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ウエルス・マネジメントにおける「投資スタイル評価」

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ウエルス・マネジメントにおける「投資スタイル評価」

 さて、今回は、ウエルス・マネジメントにおいて、顧客の「投資スタイル評価」を行いますが、その際の行動ファイナンス的アプローチを見ていきましょう。

ウエルス・マネジメントとは何か?

 ウエルス・マネジメント(Wealth  management)という言葉は、日本ではあまり馴染みがないかもしれません。Wealthとは、日本語で「富」を表しますが、主に個人の財産をきちんとマネジメントしていくサービスの総称として使われている言葉です。

 もともとは、富裕層向けに欧米で行われていたサービスですが、最近では、富裕層だけでなく、個人投資家に対して、きちんとしたファイナンシャルプランニングを行うためのサービスという位置づけとして考えられています。

 ファイナンシャルプランニングとは、主に個人に対して、ライフプランや生活設計に基づく「お金」に関するプランニングを包括的に行うことを言います。個人投資家の個別事情や人生設計などに基づいて、しっかりとプランニングを行うと共に、その後の実行支援もしながら、投資家の「資産」の運用・保全業務全般をマネジメントしていくという目的で行われるものです。

 日本においても、ファイナンシャルプランナーが、このウエルス・マネジメントの切り口で相談にのるケースは徐々に増えてきていますが、包括的にマネジメントできるFPはまだまだ少ないのが現状といえます。

投資スタイルの評価

 さて、ウエルス・マネジメントを行うにあたっては、最初に投資家から入念なヒアリングを実施します。それによって、顧客の「投資目的」、「ターゲットリターン」などを確認するとともに、顧客の“投資スタイル”を把握する必要があるからです。

 “投資スタイル”とは、その顧客の「リスク許容度」はもちろん、「投資に対する考え方」や「性格」なども含まれます。定量的な情報や数値でしか見えない情報で、プランニングを行うと、実際の運用の場面において、トラブルや顧客に精神的に大きな負担を強いることにもなるからです。

 例えば、ヒアリング時に、リスクについて質問を行ったとします。ある投資家が、「とにかく成長性を一番に考えているので、元本の20%程度は失っても構わない」と発言したとしましょう。しかしながら、それはその投資家のその時点における発言であり、実際に20%資産が下落したとき、その投資家の精神状態を反映したものではありません。そのような投資家の中には、5%、10%下落しただけでも神経質になり、ひどい場合は気になって夜も眠れないといったケースもあります。

 ウエルス・マネジメントの目的は、あくまで投資家の人生設計や将来の夢の実現のお手伝いをすることです。従って、その投資家が、夜も眠れないような状況を、たとえ本人の言葉が受け入れていたとしても、するべきではないと言えます。

 投資家の性格や深層心理を正確に把握することは決して簡単ではありませんが、それらを探るべく、行動ファイナンス的なアプローチとして、以下のような質問によって、投資家の考えや性格をとらえる試みを行います。

(質問)あなたにとって、それぞれa又はbのどちらがよいか選択してください。

質問1.
a. あなたは700万円受け取れる 
b.あなたは1000万円受け取れる確率が70%ある(何も受け取れない確率が30%ある)

質問2.
a.あなたは700万円失う  
b.あなたは1000万円失う確率が70%ある(何も失わない確率が30%ある)

 この質問の意図は、その投資家のリスクに対する考え方を把握することにあります。

 一般的には、質問1は「a」、質問2は「b」を選ぶ傾向が高くなっています。それは、質問1は「確実に700万受け取れる」、質問2は「損しない確率にかけたい(損失を受け入れたくない)」という心理が働くからです。

 しかし、本来「投資」の考え方においては、稼げるときには稼いで、損失は最小限に確定させる行動が必要です。従って、質問1は「b」、質問2は「a」を選択する人のほうが、投資には向いていると言われているのです。「人間の心理」と「投資の合理的な考え方」の違いが、実際の投資行動を難しいものとしている一つの例と言えるでしょう。(執筆者:荒川 雄一)

《荒川 雄一》
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荒川 雄一

IFA JAPAN®株式会社 代表取締役社長兼CEO 国際フィナンシャルコンサルタント 投資顧問会社 IFA JAPAN®株式会社ほかリンクスグループ3社の代表を務める。中小企業診断士、日本FP協会認定CFP®。現在、金融機関に影響を受けない独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として、国内外の金融商品を用いた「海外分散投資」や「モデルポートフォリオ運用」を専門としている。中でも、海外ファンドを用いた「ポートフォリオ・マネジメント・サービス(PMS)®」の評価は高い。また、投資教育にも力を入れており、国立高知大学非常勤講師など、講演回数700回以上。日本経済新聞ほか、各マネー誌など執筆多数。 寄稿者にメッセージを送る

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