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節税対策にはならない「相続時精算課税制度」の真の存在意義

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節税対策にはならない「相続時精算課税制度」の真の存在意義

 「相続時精算課税制度」という生前贈与制度をご存知でしょうか。

 日本における贈与の課税制度には、贈与財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を控除し、毎年利用できる「暦年課税」と、65歳以上の親が推定相続人である20歳以上の子に対して贈与を行う場合、贈与額2,500万円迄に対しては、贈与税が課せられない「相続時精算課税」という2つの制度があります。

 一見、この相続時精算課税制度という制度を耳にすると、「なんと画期的な制度なんだ!!」、「(相続税の)節税対策にもってこい」等と思われる方もいらっしゃいます。

「相続時精算課税制度」のデメリット

 相続時精算課税制度が何やら、もの凄いメリットだらけの制度に思えますが、それは、異なります。それは、まず第1に一度利用すると暦年贈与にスイッチできない

 そして、第2に当該制度を利用された場合、限度額の2,500万円迄の「贈与税」については非課税ですが、実は、その贈与者に相続が発生した時に、当該制度で贈与を受けた財産財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計し、その金額をベースに相続税を計算します。つまり、贈与税は「0」ですが、相続時には、その贈与財産価額が相続財産に持ち戻されるため、相続税の節税効果はありません。つまり、相続財産に持ち戻されるため、相続税という視点からは節税効果がない等が、デメリットとして挙げられます。

 では、相続時精算課税制度は、何のためにあるのでしょうか? (相続税の)節税ができない税制度なんて意味があるのでしょうか?

 日本全体を見た場合、多くの金融資産は、高齢者が保有している状況であり、この状況は今もなお加速する一方です。そのような中、景気回復のためにも、そのお金を有効に活用させようというのが、そもそもの狙いでした。ところが、当該制度の成立する前は、贈与に対する税制度は、暦年贈与のみで、暦年贈与では年間に110万円の基礎控除額しかなく、まとまった資金援助等をすると多大な贈与税が課され、多くの方の悩みの原因でした。

 そのような中、この制度により、一時的に大幅な贈与ができるようになりました。イメージとしては、マイホームの資金提供などです。マイホームを購入される際等のご両親からの資金援助は非常に有難いものです。数千万円する不動産を購入する際、両親から受ける資金援助は、本当に心強く、特に若年層の子育て世代にとっては、ありがたいものです。

 確かに相続時には相続財産としてカウントされてしまいますが、この纏まった資金が自己資金となり、返済比率や返済年数、金利優遇等へ与える影響はもとより、場合によっては、想定以上に金融機関からの借り入れることができ、結果、1ランク上の豊かな生活を送ることが可能となります。これだけのまとまった金額の贈与を受ける恩恵は、毎年、110万円の非課税枠を利用できる暦年贈与の恩恵を受けられなくなっても、構わないとなるのではないでしょうか。

存在意義はどこにあるの?

 この制度は、節税としては意味をなしませんが、相続の分野では非常に意義のある制度です。中小企業等の経営者一族の場合は、その株の購入資金として利用したり、特定の財産を相続時に揉めることなく次世代に引き継がせたり、遺留分の減殺請求への対策であったりとその利用方法は様々です。

 したがって、個人的には、相続時精算課税制度は、確かに税制度ではありますが、節税効果そのものは無く、子世代の豊かな生活や安定した生活等を送ることを可能とする制度であるという意味で非常に意義のある制度だと受け止めています。

※尚、相続時精算課税制度は、平成27年1月1日より要件が緩和されます。

 以上(執筆者:佐藤 雄樹)

《佐藤 雄樹》
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佐藤 雄樹

一般社団法人東京都相続相談センター 理事 学習院大学卒業後、財閥系不動産会社にて6年半勤務。企業をはじめ、地主・富裕層へのコンサルティングに従事。平成19年以降、会社更生・民事再生・破産案件に対して法律事務所と一体となり企業再生業務に従事。平成23年に相続コンサルティングに特化した(株)brandsを設立。平成25年には相続の実務家と(一社)東京都相続相談センターを設立。法律・税金・不動産等の各専門分野における垣根を超えた相続コンサルティングは各士業から絶大な支持を得ている。 <保有資格>:NPO法人相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産証券化協会 認定マスター、AFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、土壌環境リスク管理者、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、終活カウンセラー 寄稿者にメッセージを送る

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