相続:不動産(土地)の正しい価格とは 査定書の価格は適正なのか?

 不動産(土地)の評価と言っても、様々な評価の仕方があり、どの価格がどのように利用されているのか、いまいち分かり辛い点があります。

不動産の正しい価格 【1物4価】+αとは

 不動産の価格は、一般的に【1物4価】と言われ、上記の内、国や都道府県等が発表している「相続税路線価」、国(都道府県)が適正な価格と定める「公示(基準)価格」、固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産取得税等の基準となる固定資産税評価額の3つの公的評価と、時価(実勢価格)と呼ばれる不動産鑑定士による「鑑定評価額」があります。

 実は、これららには、上記に係数の記載のある通り、ある一定の関係があります。

 国をはじめ、各都道府県では、公示(基準)価格が適正な価格と定めているため、相続税路線価も、固定資産税評価額も、公示(基準)価格よりも低い価格を基準として算出されます。

市場流通価格とは何なのか? 各社で異なる査定価格

 前段は、このあたりまでとして、では、【+α】として記載のある市場流通価格とは何なのか? それは、「今、売却したら幾らになるのか?」という価格です。

 分かり易く言えば、不動産業者による「査定」価格です。ちなみに、蛇足になりますが、この「査定」とか「評価」については、『不動産の鑑定評価に関する法律』という法律に定められていますが、実は不動産鑑定士しか有料で行ってはいけないことになっています。にもかかわらず、不動産業者さんが「査定」を行えているのは、「無料」だからです。

 さて、いざ、不動産を売却しようとしたとき、皆さんは、何を考えますでしょうか。不動産は大きな売り(買い)物なので、どこに頼んだら良いのか分からなかったり、幾らが適正なのか分からなかったり…そこで多くの方は、インターネットの一括見積サービスを依頼したり、大手の不動産業者に依頼したり…。

 その結果、多くの方がビックリするのと同時に、考えることがあります。ビックリするのは、各社で査定価格にバラつきがあること。そして、考えることは、問答無用で一番高い金額を提示してきた不動産業者に依頼しようということ…。しかし、多くの場合、ここに間違いがあります

 まずは、なぜ、査定価格にバラつきがあるのかをしっかりと理解する必要があります。しかし、多くの方は、複数の査定書を見ると、査定金額が低い不動産業者の話なんて聞く耳も持たず、査定金額の高い不動産業者の話に耳を傾けるわけでもなく、ただ単に、一方的に、その高い査定金額で売れるものだという妄想の世界に入り込んでしまいます

市場価格の決まり方

 本来は、きちんと、なぜ、その価格になるのかをきちんと理解しなければなりません。その不動産業者がどのように考え、その査定額を算出してきたのか…最近では、その不動産の所在地や面積等を入力すると、勝手にその不動産の査定価格が出てくるようなシステムを導入している会社も少なくはありません。あながち間違っていないケースもありますが、そこは考え直す必要があります。

 それは、多くのシステムをはじめ、査定を行う場合、近隣の成約事例や販売中の物件の売出価格等を参考にします。所謂、昔ながらの取引事例比較法といわれ、バブルの時から引き継がれているように、「隣の土地が幾らだから、うちも幾ら」といった考え方です。この考え方自体を真っ向から否定はしませんが、少し、視野の狭い考えではないかと思います。

 何が言いたいのかというと、そもそも、不動産の売買とは、どんなに売り手が高く売りたくても、その不動産を「幾らでなら買うよ」という買い手がいて初めて成り立ちます。べらぼうに高い金額で売却を希望しても、買い手の想定と逸脱しては、成り立ちません。では、買い手は、何を考えて買うのでしょうか。

 都心部の土地はとにかく高いです。遠隔地の方から考えれば、信じられないかもしれませんが、1戸建の敷地面積が15坪前後等ということは、一般的です。

 よく、お子さんご夫婦がマイホームを購入するため、遠隔地にお住いのご両親に購入する金額、土地の広さ、建物の広さを報告すると、大概のご両親は、『土地の広さが狭すぎる。猫の額しかないような土地に何千万も払うバカはいない!騙されている!』といって、以後、一切、全く聞く耳を持たない等の話はよくある話です。

 そのような土地の高い土地で買い手が考えるのは、まず、「自分達が幾らの住宅ローンを組めるのか?」ということです。全てはココです。不動産業者に聞けば、住宅ローン専用のローン電卓を取り出し、自己資金、今のご年収や勤続年数等の聞き取りをすれば、ものの数分(秒)で概ねの借入可能額を教えてくれます。

 買い手の物件探しは、ここからです。自分の予算の中で、希望の建物の広さ、間取り、エリア、場所(駅からの距離)等が決まっていきます。言わずもがな、建物価格というのは、希望する広さが確定してしまえさえすれば、大手ハウスメーカー、中堅ハウスメーカー、工務店毎に、概ねの価格帯があるので、このあたりも確定します。

 が、何よりも、変動するのが、土地の金額です。当然、都心部から歩けたり、都内でも有数の高級住宅街であれば、土地の価格は非常に高く、一部の例外を除いては、都心から離れれば離れるほど、土地の価格は手ごろになっていきます。そして、土地の価格に非常に大きな影響を及ぼすのが、用途地域、建蔽率、容積率、高度地区、斜線制限等を含めた建築に係る各種制限です。

