今回は「30代女性」からの相談のうち、特に最近、増えている「生命保険」、「マンション」、「再婚に伴う養育費の見直し」について生の実例をご紹介したいと思います。今回は「生命保険」についです。

死亡保障1,000万円は不十分か?

 これは30代夫婦(3歳の子供あり)の相談です。この夫婦は「万が一、夫が亡くなっても、妻子がお金に困らないようにするため」に生命保険(死亡保障額1,000万円)に加入していたのですが、離婚に伴いこの保険をどうするのかを思案していました。

 具体的には子供の教育資金が約1,200万円(小中高は公立、大学は私立文系の場合。文部科学省の平成18年「子どもの学習費調査」)妻の生活費が2,700万円とすると(妻が35歳で80歳まで生き、現在、パートタイマーで年120万円の収入を得て、総務省「家計調査」によると、家賃を除き年180万円が標準的な支出なので、その差額の45年分)死亡保障は1,000万円では、一見、足りなそうですが、そんなことはありません。

 夫婦が婚姻している場合、死亡保障額を必ずしも「妻の一生分の生活費」、「子が独立するまでの養育費」と同額にする必要はありません

 なぜなら、夫が会社員の場合、会社から妻へ死亡退職金が支給されますし、夫が保険以外の財産を残せば、妻子が相続したりするからです。また夫の両親(子の祖父母)が節目節目で教育資金を贈与してくれることも考えられます。

離婚すると死亡保障の見直しが必要になる2つの理由

 しかし、夫婦が離婚すると、2つの理由で、死亡保障の見直しが必要になります。これはどういうことでしょうか?

 まず1つ目は、死亡保障の減額を余儀なくされることです。

 残念ながら、夫は妻への保障を続ける気がないので、その分を減額すると言い出したのです。離婚する夫婦は基本的に喧嘩別れなので、妻への嫌悪感や不信感を考えると妻への保障を継続することは難しいです。

 そして2つ目は死亡退職金や相続、祖父母からの贈与が当てにならないことです。

 離婚後、夫が未婚とは限らず、途中で再婚したり、再婚相手との間に子供が産まれる可能性もあります。そのような場合、死亡退職金については再婚相手が受け取りますし、相続財産についても、(元)妻の子の法定相続分は、(元夫)夫が未婚なら、すべて相続できますが、(元夫)夫に妻子がいる場合、4分の1まで減少します。そして夫の両親(子の祖父母)が離婚後、元妻に対し、まとまった金額の援助をしてくれたケースはほとんど見たことがありません。

 つまり、保険は離婚に伴って「妻子のため」から「子のため」に切り替わるから保障額を減らす一方、妻側から見れば、他の財産等を期待できない以上、保険は唯一の「頼みの綱」であり離婚前に比べ、その重要性は高まるのです。

離婚後、保険は「養育費の担保」

 ところで離婚の話し合いでは、先に養育費を決め、後に保険のことを決めることを勧めました。妻が子の親権を持ち、夫が養育費を支払う場合、何事もなく、夫が最後まで養育費を支払うことができれば良いですが、もちろん、病気や交通事故等で、途中で夫が亡くなる可能性もありますが、生命保険を継続しておけば、妻は死亡保険金を使い、子を育てていくことができます。

 このように保険は離婚後、「養育費の担保」と言えるわけです。養育費の合計(離婚月から最終回まで)と、死亡保障額を一致させておけば、極論ですが、離婚直後にいきなり、夫が亡くなっても、妻は養育費合計額に相当するお金を手にすることができます。

 例えば、子供が3歳で、養育費を毎月8万円を20歳まで支払う約束をした場合、合計で1,728万円なので、死亡保障額を前述の1,000万円から1,700万円まで増額する必要があります。もちろん、保障額を上げれば、保険料も上がりますが、夫も「自分が死んだら、子供はどうなっても構わない」とは口が裂けても言えないので最終的には保険を継続し、死亡保障額を増額し、保険料は夫が負担するという内容で話がまとまったのです。(執筆者:露木 幸彦)