※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

退去時の原状回復トラブルが増加中 民法改正で大きく変わる可能性も

コラム コラム
退去時の原状回復トラブルが増加中 民法改正で大きく変わる可能性も

 先日の新聞にあったように引っ越しシーズンを迎え、物件退去時における原状回復のトラブルが増えているようです。

 現在は誰が使っても劣化するようなものは貸主負担、特別な使い方によって劣化したもの(壁にくぎをさすなど)は借主負担というのが、”一般常識”と考えられ通称”東京ルール”(東京都都市整備局作成の賃貸住宅トラブル防止ガイドライン)(※)と言われる原状回復費用の負担に関するガイドラインも作られてはいます。

 ですが、契約内容が曖昧だったり、入居時の費用が0円の物件だと「入居した時は費用負担がなかった」という心理的な負い目から、モメるものなんだし…と思い、払ってしまう借主も多いと思います。

”民法改正”で大きく変わる可能性も

 余計なトラブルは避け、なんとなく決まっているルールに従うことで円滑にすませるのは、ある意味日本の美徳でありますが、それが今検討されている”民法改正”により大きく変わる可能性があります。

 とても分かりやすく書いてある、宅建協会さんの民法改正の動向と宅地建物取引のあり方に関する調査研究のH25.3報告書概要(※)を参考にさせて頂くと、今までの我々の民法はシビル・ロ-(大陸法)という考えに基づき一般的なルールから見て、妥当か否かが判断されたのですが、今後はコモン・ロー(英米法)という考え方、すなわち当事者目線から合意した内容に合っているか否かで判断されるようです

 そのように改正されると、契約を締結するにはその目的を明らかにし、債務不履行に関しては契約の趣旨に照らしてどうなのかが問われることになりそうです。

 そして賃貸物件に関しても、賃貸人の修繕する権利が明文化され何のために契約するのか、双方がどんな権利や義務を負うのかが個別契約で決まることになる可能性があります。

 すると現在の一般的な修繕費の負担ルールも変わり、双方が契約で決めた内容が重視されるので契約締結時に曖昧にしてしまった借主はますます何も言い返せず、泣き寝入りせざるを得ない状況が増えそうであります。

 さらに注意しなければならないのは原始的不能な契約、すなわち契約締結時に火災などで消失している建物の賃貸や売買契約の場合、現行民法だと契約そのものが無効と考えますが、改正民法によれば契約は有効で、あとは損害賠償等などの当事者で解決する問題と考えるようです。

 従って現地に行って確認することなく、ホームページで賃貸や売買の契約を申し込んでしまって、それが存在しなかかったりしても、有効となってしまうのです。

 まだ中間試案の段階なので最終的にどうなるかはわかりませんが民法は各種法律の基盤をなすものであり、まさに”一般常識”の大転換期にあるといっても過言ではないかと思います。不動産関係以外にも及ぼす影響は大きいので注視したいとこであります。(執筆者:田井 能久)

【外部参照】
賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(東京都都市整備局)
民法改正の動向と宅地建物取引のあり方に関する調査研究(宅建協会)

《田井 能久》
この記事は役に立ちましたか?
+0

関連タグ

田井 能久

執筆者:不動産鑑定士 田井 能久 田井 能久

株式会社 タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/専任不動産鑑定士 大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドに転職し、資産評価業務を担当。全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。1,000件以上の評価実績を有し特に相続や訴訟に関連する案件を得意とする。海外事業では滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」業務を行い、2015年にマレーシアの企業と業務提携開始。MM2H取得アドバイス業務や海外不動産投資アドバイスを行い(https://malaysia-longstay.com/)自身も2018年にMM2Hを取得。元愛知大学非常勤講師で現在セミナー活動もしながら各種WEBメディアに記事提供を行う。 <保有資格>:不動産鑑定士 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集