 建物全体で90平方メートルの延床面積のある家を建てようとしても、3階建が建つ場所であれば、1フロアあたり30平方メートルずつ確保すれば良いので、必要な面積は、一般的な都内の土地(建蔽率60%と仮定)でれば、50平方メートルですみます。

 しかし、高度地区や道路斜線をはじめとする何らかの制限を受けるエリアであれば、2階までしか建てることができず、1フロアあたり45平方メートルずつ確保する必要があり、延床面積90平方メートルの同じ広さの家を建てようとしても、必要とする土地の広さは、75平方メートルも必要となり、25平方メートル(約7.5坪)も広い土地を購入する事なります。言い換えれば、同じ大きさの建物を建てるのに、実に1.5倍もする広さの土地を取得する必要があります。

 都内の中でも23区で考えると、多少の違いはあるかもしれませんが、一般的な住宅地の坪単価(感覚的な平均相場)は、150万円前後です。この坪単価を先程の7.5坪に乗じてみると…1,125万円も多く支出しなければなりません。この金額の違いは、結果的に、とんでもない影響を及ぼします。

 そのため、不動産の買い手は、自身の予算の中から、最終的に妥協できる建物の広さ・間取り>エリア>場所(駅からの距離)>土地の広さという優先順位で検討します。視点を変えて言えば、建築の制限が同じような土地である場合、周辺で同じようなタイミングで住宅を購入する方は、概ね、同じくらいの世帯年収の方々となります

 つまり、そのエリア、場所で不動産を売却する時に考える必要があることは、その場所における建築上の各種制限に加え、世帯年収がどの程度の方が購入されているのかをリサーチすることです。とはいっても、素人がそんなことを簡単に調べることができません。そこで、1つのヒントになるのが、その場所の周辺における建売住宅の分譲価格です。

 建売住宅の分譲会社は、かなり綿密なマーケティングをしています。そのエリアで、どの程度の建物の大きさで、どのような土地の形状なのか…これだけで、概ねの販売価格がスラスラと出てきます。つまり、そのエリアでは、どのような間取り、建物の大きさにすれば、どの程度の世帯年収の方が購入をするので、分譲価格は、幾らくらいになるだろう…という計算です。

査定書の価格は適正なのか?

 よく考えれば、腑に落ちる方も多いと思いますが、土地を売却する時に、素人(一般の方)は、そこまで考えません。当然、売り手は、1円でも高く売りたいので、1円でも高く査定をしてくる不動産業者に依頼をしたくなります。しかし、ちょっと待ちましょう。その査定書は、上記の考え方がきちんと記されていますか?

 また、多くの不動産業者は、売り手の心理を知っています。売り手が1円でも高く査定書を出す不動産業者を選ぶことを。そのため、実際の適正な査定価格よりも高めの金額で査定することがあります

 実際に、高めの金額で売却活動をしても、買い手が現れず、「値下げしましょう」と平然と言ってきます。売り手からすると、期待と夢でいっぱいだった理想も覆され、精神的にも不安になります。そして、結果的には、他の不動産業者から提出された査定書の金額で売出されるケースが多々あり、わざわざ、高い金額で査定した不動産業者に売却活動を依頼した意味がなくなります。むしろ、不動産は鮮度が命ですので、買い手からすると、「数か月も売れなかったということは、売主は、元々、高めの金額で設定していたんだな。」等の悪い印象を持たれます。ましてや、売却理由が、相続税の納付のため等といった場合ですと、当然、足元を見られた価格となってしまいます。また、最初に依頼した不動産業者では買い手がつかなかったからといって、他の業者に変更しても、その業者からは、「この売り手は困っているんだな。早く売りたいんだな。多少なら、値引きができるな。」等という心理になりスパイラルにはまってしまします。

 とはいえ、一般の方にとって、いったい幾らが適正な価格なのか?は正直難しいと思います。1つの目安は、売却活動をはじめて3ヶ月で成約するか否かです。売却を依頼した会社が、その3ヶ月間でどのような販売活動をしてくれるのかをきちんと説明してもらうことも大事です。また、担当の方が、査定価格の成り立ちや、不動産マーケットをどれだけ真摯に、且つロジカルに説明してくれるかを見れば多少なりとも判断材料となります。

 前半では不動産の正しい価格。冒頭では1物4価の説明とし、+αである「市場流通価格」の説明をしました。後半では、「市場価格の決まり方」、そして、「査定書の価格は適正なのか」等について触れました。(執筆者:佐藤 雄樹)

この記事を書いた人

佐藤 雄樹 佐藤 雄樹»筆者の記事一覧 (41) http://www.tokyoto-souzoku.com/

一般社団法人東京都相続相談センター 理事
学習院大学卒業後、財閥系不動産会社にて6年半勤務。企業をはじめ、地主・富裕層へのコンサルティングに従事。平成19年以降、会社更生・民事再生・破産案件に対して法律事務所と一体となり企業再生業務に従事。平成23年に相続コンサルティングに特化した(株)brandsを設立。平成25年には相続の実務家と(一社)東京都相続相談センターを設立。法律・税金・不動産等の各専門分野における垣根を超えた相続コンサルティングは各士業から絶大な支持を得ている。
<保有資格>:NPO法人相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産証券化協会 認定マスター、AFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、土壌環境リスク管理者、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、終活カウンセラー
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