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「為替オプション付仕組み預金」の仕組みと注意点

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「為替オプション付仕組み預金」の仕組みと注意点

 さて、今回は、主に外国銀行で取り扱っている「為替オプション付仕組み預金」という金融商品について考えてみたいと思います。私のところにも、以前、利用している外国銀行から、上記の商品パンフレットが送られてきたことがありました。

 商品自体は、「預金」ですが、ただ単に固定金利で預けるのではなく、為替の変動によって、受け取るときに「円」のまま受け取るか、「外貨」で受け取るかが変わってくるという商品です。

購入に際して

<ステップ1>

 まず、契約当初に、現在の為替水準に対して、どれだけ「円高」になったら、満期時に外貨で受け取ることになるかの設定を、預金者が決めます。

<ステップ2>

 ステップ1で、契約時との為替の“差”をいくらに設定するかで、受け取れる金利が確定されます。

ケーススタディ

 例えば、仮に現在1ドル=100円として、100万円を預けるとしましょう。

 まず、このときに、この100円よりどれだけ「円高」になったら、円ではなく、外貨で受取らなければならないかの設定を行います。現在との差額の幅が少ないほど、もらえる金利は高くなりますが、その分、外貨で受け取らなければならない“確率”が上昇するというわけです。

 1カ月物の預金金利はその“差額”によって以下のようになっていました。

差額0円の場合  年利 10.85%(税引後8.68%)
差額1円の場合  年利 7.35%(税引後5.88%)
差額2円の場合  年利 4.65%(税引後3.72%)
差額3円の場合  年利 2.50%(税引後2.00%)
差額4円の場合  年利 1.35%(税引後1.08%)

 数字だけ見ると、非常に魅力的な「金利」が表記してあります。但し、年利表記なので、1カ月物の場合、受け取れるのはその“12分の1”となります。

 さて、もし私がここで、急激な「円高」はないと考え、「差額1円」の設定で契約したとします。そして、私の“読み”通り、1カ月の間、1ドル=99円以上の「円高」にならなければ、私は以下の金額を「円」で受け取ることができます。

元本100万円+(100万円×税引後5.88%÷12カ月※)=1,004,900円

※年利なので、12か月で割っています。

 と、1カ月で“4900円”の利息収入を得ることができるわけです。

 では、この時に、1ドル=97円まで「円高」が進行した場合はどうなるのでしょうか? 契約時の水準より「円高」となってしまったため、この場合は、私は「外貨」で受け取らなければならなくなります。

{元本100万円+(100万円×税引後5.88%÷12カ月)}÷99円※
=10,150ドル

※為替は時価ではなく、「差額1円」に設定した“契約レート99円”で計算されます

 となります。

 さて、この時点で100万円投資した資金は、「円建」では一体いくらになっているかというと、10,150ドル×97円(現在のレート)=984,550円 となり、“-15,450円”の損失となってしまいます。しかも、この場合、「円に戻す時」の為替手数料が、別途1円取られます。

 従って、実際にすぐ「円転」する場合は、10,150ドル×96円(TTBレート)=974,400円 と、“-25,600円”もの損失となってしまうわけです。今のケースは、“1ドル=100円”が“97円”の「円高」になった場合で計算しましたが、これが“95円”、“93円”と「円高」が進めば、さらに「円建」での“評価損”は大きくなります。

商品の仕組み

 すなわちこの商品は、設定した範囲の「差額」未満であれば、「固定金利(利息)」を受け取れますが、その「差額」以上になった場合は、大きく「為替損失」を受ける可能性のある商品なのです。

利益の最大値は…“利息”(但し、年利なので12分の1)

損失の最大値は…「円高」が進めば進むほどその時点の“為替差損”

 というような商品を購入することになります。

 先程の例でいうと、これは“1ドル=99円”のレートで、100万円の「円」を「買う権利」を、「4900円(※正確には、税引前の金利7.35%で計算した6125円)」で、“売る”取引をしているわけです。このような取引を「オプション取引」と呼んでいます。

 つまり、投資家は、「オプション料」として利息を受け取り、その代わり「円高」の“リスク”を買っている(買わされている)というわけです。投資家が受け取れる最大利益は、“金利(利息)”であり、それに対して“いくらになるかわからない損失”を請け負っている契約なのです。

 通常、このような「権利」を売って、オプション料を得るような取引は、金融の専門家やトレーダーが行うものです。確かな「読み」が無い限り、大きな損失を被る可能性のあるオプションを“売る”という行為は大変危険だからです。

 従って、この商品を購入する人は、「今より、ちょっと円高の時に必ずドルにしたい」という明確なニーズのある方に限定されるでしょう。ドル保有を前提とせず、投資の一環で考えるのであれば、「今後、円安基調になる」という確固たる“予測”が出来る人しか向いていないといえます

 但し、そのような“予測”が出来る人は、同商品ではなく、自分でオプション取引を行うか、FXで投資をすると思いますが…。

 このような“デリバティブ手法(オプション、先物、スワップなど)”を組み込んだ「仕組み預金」や「仕組み債券」は、一般の個人投資家ではその中身や“内在しているリスク”が良く分からないため、是非とも注意してください。

 「預金」という名前と、「ぱっと見、高い金利」にくれぐれも惑わされないようにすることが重要です。(執筆者:荒川 雄一)

《荒川 雄一》
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荒川 雄一

IFA JAPAN®株式会社 代表取締役社長兼CEO 国際フィナンシャルコンサルタント 投資顧問会社 IFA JAPAN®株式会社ほかリンクスグループ3社の代表を務める。中小企業診断士、日本FP協会認定CFP®。現在、金融機関に影響を受けない独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として、国内外の金融商品を用いた「海外分散投資」や「モデルポートフォリオ運用」を専門としている。中でも、海外ファンドを用いた「ポートフォリオ・マネジメント・サービス(PMS)®」の評価は高い。また、投資教育にも力を入れており、国立高知大学非常勤講師など、講演回数700回以上。日本経済新聞ほか、各マネー誌など執筆多数。 寄稿者にメッセージを送る

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