今回は、預金に関する「公認会計士による監査の視点」です。前回の、~その1 現金編~(http://manetatsu.com/2014/04/30797/)では、公認会計士は資産科目の全てに対して「ほんとにあるの?(実在性)」という視点でチェックすると述べました。

 では、預金では、公認会計士はどのような視点でチェックするのでしょうか?

 「ほんとにあるの?(実在性)」という視点は、もちろんチェックします。通常、会社が保有しているお金は現金よりも預金の方が多いのですから当然です。

 ただ、それに加えて、預金については「いつのものなの?(期間帰属の妥当性)」という視点でも、チェックする事となります。それぞれ見て行きましょう。

(1) この預金、ほんとにあるの? (実在性の視点)

 公認会計士は、通常、会社が預金口座を有する“すべての”金融機関に対して、確認状を発送します。

 ここで確認状とは、公認会計士が銀行などの金融機関に対して書面を発送し、当該書面に相手方が把握している金額を記載してもらった上で、その回答金額を確かめるという、監査の手法を言います。

 余談ですが、会社自身から入手した証憑を「内部証憑」、会社以外の第三者から入手した証憑を「外部証憑」と言い、一般的に公認会計士は「外部証憑」の方が信頼性が高いと考えます。「自称20歳です!」と一生懸命主張するよりも、免許書などの生年月日を見せた方が、すぐに20歳という事を証明できますよね? 監査でも同じです。会社が自ら作成した資料(内部証憑)よりも、会社以外の第三者の証明書(外部証憑)の方が、より信頼できるというわけです。

 「目の前にいる会社の主張よりも第三者の主張の方を信頼するなんて、公認会計士ってなんてひねくれた人達なんだろう」とか思わないでください。そういう仕事なんです(汗) 監査を行うにあたって公認会計士には、常に注意を払い、目の前の事実に疑問を持ち続ける姿勢が要求されるのです。(これを職業的懐疑心と言いますが、詳しくはまたの回にしましょう。)

 話を戻します。この確認状の回答は、「内部証憑」「外部証憑」のどちらでしょう?これは、金融機関からすなわち会社以外の第三者から入手したものなので、いわゆる「外部証憑」にあたります。ですので、公認会計士としては信頼性の高い証拠を入手できる事となり、有効な監査の手法と考えられているわけです。

 では、金融機関から確認状の回答を受け、公認会計士としては何をチェックするのでしょうか。まずは普通預金や当座預金などの回答金額と、会社の帳簿金額の一致をチェックします。確認状の回答結果と帳簿残高を照合する事によって、会社の残高を確かめるのです。いわば、テストの答え合わせをする感覚ですね。

 ただ、まぁ、これは正解していて当然! 一致していて当然! です。仮に間違っていれば会社の管理体制を疑わざるを得ません。それよりも重要なのは、確認状には、金融機関が把握している借入金・保証金・担保等すべての情報が記載されて返送されてきますから、そのチェックを行う事です。

 これにより、会社の隠している借入金や担保情報等がないかを確認する事が出来るというわけです。(ちなみに、決算日に定期預金通帳が会社にないのかあるのかをチェックする事によっても、担保の有無は確認できます。定期預金が担保に差し入れられる場合は、定期預金通帳を差し入れることが一般的ですから。)

(2) この預金、いつのものなの? (期間帰属の妥当性の視点)

 まず1つ、チェックするのは、預金振替取引です。通常、決算日前後に、ある口座からちがう口座に多額の預金振替を行っている場合は、公認会計士の目が光ります。異なる銀行口座間の預金振替として行われる入金及び出金は、それが帳簿上反映漏れになっている恐れがあるからです。

 例えばA銀行からB銀行に1億円の預金振替を行う場合、A銀行では3月31日に出金処理がされているのに、B銀行では4月1日に入金処理がされる事があります。特に3月31日深夜の銀行営業時間外に預金振替が行われた場合なんかは、要注意です。この場合、1億円はA銀行残高からもB銀行残高からも無くなっているため、帳簿残高が1億円足りない可能性があると考えられるのです。

 そこで、公認会計士は、決算日前後の預金振替取引について、きちんと帳簿に反映できているかをチェックします。だだ、間違えないで下さい。預金振替自体が悪いわけではないです。それがきちんと帳簿に反映されていない事が悪いのです。

 もう1つ、チェックするのは、小切手の取り扱いです。小切手については不正に使用される恐れもある上、その振り出しや受け取りが、タイムリーに帳簿に反映されていない可能性もあるためです。

 そこで、公認会計士は、会社が振り出した自社の小切手については小切手のミミの情報(小切手ナンバー・振出日付・金額・振出先等)を元にして、当該小切手が決済された日に、きちんと預金の帳簿金額が減額されているかをチェックします。小切手の管理表を作成し、引き落とされていく都度チェックしていくなど、日頃から小切手の決済状況を適切に管理する事が望ましいでしょう。

(3) 通帳の確認

 通帳の確認をすることには、様々な意味があります。

 まずは、通帳名義の正当性のチェックです。もし、会社の通帳の名義が経理担当者の個人名義となっている通帳だったらどうでしょう?「いや、これは会社のものです」と言われても信用出来ません。やはり、会社の通帳は「会社の名称+代表者役職名+代表者氏名」という形式となっている事が望ましいです。仮に代表者が交代した場合には、きちんと名義変更も行っておきましょう。

 次に、通帳記録の連続性のチェックです。期の途中で通帳が繰越になった場合、通帳の表紙の番号が通し番号となっているか?また、古い通帳の最終行と新しい通帳の最初の行が同一金額であるか?を確認することで、入出金が網羅的に記録されていることをチェックします。従って、古い通帳も破棄せず大切に保管しておいて下さい。

 最後に、通帳と帳簿残高の一致のチェックです。これらがピッタリ一致することを日々きちんと確認しておいて下さい。そのためには、出来る限りタイムリーに、通帳記入を済ましておく必要がありますね。もし、銀行の営業時間外の取引などの理由により、通帳と帳簿残高が一致しない場合には、銀行勘定調整表を作成して一致しない理由を記載されていると良いでしょう。

(4) まとめ

 みなさん、スーパーに行って食材を買う時に、「この食材が美味しいのかなぁ?」という視点でどの商品か選びますよね。それと同時に、必ず、「この食材の賞味期限はいつまでなのかなぁ?」という視点でもどれを買うか選んでいるはずです。公認会計士による監査においては、前者の視点が「実在性の視点」、後者の視点が「期間帰属の妥当性」の視点だと思って頂いて構いません。

 以上、預金の監査については、これら両方の視点からチェックを行うという事を分かって頂けましたでしょうか? 公認会計士による監査の視点、次回は、売掛金・受取手形編でお会いしましょう。(執筆者:植田 有祐)