1.超高齢化社会がやってきます

  65歳以上の人が総人口に占める割合のことを“高齢化率”といいます。

・高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」(日本では1970年に越えました)
・14%を超えると「高齢社会」(日本では1994年に越えました)
・平成72(2060)年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上
・高齢者人口は、いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となる平成27(2015)年には3,395万人となり、その後も増加。54(2042)年以降は高齢者人口が減少に転じるが高齢化率は上昇。
・平成72(2060)年には高齢化率は39.9%に達し、2.5人に1人が65歳以上。
・平成72(2060)年には75歳以上人口が総人口の26.9%となり4人に1人が75歳以上。


平成24年版高齢社会白書より

2.成年後見制度とは何?なぜ成年後見制度が必要なの?

  成年後見制度とは、精神上の障害(知的障害、精神障害、痴呆など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないように家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。正しい法律行為をするには、法律行為が正しいか否かを理解する能力、判断能力が必要になります。

  ところが、痴呆老人はこの判断能力が低下しています。そのような老人に代わって契約をしたり、あるいは老人を不利な契約から守ってあげよう保護してあげようというのが、成年後見制度なのです。

(ア) いままでの禁治産、準禁治産制度に代えて新しい制度になったのはなぜか?

  平成12年3月までは、禁治産および準禁治産という制度があった。しかし、次のような欠点があり、それらの制度はほとんど利用されなかった。新しい成年後見制度ではこれらが改善されました。

・禁治産および準禁治産という言葉のイメージが悪く、戸籍にも記載された
・申し立てる人が身内関係者と検察官に限られ,身寄りのない人は利用できない
・配偶者がいる場合は必ずその配偶者が後見人,保佐人になると決められていたので,本人が高齢の場合には配偶者も高齢であり,後見人,保佐人の役割が果たせない
・申立てから決定まで半年以上かかることも多く,また,鑑定費用も高い
・後見太りといって、相続人や縁故者が後見人となり、後見人が自己の利益を図るようなことに利用されることがあった

(イ) 成年後見のメリットとデメリット

(ウ) 法定後見とは

任意後見受任者・・・任意後見契約を締結した時から、判断能力が減退し、任意後見契約の効力が発生する時までの間における、本人を支援する予定者のこと。

任意後見人・・・任意後見契約の効力が発生した時からは、本人を支援する者のこと。
※任意後見契約の効力発生前の支援予定者が「任意後見受任者」、効力発生後の支援者が「任意後見人」となる

3.任意後見制度とは何?

  任意後見制度とは、本人に十分な判断能力がある間に、将来、認知症、知的障がい、精神障がい等により判断能力が減退した状態になった場合に備えて、あらかじめ自分自身の意思で選んだ信頼できる支援者(任意後見受任者)に、将来の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公正証書で締結しておくもの。そして、本人の判断能力が減退した時に、任意後見人として、本人の意思を代理し、実現する制度です。

  なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人が予め選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するに留まります。ファイナンシャルプランナーが大きくかかわるのは、任意後見制度のほうです。

(ア) 任意後見の対象者

(イ) 任意後見受任者選任のチェック方法

(1) 成年後見制度について理解しているか。
(2) 家族(特に配偶者)が賛成しているか、家族内でトラブルになる可能性はないか。
(3) 金銭面に困っていないか。
(4) 住所が遠方でないか、引越すことはないか。
(5) 仕事が忙しくないか。忙しくても親身になってくれているか。
(6) 長生きできるか(20歳以上年下か)、健康面に不安はないか。
(7) 報酬についての話し合いはきちんとできているか。
(8) 話をしっかり聞いてくれるか、十分に老後の希望を理解してもらえたか。

(ウ) 任意後見制度の流れ

  成年後見人になるのは、(1) 配偶者や親族(2) 弁護士・司法書士・行政書士などの法律の専門家(3) 社会福祉士・精神保健福祉士などの福祉の専門家(4) その他の第三者など「個人」だけではなく、「法人」も成年後見人として活動しています。

  任意後見受任者と決めた方とは、任意後見契約を行う前に、十分な時間をかけて話し合いの場を設ける必要がある。そして、希望するライフプランや要望を明確に任意後見受任者が理解できるまで、契約を締結しないようにする必要がある。

(エ) 任意後見制度の流れのフロー表

(オ) 任意後見監督人とは

・任意後見監督人は任意後見人の事務を監督します。
・任意後見人が適正に後見事務を行っているのか、必要に応じてチェックをし、家庭裁判所に定期的に報告を行います。
・任意後見監督人の監督の過程で任意後見人の事務に「不正な行為」「著しい不行跡」などが判明した場合には、任意後見人の解任なども視野に入れてその後の対応を検討します。また、任意後見人と本人の利害が対立する行為については、本人を害するおそれがあるので任意後見人は本人を代理することができません。この場合、任意後見監督人が本人を代理します。

