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NISA 実践(口座開設)編~金融機関、運用商品の選び方を考える

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NISA 実践(口座開設)編~金融機関、運用商品の選び方を考える
日本版ISAの正式名称がNISAに統一されました。3ヵ月後に迫った申込受付開始にそなえ、改めてこの制度内容を会話形式で考えてみたい。

【会話の登場人物】
お金に詳しい先生
勉強嫌いだけど“お得”に敏感な女子生徒さん


生徒さん 「先生、この珈琲おいしいですね! おかわりはいかがですか?」

先生 「先に言っとくけど、砂糖はいらないからね」

生徒さん 「チッ! 残念です」

先生 「さて。それじゃ、一息つけたことだし、NISA(少額投資非課税制度)の説明を再開しようか」

生徒さん 「改めて、宜しくお願いします」


先生 「さっきは①金額、②期間について勉強したわけだ。さて、ここからはいよいよ、③口座開設や④運用に関して見ていこうと思う」

生徒さん 「よっ! 待ってました」

口座開設について


先生 「まず口座開設できるのは20歳以上の居住者とされている。そして就労していようがしていまいが、口座開設にはなんら関係ない」

生徒さん 「あ、だから私も銀行さんから勧められたんだ」

先生 「そうだね。ちなみに口座開設には通常、印鑑本人確認書類が必要だけど、この非課税口座開設にはそれプラス住民票が必要になる」

生徒さん 「どうして“住民票”が必要になるんですか? 」

先生 「それは口座開設数、一人一口座の原則に関わってくる。一人一口座を確認するためにはどこかの時点で、その人は一人しかいないと証明できるものが必要になる。運転免許証や健康保険証では公布日がまちまちなんで名寄せには使えない。そこで考えられたものが、統一基準日における…」

生徒さん 「住民票?」

先生 「そうなんだ。1月1日の時点で、その住所に住んでいるその名前の人は明らかに一人しかいない。住民票を提出する必要があるのはそのためなんだよ」

生徒さん 「へ~、知りませんでした。そう言えば、これ原則一口座とありますが、途中で金融機関を変えることはできないんですか?」

先生 「非課税口座を一度開設してしまうと、 “非課税適用確認書”の有効期限(4年)が経過するまで、原則金融機関を変更することはできない

生徒さん 「じゃあ、4年以内にもし仕事の関係や何かの事情で引越しして、その引越し先にNISA口座を開設した金融機関の支店が1店舗もなかった場合とかは? 」

先生 「残念ながら…」

生徒さん 「じゃあ、その金融機関が倒産しちゃったら? 」

先生 「その場合は倒産後の引き受け金融機関に、NISA口座自体が移管されることになるよ」

生徒さん 「引っ越しても変更できないとか、なんか不便なんですけど…」

先生 「そうだね。だから現在、検討事案として口座開設金融機関の途中変更を可能にするかどうかが検討されている。すぐに変わるわけじゃないが、今後の動向に注目だね」

生徒さん 「なるほど、そうした動きも水面下ではあるんですね」

先生 「だけど、最初に開設する金融機関選びが重要なことに変わりはない。そこで金融機関選びのポイントについて運用と併せ、見ていくことにしよう」

金融機関選びのポイント


先生 「まず金融機関選びで重要なことは自分が何をしたいのか最初に決めることだろう」

生徒さん 「何をしたいかって?」

先生 「例えば、投資信託だけを買いたいのか、それとも上場株式もその選択肢の中に加えるかどうかだね。投資信託だけを考えているのであれば銀行等で非課税口座を開設しても良いけれど、上場株式を加えるならば、証券会社を選ばないといけない。上場株式の売買は銀行じゃできないからね」

生徒さん 「なるほど。まずは運用の幅をどうしたいかで金融機関を選ぶんですね」

先生 「そう。…で、次にさっき言ったとおり、申込手数料を調べることだ。基本的にネット銀行やネット証券は割安な傾向がある。まず対面型の金融機関がいいのか、ネット型の金融機関がいいのかを決めておいた方がいいね」

生徒さん 「具体的にはどう違うんですか?」

先生 「ネット型のメリットはその申込手数料の安さと商品の多様性だろう。また、転勤や引越しがあったとしても問題ない点も挙げられる。反面、デメリットとしては商品を選択する際に詳しい商品説明が聞けない点がある。自分で調べ、自分で判断する必要が大きくなるわけだが、これは投資初心者にとってはなかなか難しいかもしれないね。

 対面型金融機関の最大のメリットは商品内容を詳しく聞けることだ。わからないをわからないままにしないで、わかるまで質問した方がいいだろう。それでも理解できないような複雑な商品には手を出さないという選択肢も出てくるからね」

生徒さん 「なるほど。私の場合は自分じゃ判断できそうにないので対面型の金融機関が良さそうです。ところで、先生! 確か上場株式を保有していれば配当金ってもらえるじゃないですか? 郵便為替でNISA口座の株式配当金を受け取ることもできるんですか? 」

先生 「その辺は誤解が多いんだけど、実は配当の受取り方法に“株式数比例配分方式”を選択していないと非課税口座は開設できないんだ。上場株式の配当金の受取り方法には3種類あるのは知っているかな?」

