来年からの相続税基礎控除額の減額にともなって、あらゆるところで相続対策という文言を目にします。TVの画面や新聞紙上や書店にならぶ書籍等々…。相続対策とは具体的に何をしておくことなのでしょうか?

一般的な”3つの相続対策”

 一般的には、第一には、円滑・円満に相続人間の相続財産の継承がスムーズに行われるように配慮した遺産分割の対策といわれています。どの子供に何を遺してあげていってあげようか、それを決めることができるのは、その財産を遺して逝く本人のみです。

 とはいえ、自分が亡くなったあとは、子供同士で仲良く話し合って分けてもらえれば構わないという方もいらっしゃるでしょう。ただ、子供同士に任せてしまうと、後々”争族”となってしまうことが多いようです。争族対策には、まずは遺言書を遺しておき、自分の思い描いた形での遺産分割を円満とはいかずとも円滑に進められるようにしておくべきでしょう。

 そして、第二には、相続税がかかってくるか否かにもよってきますが、相続税がかかってきそうな場合には、其の納税の手段を考えておく、いわゆる納税対策が必要となってきます。

 現預金で、納税資金として充分であるのか、現預金で不足する場合には、不動産や株式等を売却して充当するのか、相続発生前にあらかじめ考えておくことは、とても重要です。

 最後、第三には、相続税の負担を下げるべく対策を講じていく節税対策となります。生前贈与や貸家の建築やタワーマンションの購入など、その対策方法は多種にわたり、その人にとって最適な方法を見出していく必要があります。

 このような、相続対策を講じいていく場合には、当たり前の話ですが相続財産の全体を見据えたうえでの何のために行う相続対策であるかの目的を明確に考えておくことが、とても重要です。

目的の明確化が大事と痛感した実際の例

 仕事がら、土地活用のご相談を受けることがあります。例えば、駐車場に建設協力金でコンビニの建物を建てて貸しませんか、との提案を受けているが、この立地でコンビニで問題はないでしょうか…といったような相談がありました。

 現地の調査等により、コンビニで問題はなさそうと回答しましたが、実はコンビニだけの案の他に、コンビニの上に4層の賃貸マンションを併設する案もでていましたので、どちらのほうがいいかとの質問もありました。

 大井町と西大井町(東京都)の約中間地点に位置することから、住居系の計画は全く問題もなく、長期で考えればコンビニ併設の賃貸マンションが理想的ではありました。

 この相談を持ちかけたご主人は、大手企業のサラリーマンで生活費には全く心配のない方でした。そして、この駐車場の他にも先代からの相続でいくつかの不動産を所有していました。けっこうな資産家です。その御主人はこの駐車場にとってよりよい土地活用はなんであるしか頭にはないようでした

 この質問に答える前に、実はこの相談者ご夫妻にはお子様がいらしゃらなかったので、この駐車場後の土地活用は誰のために遺してあげることを目的として考えているのですかと聞きました。

 そして、コンビニだけの計画は建設協力金方式であり契約期間途中で撤退すると建設協力金の残金の返済義務はなくなることとなっていましたので、建設協力金返済後の賃料の残金は何の心配もなく使えることをお伝えました。

 賃貸マンション併用の場合は、賃貸マンション部分を借入する計画でしたので当面15年くらいはローン返済後の余剰金には手をつけずにローンの残債近くを貯めておくほうが無難であることをお伝えしました。

 要は、当面15年から20年は、コンビニだけの計画のほうが、何の心配もなくお金が使えますが、賃貸マンション併用の方は、15年から20年後以降は、より多く使えるお金は増えるとお答えしました。

 そこで、お子様がいないのに例えば20年後(相談者は60歳くらいの方でしたので20年後は80歳)に、潤沢にお金が使えるようになっても、何に使いますかと聞きました。

 超高級老人ホームには入居できましすが、それよりも、元気に動き回れる70代までに何の心配もなくお金を使ったほうがいいのではと、私の所感を述べさせていただきました。

 結論、私であれば、子供がいれば賃貸マンション併用、子供がいなければコンビニのみ、の計画にしますとお話しました。

 ただ、甥や姪に、より収入のあがる不動産を遺してあげたいのであれば、賃貸マンション併用にしますがと付け加えてお話はしました。

 極論、誰に遺してあげたいかが明確になっていないより稼げる不動産を遺すために老後の元気な期間を我慢して生きるよりも、奥様が御一人になったあとの老後の資金をきちんと準備したうえで、楽しく使ってしまうのも一つの考え方ではないでしょうかとお伝えしました。

 この、お話で、コンビニだけの計画で進められることとなりました。後日、ハウスメーカーの担当者から、無事、コンビニの計画が完了しましたとのお礼の連絡がありました。その際、本当はマンション併用が有難かったんですがと冗談まじりに言われてきましたので、お子様がいらっしゃらなかったのでとご説明しました。その時に、その担当者は、初めてそのお客様にお子様がいないことを知ったそうです。

 なんで確認しないのとお話したところ、失礼になるから聞けないとの答え…。結局は、ハウスメーカーの営業も、相談者もその駐車場に新たな土地活用をすることによっていくら儲かるとか、貸家建付地でいくら相続税の評価額が下がのると…そのようなお話に終始していたわけです。

 誰に何を遺してあげたいのか、毎年の使えるお金を増やしたいのか、納税の資金源としたいのか、節税も目的としたいのか、といったような何のための相続対策かを、よくよく考えて実行していくべきでしょう。

 ただ、何をすべきか、その効果として何が得られるかが、分からないと目的や目標は設定しにくいもの。何をすべきか、その結果として何の効果が得られるのかは、全ての土地の調査をして、現状分析を行ってから考えつくものです。まずは、調査、現状分析、を行ってから、目的や目標設定を考えてみましょう。(執筆者:荒木 達也)