4.任意後見制度にかかる費用

  任意後見制度は必ず公証人役場で公正証書を作成する必要があります。

 (1)公正証書作成の基本手数料⇒1万1,000円
 (2)登記嘱託手数料⇒1,400円
 (3)登記所に納付する印紙代⇒4,000円

  この他にも当事者に交付する正本等の証書代や登記嘱託書郵送代がかかります。詳しくは公証人役場に聞いてみるのがよいでしょう。

5.任意後見の欠格事由

  ※任意後見人には、【任意後見に関する法律第4条の3】任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。

  イ 民法第847条各号(第4号を除く。)に掲げる者ロ 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族ハ 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

  ※【民法第847条(第4号を除く。)】(後見人の欠格事由)

  次に掲げる者は、後見人となることができない。一 未成年者 二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 三 破産者 四 行方の知れない者

6.任意後見人の職務

  「本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必要な代理行為を行い、財産を適正に管理していくこと」

(ア) 任意後見人の職務(身上監護)

  身上監護では、「医療に関する契約」「介護等に関する契約」「住まいに関する契約」「施設に関する契約とその履行」「教育・リハビリに関する契約」の後見事務を遂行

●福祉サービス利用に関する諸手続
・保険サービスや福祉サービス利用契約の締結や管理、内容の確認
・要介護認定の手続き、内容の確認
・施設入所契約、内容の確認

●本人の住居の購入や賃借、家屋の増改築などに関すること

●医療サービス契約や入院に関する諸手続き

(イ) 任意後見人の職務(財産管理)

  財産管理では、「預貯金の管理」「収入・支出の管理」「税務処理」の後見事務を遂行

●不動産や重要な動産などの財産管理、保存、処分
●銀行や保険会社などの金融機関との取引
●年金や障害手帳など定期的な収入の管理
●土地や貸家の賃料収入の管理
●住宅ローンや家賃の支払など定期的な支出の管理
●保険や公共料金などの定期的な支出の管理
●日常的な生活費の送金や生活必需品などの購入、支払
●不動産に関する権利証や通帳といった書類や実印の保管、各種行政上の申請の手続き

  任意後見契約を締結する場合には、本人が契約事項を含む、任意後見契約の内容を理解していることが必要です。そのため、本人の判断能力減退前に、任意後見受任者と任意後見契約を締結しておくことが前提になります。そして、公証人が、本人の意思、代理権の範囲等を確認し、本人及び任意後見受任者との合意を公正証書にして作成します。

  任意後見契約書を作成した後、公証人は、法務局に任意後見契約の登記を嘱託します。法務局に任意後見契約の当事者、代理権の範囲等が登記されます

※居住の用に供する不動産(自宅)の処分は、後見人等の※居住の用に供する不動産(自宅)の処分は、後見人等の権限を制限するために、家庭裁判所の許可が必要です。この処分とは、売却、賃貸、賃借権の解除、抵当権の設定、その他それに準ずる行為のことを指しています。

7.任意後見契約とは

  任意後見契約とは、本人が、認知症、知的障がい、精神障がいなどにより判断能力が減退した時に、自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部の代理権を、ご本人が信頼できる方を任意後見人として依頼し、その方に付与する委任契約です。

8.任意後見契約締結についてとその留意点

【ライフプラン(生活設計)の作成】
  今後、判断能力が減退した状況を考え、介護保険の活用に関すること、生活する場所の希望に関すること(ご自宅、施設、病院の指定等)、財産の処分に関する事等、御自身の希望を明確にしてください。

【任意後見人(任意後見受任者)の決定】
  今後、判断能力が減退した状況を考え、代理人としてご本人を支援する任意後見受任者を決定する必要がある。そして、希望するライフプランについて十分話し合って、共に理解し、信頼し合える関係を作って下さい。

【任意後見契約書の原案作成】
  任意後見人に与える代理権の範囲を決めたり、任意後見人に財産管理権を与えるときは、財産目録を作成する等の任意後見契約書の原案を作成してください。

任意後見契約の利用形態
【将来型】
  現在、完全な判断能力がある状態で、将来、判断能力が不十分な状態になることに備えて任意後見契約を締結する形態です。

【移行型】
  現在、完全な判断能力がある状態の間から、本人の療養介護及び財産管理等に関する事務につき通常の委任契約を締結し、かつ、将来、判断能力が不十分な状態になることに備えて任意後見契約を締結する形態です。

【即効型】
  現時点で、軽度の認知症・知的障害等の状況にあるものの、意思能力があって任意後見契約を締結することができ、かつ直ちに任意後見契約の効力を発生させる必要がある場合に締結される形態です。

  ※判断能力が減退する前に、財産管理や死後事務、生活状況や健康状態の確認などを委任する場合には、財産管理委任契約や見守り契約(ホームロイヤー契約)を締結しておくこともできます。

