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投資家に求められる「行動心理;行動ファイナンス」とは

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行動ファイナンス

1.行動ファイナンスとは

  行動ファイナンス(behaivioral finance)とは、10年ほど前から注目されている比較的新しい分野の学問であり、この分野の草分けであるプリンストン大学のダニエル・カーネマン(Kahneman)博士が2002年にノーベル経済学賞を受賞したことにより注目されるようになってきた経済理論です。

  これまでの伝統的なファイナンス理論では、「投資家は新しい情報を正確に処理し、価格に反映させる」ということが基本となっていました。1.新しい情報が得られた際に、その情報に基づいて確率Pの値を正確に更新すること、2.その上で効用Uの期待値を最大化する、という2ステップを満たして行動することが前提となっていました。これを数式で表すと、次のようになります。


さて、ここで考えてみたいのは、本当に「人はいつでも合理的に行動(最大利益につながる選択)」をしているか?ということです。自分自身を振り返ってみて、「私は常に合理的な行動をしている」と言い切れる人なんて果たしているでしょうか?


  人はいつでも論理的に行動をしているわけではありません。その時の「感情」に左右されて行動することが多いのではないでしょうか。人は緻密な計算とか論理的とかそういったことよりも、それとは対極にある「感情」などの心の動きに引きずられて選択や決定が行われがちです。つまり人の心理を軸にして、人の消費活動、経済活動、投資活動などを見ていこうとする理論が、行動ファイナンスなのです。

2.伝統的なファイナンス理論と行動ファイナンスとの違い

  伝統的なファイナンス理論は「利益の追求をして、常に合理的な行動をする」ということが前提となっています。効率的市場仮説(EMH;efficient market hypothesis)においても、常に合理的に行動する人が想定されています。

  また、投資家は情報をいつでも十分に持っており、情報を適格に処理し、常に正しい行動をとるとされてきました。また、市場の動きも合理的な行動による結果が市場に反映されるわけなので、市場の動きを論理的に説明することは可能です。

  つまり、伝統的なファイナンス理論では、まず正しい理論があり、それに基づいて適格に行動するという「規範理論」というのが軸になります。

  一方で行動ファイナンス理論では、「人の行動は常に合理的であるとは限らない」ということが前提になっています。「合理的ではない行動」の結果、市場が「論理的に説明できないような動き」をすることも想定されているわけで、この「論理的に説明できないような動き」は行動ファイナンス理論においては、当然に認められます。

  つまり、行動ファイナンス理論の軸となるのは「行動理論」であり、行動が合理的であることは前提にされていないのです。

3.アノマリー(anomaly)とは

  アノマリーとは、市場においては「明確な根拠はないが、経験上よく当たる経験則」のことをいいます。また、もともとの語源は「基準からのズレ」「変則」「異常」という意味になります。

  アノマリーを説明する際に、一番わかりやすい事例が「バブル」です。「バブル」は「買うから上がる、上がるから買う」といったことが繰り返される結果発生する物ですが、「合理的な行動」においては株価が高いときに買う「高値買い」を行うようなことはありません。

  また、「上がり続けることを前提」にしているという点においても合理的な行動とは言えません。しかし、この日本でもバブルはありましたし、世界の様々な国でもバブルのような現象が起きていることは事実です。

  伝統的なファイナンス理論においては、「合理的な行動」が前提ですから、「買うから上がる、上がるから買う」といった非合理的な行動は想定されていません。ですから、理論的にはバブルは発生しないということになります。しかし、行動ファイナンス理論においては「合理的な行動をするとはかぎらない」ことが前提であるので、株の高値買いといったようなバブルの発生理由の行動を取ることも考えられています。

  しかし、長期的にみればバブルは必ず崩壊し、やがては伝統的なファイナンス理論で導かれた理論的な水準に収斂していくこととなります。つまり中・長期的な視点では伝統的なファイナンス理論を活用することができ、短・中期的には非合理的行動によるアノマリー等を理論の中に組み込んでいる行動ファイナンス理論が活用できるということになります。

4.終わりに

  「損切り」ができなくて大損をしてしまった。その大損を取り返すために「一発勝負」的な相場の張り方をした。こんな経験をした人はいないでしょうか?

  論理的には正しくないことはわかっていてもついつい合理的ではない行動をとってしまうということ。これはまさに行動ファイナンスの分野であり、行動ファイナンスを知ることで人が陥りやすい失敗に気づくことができます。

  次回以降、行動ファイナンスに関する用語について解説していきたいと思いますが、行動ファイナンスを知ることによって、皆さまの投資活動のお役に立てれば幸いです。

《野﨑 悟志》
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野﨑 悟志

野﨑 悟志

<保有資格> ・CFP ・1級ファイナンシャルプランナー技能士(資産設計提案業務) ・証券外務員Ⅱ種 ・年金アドバイザー2級 ・消費生活アドバイザー 寄稿者にメッセージを送る

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