平均寿命が男性も80歳を超え、命が尽きるまでの時間が長くなっていますね。その長い時間をいかに過ごそうか、最後はどうしようかということに興味を持つ方が増え、エンディングノート作成や終活セミナーなどを行うところも多くなっています。お盆の季節でもあるので、自分の死後について考えることもあるかと思います。今回は亡くなったあとどうして欲しいかの選択肢として直葬と献体についてふれていきましょう。
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死後にかかるお金 一番大きいのは「葬儀」
亡くなった後にはどのようなお金が必要になってくるでしょうか。一般的なパターンですと下記のようになります。
特にお金がかかるのは祭壇や会葬者への接待がともなう通夜・告別式などの葬儀。今はあまり大きな葬儀は行わず、家族葬などごく親しい人だけのささやかな葬儀を行う場合も多くなりましたし、中には葬儀そのものを行わないという選択をする方もいるようです。
ただし、たとえ葬儀を行わないとしても、必要となってくるお金はあります。昔は土葬にする場合もありましたが、現在は条例等で規制や土葬用の墓地がないなどの理由でほとんどが火葬です。そのため火葬にするための費用がまずかかります。
また、遺骨になったあとはどこにでも埋葬できるわけではありません。墓地、埋葬等に関する法律で墓地以外の区域に遺骨を埋葬することはできません。そのため、遺骨を納める場所を用意することが必要になってきます。(散骨など埋葬しないという選択もありますが、それに応じた費用はかかるでしょう)
ほとんど場合で、まず火葬と埋葬等には必要な費用が出てくることになります。
直葬とは
特に宗教などのこだわりがなかったり、ごく近親者だけでささやかに見送りたかったりする場合、通夜や告別式などの葬儀自体を行わず、火葬のみでシンプルに行うという方法が直葬です。
かかるのは基本的に火葬のための費用と言うことになりますが、火葬場に支払う費用だけではありません。荼毘に付すためには窯に入れるために必ず棺桶が必要になってきます。
また、法律で死亡時刻から24時間経過しなければ火葬してはいけないため、それまでご遺体を安置しておくための場所やそれに伴う費用が必要になる場合があります。なお、火葬場へ支払う費用も公営か民営か、公営の場合そこの住民かどうかで費用も異なります。これらの費用を合わせると、直葬とはいえ20万円程度は必要になってきます。
なお、遺骨になった後についても考えなくてはなりません。先に書いたように墓地以外へ遺骨を埋葬することはできないため、お墓などが必要になり、それは直葬の費用とは別です。また、お墓をすでに持っていても菩提寺などがある場合、葬儀を行っていない直葬では納骨を断られることもあるので事前に確認しておくことも大事です。
献体とは
死後にできる社会貢献の一つとして献体を検討する方も増えているようです。
献体とは医学部・歯学部の解剖学実習のために無条件・無償で提供することです。本人が希望していても肉親の同意がなければ献体は実行されません。そして、献体したご遺体がすぐに解剖されるわけではありません。それぞれの大学の実習予定などに合わせるためケースバイケースで遺骨が戻ってくるまでに数か月~数年かかる場合があります。
大学への遺体の搬送費用や解剖後の火葬費用は大学側が負担しますが、葬儀や遺骨が戻ってきてからのお墓に関わる費用などは必要になります。献体登録は大学の解剖学教室へ行いますが、火葬費用を大学側が負担するためか、葬儀代節約の手段として献体登録を希望する方も多く、現在申し込んでも断られる場合もあります。
献体は社会貢献として大学側のニーズに合わせて行われるものと考えてください。
筆者の父は献体登録をしていたわけではありませんが、癌で亡くなった際に献体しました。入院先の大学病院の方から依頼され、病変について学生たちが直に学べるようにと。
この場合病理解剖にあたり、一般の解剖学実習での献体とは違うのでしょうね。すぐに解剖し、数時間のうちに病気のある部分の周囲だけ解剖し縫合された遺体の状態で戻ってきましたので、通常の葬儀となんら変わることはなかったです。(一般の解剖実習の場合は、人体の構造を調べるため多岐にわたるので最終的に荼毘に付してから帰ってくることになるのでしょう)
いずれにしても一般的な葬儀と異なることをしていく場合、親族間の意見が分かれたり周囲の理解を得るために手間がかかったりすることも考えられます。エンディングについてはその人自身の希望もあるかと思いますが、周りの方々の考えも尊重してベストな選択をできるといいですね。(執筆者:柴田 千青)