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「財産は自宅だけ。相続争いは私たちには関係ない。」は本当ですか?

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「財産は自宅だけ。相続争いは私たちには関係ない。」は本当ですか?

 両親の財産は一戸建ての自宅と1000万円の預貯金や株だけ。子供たちはそれぞれ家庭をもちマンションを買ってお金には困っていません。「私たち両親がなくなっても、遺す財産もないから、子供たちが相続で争うことはないわ。」本当に大丈夫でしょうか?

遺産の大半が不動産。だから相続で揉めます。

 最近は、持ち家でなく賃貸でいいという若い家族も多くみられます。ですが、70代、80代の方は昭和50年以降に急に強くなった「家も持ちたい」というマイホームブームの世代。ほとんどの方がマンションではなく一戸建ての自宅を所有しています。40年ほど前に「だれでも家が持てる時代」が始まったのです。

 近頃は15坪や20坪の一戸建ても多くあります。でも、70代の方々が40年前に建てた自宅は30坪から50坪以上の土地がほとんどです。建物に価値はなくなっても、都心であれば50坪以上の土地の価値は非常に貴重です。場所によりますが、交通の便が良いところなら、2000万~4000万円になることも。

 「両親の遺産は、土地の資産価値が80%、預貯金は20%」
 「土地を売ればお金になる」

 だから両親が亡くなれば、どんなに仲のいい子供たちでも、嫌でも相続争いに巻き込まれる可能性があるのです。

不動産の分配方法は難しい

 相続人が2名の子供たち(兄と弟)だけであれば、法定相続分は2分の1ずつ。遺産の土地の価額が3000万円、預貯金と株が1000万円であれば、法定相続だとそれぞれ2000万円ずつを相続することになります。土地を売らない限り、兄と弟が現金で相続分を分配することが出来ません。

 土地を分割してそれぞれが所有するのも一案です。ですが、分割すると価値が下がってしまう可能性もあります。

 土地を兄と弟の共有にしておいて、後日売却した際に現金を分配する方法は、司法書士として不動産取引を担当しているとよくある方法です。土地がすぐに売れればいいのですが、売れる前に兄が亡くなると、兄嫁とその子供たちが兄の相続人として弟と土地を共有することになります。人数が増えれば増えるほど売却が進まなくなることは予想され、なるだけ共有は避けるのが相続の鉄則です。

遺言書をのこして、「争族」を防止

 遺産の分け方をめぐって話し合いをしていると、「どちらが両親の面倒をみたのか」と感情論になっていくことが多くあります。「そもそも法定相続分の2分の1ずつで分配すべきなのか、私のほうが多く面倒を見たのに平等じゃない」という点に戻ってしまいます。子供たち(だけでなく配偶者や孫まで巻き込んでの)の争族がいつの間にか始まっていくことになるのです。

 遺産が自宅と預貯金だけであっても、生前に子供たちが争わないように予め分配方法を決めておくことができるのは、遺産の持ち主である「両親」だけです。その方法は「遺言」です。

 両親にとっては、兄も弟もどちらが両親を面倒みたかに関係なく、平等に可愛く愛しいはずです。子供たちの性格や家庭環境を考慮して、子供たちが平等に感じることが出来るように遺産の分配方法を決めることが出来るのは、子供ではなく両親だけなのです。

 遺産が自宅と預貯金だけだからこそ、争うつもりがなくても、子供たちの争族が起こってしまう可能性があるのです。遺言で争族を防げるかもしれません。(執筆者:国本 美津子)

《国本 美津子》
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国本 美津子

国本 美津子

国本司法書士事務所 司法書士 関西学院大学法学部卒業後、弁護士事務所にて勤務。司法書士試験合格後、2004年国本司法書士事務所を開設。不動産登記、法人登記だけでなく、神戸市の事務所では相続や遺言に特化した司法書士として、女性ならではの細やかな配慮でお客様の相談に応えている。生前の成年後見や任意後見、遺言書、そして遺言執行者として不動産や預貯金の名義書換といったトータルなリーガルサポートを、お客様に立場にたって寄り添いながらの丁寧な業務には定評がある。 <保有資格>:司法書士、宅地建物取引士 寄稿者にメッセージを送る

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