先日、本屋さんで、某出版社の『よくわかる相続&不動産活用』という本を購入しました。この本の前に、今年の春ころでしょうか…某出版社の『よくわかる相続』という本を購入しました。この一年間で某出版社は、2冊の相続に関する本を出版しています。

 私は、仕事がら興味本位で、その2冊とも購入したわけですが、今年の春先に出版された『よくわかる相続』シリーズの第一版は、相続の基礎的なお話から相続に関する全般的な必要な事項を簡潔に分かりやすい文章とイラストで次のように纏められていました。相続税の課税対象者の割合や相続財産の比率など、そして相続に関する調停件数や審理期間等々から始まっていきます。

何かが足りない

 大体、この話題は相続に関するセミナーに行けば必ずと言っていいほど出てくる話題ですので見ることすら面倒な気がしてきますが…。

 そして、相続の手続に関するお話から相続財産の棚卸、相続人の確定、相続の承認や放棄、遺産分割・遺言、相続後の手続の話に一通り触れています。そして、次は相続税のお話です。民法の規定から税法の規定へスライドしました。土地や建物金融資産の財産評価や遺産総額の計算のお話から、みなし相続財産、基礎控除、相続税の総額、相続税の納付、までのお話があります。

 次には、トラブル例(義母への遺産分割、介護にからむ寄与分、自宅不動産のみの分割、等々)に触れながら、各ケーススタディについて触れています。そして、相続対策のお話です。遺産分割から納税対策、そして節税対策という3つの相続対策がありますよ…などというお話から具体的な対策手法のお話に移っていきます。財産リストの作成、遺言署の種類、暦年贈与の活用、精算課税の活用、小規模宅地等の特例、生命保険の活用、2次相続対策、などのお話です。

 そして、ラストは事業承継の対策です。自社株評価、事業承継の納税猶予、事業再編、M&A、などお話です。これが第1版の内容でした。

 ただ、相続に関する内容を一まとめにした分かりやすい素晴らしい本であると思い購入しましたが何かが足りない…と感じました。生保会社の相続のセミナーに行っても感じることなのですが、何かが足りないと思ってしまうのです。

何が足りないのか?

 その何かとは何か?

 争族対策として遺言書を作りましょう…エンディングノートを作りましょう…その時の注意点は、こんなことに留意して書きましょう…などというセミナーの開催をよく見かけます。そして、最後のオチが争族対策には生命保険が有効等。相続人以外の方にも遺してあげられますよ…相続財産の対象外ですよ…などなど。

 確かに、その通りなのです。間違いはありません。だけど、何かが足りない…。特に生命保険会社のセールスで気になるのが、争族対策といって進めるのはいいのですが、そもそも論としてその人の相続財産のボリュームや種類にもよるのでしょうが…。

 争族対策のため生命保険に加入できる方は、それなりに資産家の方と想像するのですが、普通の平均的な家庭の場合、争族対策の保険料の工面に苦心するはずです。それなりな資産家のかたは、相続税の心配もあるでしょう。不動産もいくつか所有しているかもしれません。

 ということは、遺言やエンディングノートの作成や生命保険に加入する前に、不動産の調査や現状分析を行う。そして土地の相続税評価額を概算で算出しておおよその相続税額を検証してから、遺産分割や納税の方法や節税の可能性を探っていくべきでしょう。

 それから、誰に何を遺してあげるか、相続税はどうやって支払うか、お金がなければ土地を売る、となった時にどの土地を売るのか、そして何を遺すのか…有効な節税方法は、二次相続まで見据えて考える等の検討を同時並行的に進めていく必要があると思います。その検討のなかから、土地活用や生命保険の活用の対策案が生まれてくるものだと思います。思いますというよりは、そうすべきでしょう。

現状分析をし相続をトータルに考えよう

 いま、相続ブームとなりつつあります。色々な業種のかたも「相続・相続…」となってきました。遺言やエンディングノート、法定後見人など…FPのかたもいろいろな取り組みに着手され始めているようです。でも、相続に限らず財産に係るコンサルティングの基本は”現状分析”でしょう。特に相続財産の半分以上は土地や建物です。全国平均で半分を少し超える位となると、東京は70から80%は不動産という結果かもしれません。

 そこで、先日手にした相続の本、不動産活用に絞った相続対策の本となっていました。内容的にはほとんど知っている内容ではありますが、あまりにもきれいに纏めて作られていたので購入しました。不動産の調査から利用分け、そして活用方法の内容でした。

 見ながらに、ふと気付きました。相続を真剣に考えて悩んでいる人はこのような本は貪り読んでいるかもしれない。最近の書店に並んでいる書籍を観るにつけFPもそれなりに知識を身につけていかないと、とてもとても一般の人の知識についていけなくなるのでは…と危機感を感じます。

 これから、いろいろと考えていきますと言ったような考え初めの方には、遺言や遺産分割やエンディングノートの一般的な情報を流せば大きな満足をいただけるかもしれませんが、書籍のレベルの高さから考えると真剣に相続対策を考え始めた人には、そもそも論の相続財産の現状分析から税額シミュレーション、そして分割や納税、さらには節税方法と不動産・保険の活用はセットでの提案が必要となってくるのではないでしょうか。

 まだまだ自分自身切磋琢磨をし、適切なアドバイスができるスキルアップが必要と感じ入ってます・・・(執筆者:荒木 達也)