今回、第二回のテーマは『NISAの「投資しましょう」の声は「5年間博打なさいよ」と響く』です。

バグだらけのNISAはどこまで迷走を続けるか?

  誰の目にも、まだまだ完成していない稚拙な法律という印象なので、これからどんどん変化するのは必至ですね。現に、2017年に向けて、現在ひとつしか持てない口座が複数開設可能になるとか、国債や公社債といったものも対象になるといったことも検討されているとも聞きますし、私が前回書いたような問題も修正されて行く可能性がないわけではありません。

  ただ、最初に「5年間」と決めてしまった思考の根拠や軽率さがある限り、まだまだ迷走が収まる事はないような気がします。

  そんなことを踏まえて、ちょっとだけ、うがった印象を書いてしまうと…

  「証券市場の見栄えが悪くなるのをカバーする」というあまりにも浅はかな考えが根本的な部分を支配しているとしか思えないですよね。お題目には、ご立派に「資産形成」や「長期投資」とか出てくるんですが、「それだったら何で5年なの?」と質問したいです。

  仮に、期限が5年から10年に変更されたとしてもおかしな話です。

  例えば、NISAは2014年から2027年まで(口座開設は2023年まで)と期間が決まっている訳ですが、そもそも、資産形成で欠かせないライフプランというのはそれぞれの人のもの。その人が「いつ」「どういう目的を持つか」っていうのは千差万別なのに、5年という誰かの都合を優先したかのような枠で縛っている。

  これって、近頃、多くの人が、「消費税が上がるから今のうちに家を買っておこう」と軽率に行動してしまっているのと変わらないような気がします。

  だから、このNISAで自分のライフプランを全うする人はいないと思いますね。資産形成というのはライフプランありきのもの。これでは、そのライフプランをいつでも助けてくれて、守ってくれる法律ではありませんよね。

国は公に「5年間博打しなさいよ」と言っている

  長期投資ですよ。分散投資ですよ。資産形成頑張ってくださいね。とか言う割には、何だか「5年間博打しなさいよ」「あなたの持っている500万円で博打したらいいですよ。成功したら税金取りませんよ」と言われているような気がしてなりません。

  長期で分散してという話しで言うと、経済循環をしっかりと何周期も何周期も超えながら運用して行くというのが本当の資産形成。経済循環というのは7〜10年と言われるので、5年だったら一回の循環も経ないということになりますよね。

  ほら、的を外した悪法に見えませんか?

  日本はお金を「成長マネー」にまわして欲しいのですが、日本の個人の金融資産の85%は「成長マネー」ではないんです。つまり、先が分かっているところに置いている。「成長マネー」というのは単純に言うと先が分からないものなんです。

  今回、NISAで新たに対象にしようと言いはじめている国債や公社債は先が分かっているものです。国債は何年何月に満期になって何年何月まで何%利息が取れますよというふうに決まっています。決まっているものの枠を増やすという事は、「成長マネーにお金をまわす」という決断をさせたいはずが、そこに逃げ道を作ってしまっているような印象があります。

  NISAをやる人がみんな国債を買ってしまって、何の為のNISAなのかが分からなくなってしまいますよね。目的がぼやけて、ますます悪法の色が濃くなりそうです。利益は少ないけど、その方が危険度が少ないですね。

  日本人の気質から考えると、そちらに流れる人が相当増えそうな気がします。どうせ国債を買うなら微々たるものでも税金がかからないNISAを使おうなんて気運が高まって、結果は「国債買う人を増やすのか?」っていう話しになって、まったく意味をなさなくなります。

  今回のNISA。500万円という非課税の枠を作るのは構わないですが、期限を設けたら本来の目的に到達できなくなってしまいます。

  「幅広い家計に国内外資産への長期分散投資による資産形成を行う機会を提供する」と本気で考えるのなら、「投資による資産形成を考えさせてそれを援助する」NISAへと生まれ変わって欲しいのです。

NISAをどう理解して、NISAとどう向き合うか… 悪法にも意味がある

  2回に渡ってNISAについて「悪法」だ「変わらないとダメだよ」と書いて来たわけですが、まったく「じゃあ、どうすればいいの?」という皆さんの疑問への答えにならないのは心苦しいので、最後にポジティブにまとめてみたいと思います。

  先にも例を出したのですが、「消費税が上がるから」というきっかけで、ライフプランに関係なく「とりあえず家を買おうよ」という結論になびいてしまうのと同様、「NISAができるので株でも買おうか」という短絡的な思考は「理解のない」危険をはらんでいると思います。

  ただ、私自身は、NISAという法律に捉われることなく、資産形成というものをじっくり見つめて、本当に自分自身の人生における資産形成という選択肢を考えるきっかけになってくれたらいいのにとは考えています。

  「NISAが始まるから投資信託を買おうよ」とか「NISAが始まるから株を買ってみようよ」というアクションも、一見軽率ですが、その結果、株式や経済についての勉強をすることになるのであれば、それを一概に否定するものではありません。

  何かを買って行動した事によって、それは体験という何者にも代え難い勉強になりますからね。500万円というNISAの限度額であれば、「家を買ってしまって大失敗!」というのと比べると、痛手は軽傷ですし。(笑)

  基本的に国は「このまま行くと、会社が守ってくれるとか国が守ってくれるとかいう護送船団方式的な擁護はなくなりますよ」ということを前口上した上で「自分のライフプラン上のお金は自分で作って行ってくださいね」っていうのを伝えたい訳ですね。この一連の動きの肝はそこなので、ここはやはり国民一人一人「自分で考えよう」というきっかけになってくださいと願うばかりです。
  内容的には「悪法」と言わざるを得ない訳ですが、きっかけとしてのNISAは「あり」。

  皆が「あぁ、NISAって使い物にならないな。でも、資産形成はやって行かなくちゃならないよな」って考えるきっかけになってくれたら、結果的に、今、必要以上に大騒ぎしているのも無駄じゃなかった、意味があったと言えるはずです。

  自身が考えるきっかけになれば、悪法にも意味あり! ということですね。

  国は1996年から2001年度にかけての日本版金融ビッグバン(大規模な金融制度改革)でも基本的に「貯蓄から投資へ」「先の決まったものから成長マネーへ」という流れを作ろうとしました。その結果は… 残念ながら、国民は動きませんでした。

  でも、もうそろそろ何か考えなくちゃ大変な事になるという分岐点にまで来ていると思います。日本という国は…

  もし、NISAが改善されないで、このまま時限立法として終わってしまうと、短期投資を一瞬やっただけで、その意味も理解できずに、せっかくのきっかけも活かせずに終わってしまう人が大部分になり、悲しい短期投資の残骸が残るだけ。立法する側の、とことん「良法」を目指した、改正という機知に富んだ対応と、活用する側の腑に落ちた深い理解・・・ それが全て。

  NISAは非課税というメリットである事に違いはありません。でも、これをきっかけに、地面浅くにある「10年非課税」というB級の宝物でなく、そこをもっと掘り進んで「理解」や「知識」という本当の宝物を掘り当てることができれば、このメリットは一瞬でなく、長きに渡って私たちの人生に恩恵をプレゼントし続けてくれるはず。

  今、目に見えるNISAは、私にそんなことを考えさせるのです。