前回、お話しした続きなのですが『割引現在価値』の考え方自体は決して難しいものではないと思うのです。しかし、年金などの期間の長いものを複利計算するという「べき乗の世界」が登場するとたちまち、私たちは困惑しまうことになります。そして結果を出せないまま思考停止になってしまい、現在価値を評価するのは難しいものだと敬遠してしまうのではないしょうか? 

  こういう時に、絶大な力を発揮する「金融電卓」を手元に置いて実際に計算してみることが大事だと私は気づきました。とにかく、計算して結果を出してみることです。現在価値の考え方が身に付いてくるとは電卓を叩いてみることだと思います。

  昔の寺子屋のそろばん教室と同じことだと思います。私たちは数学に対する苦手意識が中高時代に植え付けられました。この劣等感の克服にも「金融電卓」は一役買うことになりました。私の経験は真にこのことにつきます。

米国では文房具店で普通に売られている

  大げさなことをいうやつだと笑っていただいてもいいのですが、それほど、『ファイナンス』を理解する決め手は「金融電卓」にありと言いたいのです。なのに、どうして日本では普及していないのでしょうか?

  平成23年度CFP教育カリキュラム準拠のFPテキスト監修者、森平爽一郎先生が「物語で読み解くファイナンス入門」で指摘されているのですが、アメリカの大学生協や町の文具店では普通に売られているのに日本ではどこを探しても見つけることができないことを私も不思議で省がありませんでした。

  私が思うに1972年にアメリカで関数電卓が誕生し、それまで使われていた計算尺が一挙に電卓に変わった如く、金融界も1973年の「ブラック・ショールズ式」の発見を契機に金融電卓なるものが誕生し普及したのですが、この流れが日本に上陸する前にパソコンの普及によって金融電卓を強いて使う必要がなかったとも考えられます。

  また、その当時は高度成長期、バブル絶頂期で厳密な投資計算など考えている人は殆どいなかったのですから、存在すら知らなかったのです。社会的ニーズがまったく生まれなかったことが原因でした。

松本大社長(マネックス証券)やウォーレン・バフェットも使用

  前回寄稿文でふれた野口先生や高橋先生などは数学の専門家ですから「金融電卓」は必要ないかもしれませんが(本人に聞いていないのでわかりません)、私たち文系の者には是非使って数学の威力を感じとることが大事ではないでしょうか?

  わたしが知ったところによると、日本でのネット証券の草分け的存在の松本大社長(マネックス証券)は大学時代から愛用されているそうですし、かの有名なウォーレン・バフェットも銘柄選択の下準備に企業価値の計算に金融電卓を使っているらしい。「バフェットの銘柄選択術」という本の中に記述があります。

デリバティブが敬遠される理由

  最後に『デリバティブ』の話をしたいと思います。

  先物取引での将来のモノを取引するとはいったいどういう意味か?取引条件のその価格を現時点で決めるとはどういうことか?とか、一物一価の原則である裁定取引の考え方とは? とかには数学(算数)が使われるので私たちは敬遠してしまいます。

  このことは前文で述べましたが『割引現在価値』と同じ理由なのです。計算できず難しいと敬遠しているだけなのです。『デリバティブ』を敬遠する最大の理由はこのことだけです。「先物取引・裁定取引・デリバティブ」という言葉はとっつきにくい代物として忌避されてしまいました。わたしたちを金融リテラシーの無理解へと走らせた原因にもなっています。

  数学(算数)の力を「金融電卓」という道具に借りて、具体的数字を操る世界(割引現在価値という世界)に一歩踏み出してみようじゃないですか!