生徒さん 「確か、こんな感じでしたよね?」

◇上場株式の配当金受取方法
1)郵便為替
2)指定銀行口座(一口座)に全部の証券会社で預かっている株式配当金が振り込まれる
 (登録配当金受領口座方式)
3)証券会社毎に預かり数量に応じて(比例して)各証券口座に配当金が振り込まれる
 (株式数比例配分方式)

先生 「そう。このうちの株式数比例配分方式でないと非課税口座が開設できないわけだね」

生徒さん 「じゃあ、今まで都合があってわざわざ他の配当金受取方法を選択していた人も非課税口座を開設するためには変えなくちゃいけないんですね。なんか、面倒~」

先生 「まあまあ、そう言わずに…」

生徒さん 「ぶーぶー。他にもNISA口座の注意点ってあるんですか?」

先生 「あとは譲渡損益に関することかな。損益通算ができないからね」

損が出た場合の対応

生徒さん 「ええ~! じゃあ、もし有価証券の売却で損が出ちゃった場合はどうすればいいんですか? 泣き寝入り?」

先生 「方法がないわけではないんだけれど、その前になぜ損益通算ができないかを説明しておこうか。休憩前にも話したけれど、1年目に買った有価証券は5年後に払い出され値洗いされる。値洗いというのは、その時点での時価が買値になるという話だったね」

生徒さん 「あ、そうか。100万円で購入した有価証券が5年後、80万円になっていれば、その株式は80万円で買ったものとみなされるわけですね。(値洗いの結果)80万円で買ったものが、時価の80万円で売れたとしても損は出ないわけだ」

先生 「そういうこと。だからその後、有価証券の価格が再度上昇し100万円に戻り売却したとしても、その差額の20万円は譲渡益と見なされ課税されてしまう」

生徒さん 「実際には買った値段なのに、なんか納得いかないですね…」

先生 「そう、そこでだ。このなんとも納得いかない状態を打破するためには、さっきも説明したロールオーバー(詳しくは初級編を参照)を使う方法があるんだ」

生徒さん 「??」

先生 「ロールオーバーを使えば、その後、価格が上昇したとしても課税されないだろう?」

生徒さん 「えっ、でもでも、価格がさらに下落する可能性もあるし、使った分の非課税枠も減っちゃうしで、あんまり面白くなさそうですけど…」

運用商品の選び方

先生 「確かにそうだね。でも、NISAが奨励しているのは間違いなく長期投資だ。それは利用期間からもわかる。長期では何が起こるかわからないからね、判断はもちろん自己責任なんだけど、こういうやり方もあることは知っておいた方がいいよ。

  また、長期投資を前提とした運用商品選択のポイントとしては(1)流行に流されず、(2)運用実績のある(一定の運用期間が経過している)ものを選択すること。もし、(3)値上がり値下がりの幅が大きい(ボラティリティの高い)ものは一定間隔で「定期的」に購入すること、などを心がけるといいだろうね」

生徒さん 「実績のないものはダメなんですか? 例えば、聞いた話ですが、NISA口座に向けた新しい投資信託が開発中だとかなんとか…」

先生 「バランス型ファンドのことだね。それはまた具体的な商品が出てきてから話した方が良さそうだ。情報が出揃っていない以上、今回は分析対象から外してもいいかな?」

生徒さん 「わかりました。今度を楽しみにしています。じゃあ、口座開設の注意点をまとめると…

(1)金融機関選びが重要だが、それは運用する対象の幅を考えて決めること
(2)ネット型か対面型か。それぞれの金融機関のメリット・デメリットをよく考えること
(3)新しいものや流行に左右されず、過去の実績などを重視し、傾向を分析すること

 特に(3)は、ナンパしてくる初対面の男子より、幼馴染の男子の方が情報は豊富だから恋愛でも安心という理論ですね」

先生 「なんて例えなんだか…。まあ、慌ててNISAの開設口座を作る必要はない。10月まではまだ日もあるからね。ゆっくりと中身を吟味することが大切だよ。また、もしNISAの仮申込を行っていたとしても今年の9月末までなら取り消すことは可能だから安心していいよ」

生徒さん 「先生、ありがとうございます。色々勉強になりました。それじゃ、恒例の締めの珈琲を…」

先生 「…そのネタはもういいよ」

《石川 肇》
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石川 肇

「銀行・保険会社・証券会社」で培った実務経験を活かし、金融商品の多角的な分析・説明を得意としております。金融商品といえば何か難しいイメージがあるかも知れませんが、そんなに身構えることはありません。ただ押さえておくべきポイント、ルールがあるのも事実です。「金融商品はよく判らないのでつい情報を鵜呑みにしてしまう…」そんな方には、そこで一歩立ち止まり思考を広げる、そのためのお手伝いができればと考えております。また、日頃から講演活動にも積極的に取り組み、「正しいことを面白く、そしてわかりやすく伝えること」を目標に研鑽を積んでおります。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、証券アナリスト検定会員補、証券外務員一種 寄稿者にメッセージを送る

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