「名義預金」と聞くと、「あぁ…」と思う方も多いはずです。

 相続対策において、『名義預金は、全くもって役に立たない』が一般的な方々の見解であり、我々のように相続を専門にしている者の中でも常識かもしれません。

名義預金とは

 そもそも、名義預金とは、何なのか…?

 名義預金とは、大雑把にいえば、親や祖父母が、配偶者をはじめ、子・孫等の名義で口座を開設し、預金や積立等を行うことによって、自らが死亡した際に、その預金等は、相続財産ではなく、その配偶者・子・孫名義の固有の財産としてしまい、相続税や贈与税の回避目的とする預金のこと。

 税の観点から言えば、その預金が、相続人等の名義の口座に入金されていても、その口座の通帳や届出印等を誰が持っているのか、また、実際に、その口座の名義人はその預貯金を自由に引き出して、利用することができたのか…等の点から判断されます。

 俗に言われる名義預金の場合、通帳をはじめ届出印の管理等は本人(故人)が管理している場合が多く、この場合、相続税法上は、故人の相続財産であったとみなされ、結果的に、相続税や贈与税の点からの節税対策にはなりません

名義預金の隠れた役割とは? 名義預金も立派な相続対策

 しかし、見方を変えると、非常に意義のある対策となります。名義預金は、確かに、相続税法上の相続財産となりますが、民法上は、その名義人の固有の財産です。

 例えば、いざ、お亡くなりになった時に、その百万円単位でかかる葬儀費用をはじめ、数十万円単位~百万円超が相場となるお坊さんへのお布施を準備しなければなりません。

 葬儀者さんは、事情によっては、多少の期間は待ってくれますが、意外にも、お布施は、待ってもらえません。一般的には、相続財産からそれらに要する費用の捻出(引出すこと)ができないため、その場合は、相続人が立替えなければなりません。

 ところが、現在の日本経済では、一般的に、この数百万もの大金を容易に立替えができる家族はそれ程多くはありません。ましてや、相続人同士が、元々、不仲であったり、故人が亡くなったのと同時に、葬儀も待たずに遺産争い等というケースも珍しくもありません。

 また、故人が亡くなってから、葬儀を終えるまでの時間は、本来、故人との思い出を回想したり、故人の死を惜しむ時間です。にも拘らず、お金の話で、頭がいっぱいになっては、故人も浮かばれません。

 では、そのような場合、どうすれば良いのか…。

 そんな時に役立つのが、名義預金です。相続税法上は故人の財産ですが、民法上は、名義人の財産です。配偶者の名義であったり、お子さん、お孫さんの名義の預金があれば、それを引き出すことは容易です。お金のことを心配する時間を最小限にとどめ、一番大切な時間を、悔いのないよう、しっかりと過ごす。これこそが、名義預金の隠れた役割であり、名義預金の担う立派な相続対策なのではないでしょうか。(執筆者:佐藤 雄樹)