を、上記手法により操作(吸い上げたり吐き出したり)することによって、「民間にお金が回りにくい状況」や「民間にお金が回りやすい状況」を形成します。

  例えば、景気が過熱しすぎて過度のインフレが続くような場合は、お金が出回りにくい状況に誘導してインフレを抑えようとします。逆に、デフレの様な状況下では、お金が回りやすい状況に誘導して、デフレから脱却しようとします。

  これらは、伝統的金融政策と呼ばれ、日本だけではなく世界各国、中央銀行を有する国家であれば当然の政策として行われています。(リーマンショック後のアメリカで、FRBが大型の金融緩和(所謂QE)を行った事を覚えている方もいるでしょう)実際、日本も長期にわたって、この伝統的金融政策でインフレ・デフレをコントロールし、経済成長を続けてきました。

  しかし、バブル崩壊後の20年、この伝統的金融政策の効果が「発揮されにくい」状況が続いてきました。とはいっても、経済成長や景気動向などの観点からは、ずっと不況が続いていたわけではないのですが、やはりバブル以降の落差が激しかった事と、生活実感レベルでは経済成長の恩恵を感じられなかった事が「失われた20年」という不名誉な呼び名の元になっているのだと思われます。

最近日本銀行がやっていること

  さて、このように伝統的金融政策に限界を感じた日本銀行は、ここしばらく「非伝統的」ともいえる金融政策に取り組んでいます。それは「民間銀行貸出の日銀によるバックファイナンス」「資産買入基金の設立」「インフレターゲッティング」です。

  まず「民間銀行貸出の日銀によるバックファイナンス」ですが、これは民間の資金需要を最終的に日銀がバックファイナンス(引受)するという仕組みです。経済は、お金を借りて設備投資等を行う事により、それが何倍もの経済効果をもたらす(これを乗数効果という)のですが、こういった一連の流れを阻害する一つの要因に、民間銀行による融資否認がありました。

  ようは、前向きに仕事をしたい民間業者がいても、銀行が貸さないという現実があったのです。しかし、日銀の非伝統的金融政策では、この融資に関して日銀が民間金融機関に対してバックファイナンスする事としています。

  民間銀行はあくまで融資先の業況等を見て融資を決めるので、日銀の支援はあくまでオプションという事になりますが、すくなくとも超低金利での日銀からのバックファイナンスがあれば、「審査に関するハードルは下がるのでは?」という思惑が働きます。

  次は「資産買入基金の設立」です。「日銀の資産=日本円の裏付け」ですので、本来的日銀はリスク性資産を持つ事を避けてきました。しかし、長引く低成長への方策として、この資産の一部を使って「CP」「社債」「株価連動型投資信託」「不動産投資信託」を購入しています。これらの数値が上がる事は、とりもなおさず「成長マインドの喚起」ですので、短期~長期にかけて経済成長のテコ入れになります。

  そして「インフレターゲッティング」本来、高いインフレを抑える目的として使われていたインフレターゲッティングを、低い成長率を引き上げる手法として導入すること自体、非常に実験的試みですが、この政府目標を金融政策で支援します。もし、目標の2%が実現すれば、それはバブル時の上昇率(1%代)よりも高い数値となりますので、もたらされる資産効果は計り知れないでしょう。

  このように、日銀は従来の伝統的金融政策に加え、非伝統的金融政策により日本の復活を支えようとしています。こういった状況からも、安倍政権の今後が非常に楽しみです。