  任意後見契約は、契約の締結時に効力を発生するものではありません。公証役場で任意後見契約締結後、本人の判断能力の減退し、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立て、任意後見監督人が選任された時から効力が発生します。そのため、判断能力が減退するまでは、今まで通りに本人の意思で契約や財産管理をすることができます。

9.任意後見制度のメリットとデメリット

10.任意代理契約とは

  任意代理契約とは、本人に判断能力がある間から、信頼できる方(代理人)に対し、財産管理と身上監護に関する事務を継続的に依頼する民法上の委任契約です。
そして、任意代理契約は、締結後スグに効力が発生し、契約で定めた職務を開始することになります。

(ア) 任意後見契約と任意代理契約の大きな違いは

  任意後見契約の効力が発生するのは、任意後見契約締結後スグではなく、本人の判断能力が減退し、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時から効力が発生します。そのため、任意後見契約を締結した後も、本人に十分な判断能力がある間は、任意後見受任者が職務(後見事務)を開始することはできません。そのため、任意後見契約締結後、任意後見受任者と本人との接触がなくなってしまうと、本人の心身の状態及び生活状況の変化ならびに判断能力の減退の程度などを適切に把握することが困難となり、本人の保護のために適切な時期に任意後見または法的後見を開始するタイミングを失ってしまうことがあります。

  そのような事がないように、任意後見受任者と本人の間に、財産管理を主体とする「財産管理委任契約」や身上監護を主体とする「見守り契約」を結んでおく必要があります。これらを総称して「任意代理契約」と呼んでいます。任意代理契約の内容については、任意後見契約の内容と同一でもよく、また、限定することができます。そして、任意後見契約と同じく公正証書で作成することをおすすめします。原則として任意後見契約が始まるまでの間、本人を支援して、任意後見契約の開始前に備える契約です。 本人の判断能力が十分な間から、財産管理や法律面を委任する契約です。

(イ) 任意代理契約の主なメリットとデメリット

(ア) 財産管理委任契約と成年後見制度の違い

  財産管理委任契約とは、財産管理に関する事務の全部または一部について、継続的に依頼する民法上の委任契約です。任意代理契約の財産管理に関する事務、法律的な助言や問題解決に限定した委任契約です。

  財産管理委任契約は、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。財産管理委任契約は、任意後見契約と一緒に公正証書で締結することによって効力を有効に発揮することができます。 本人の判断能力が十分な間から、身上監護や生活面を保護・支援する契約です。

(イ) 見守り契約とは

  見守り契約とは、自己の生活や身上監護に関する事務の全部または一部について、継続的に依頼する民法上の委任契約です。任意代理契約の身上監護に関する事務、法律的な助言や問題解決に限定した委任契約です。

  見守り契約は、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。見守り契約は、任意後見契約と一緒に公正証書で締結することによって効力を有効に発揮することができます。本人の判断能力が十分な間から、葬儀や埋葬に関する事務を委任する契約です。

(ウ) 死後事務委任契約

  後事務委任契約とは、本人の死後の葬儀や埋葬に関する事務について、受任者に代理権を付与する委任契約です。

【死後事務の内容】
・委任者の生前に発生した債務の弁済
・委任者の死後の葬儀、埋葬もしくは永代供養に関する債務の弁済
・賃借建物の明け渡し、敷金もしくは入居一時金等の受領
・親族関係者への連絡
・家財道具や生活用品の処分に関する事務 など

  死後事務委任契約は、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。身上監護と財産管理を万全なものとしたうえで、死後の相続、相続財産の管理または処分および祭祀の承継に紛争を生じないようにするために、死後事務委任契約は、財産管理委任契約、任意後見契約、見守り契約、遺言と一緒に公正証書で締結することによって効力を有効に発揮することができます。

11.おわりに

  ファイナンシャルプランナー(FP)は、顧客の財務状況や、家庭の事情を把握していること、弁護士や税理士など、様々な専門家との連携が取れる立場にあることが多いことから、顧客と任意後見契約を結び、一定の契約料を得る、という仕事を請負うこともあります。

  後見人(保佐人、補助人を含む)の実務は、資産管理と身上監護を通じて、被後見人の終末期に関する(ラスト)ライフ・プラン作成とその実行支援の活動です。

  後見人の活動として必要な知識を科目で表すと、不動産運用設計、金融資産運用設計、タックスプランニング、ライフプランニング・リタイアメントプランニング、リスクと保険、そして相続・事業承継です。6科目全てにわたっております。

  また、幅広い知識と関連する業務の専門家(弁護士、税理士、司法書士、不動産会社、建設会社、メンテナンス会社、そして医療と看護の方たち)との連携が必要です。

  これはFP総論で学ぶ、{専門家のネットワークを生かしながら、顧客の夢や目標実現(被後見人の自分らしさ、自己実現)のために、様々な領域にわたる包括的なアプローチによって、必要なファイナンシャル・プランニングを行うのがFPの特徴です。新たなチャンスがあるかもしれません。しかし、成年後見は生半可なものでは務まらないのも事実です。