本年もあと1カ月となってきました。あっという間に2014年は過ぎ去っていったという印象をうけています。

 今年は、何といっても消費増税でした。TVでは、新年早々から、消費増税後の景気状況についての熱い議論が交わされていました。今年4月に消費税が増税されて経済は落ち込み、来年10月の消費税増税は1年半延期されることとなり、衆議院は解散総選挙となりました。あわただしい年末となってきました。

 アベノミクスで円安、株高は実現したものの、その結果はさらなる「格差」を生み出しているようです。大手の輸出業者は潤い、中小の企業は円安による原料高が利益を圧迫しています。とにもかくにも、新しい政権に大きな期待を寄せるしかなさそうです。

“相続税の増税”と企業の動き

 さて、あと一月後(2015年1月)には、いよいよ”相続税の増税時代”の幕開けです。

 相続税は、相続により財産が移転したことにより発生する税金ですが、平成24年度では年間の死亡者数は125万6359人、そのうち相続税の課税対象となった方は5万2394人、約4.2%の人が課税対象となったわけです。ここ数年の課税対象者の方の割合は、4%台前半で推移しています。

 来年からは、相続税の基礎控除額は現行の60%まで減額されることとなります。この改正により、相続税の課税対象者となる方は、約1.5倍くらいに増える見込みとも言われています。

 この改正に向けて、住宅会社は相続税の課税価格を低くできる小規模宅地等の特例を活用すべく2世帯住宅の提案を奨めてきそうです。

 また、生命保険会社は相続税の生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)に余裕のある方に向けて高齢(85歳~90歳くらいまでの商品があります)でも、入院をしていなければ加入できる無告知型の商品(終身保険)等も販売されてきました。

 相続税法で定められた合法的な相続税を下げられる方法ですので、個人的には活用しない手はないと思っています。

 来年からの相続税の改正で最も影響を受けるのは、改正前においても相続税がかってくるような資産家の方ではなく、路線価の高い地域に住宅を所有している一般のサラリーマンの方かもしれません。

 現行の基礎控除額でも、相続税が何千万も何億円もかかりそうなかたは、すでに相続税に関しての心の準備や具体的な対策を考えている場合が多く、基礎控除額が下がった分、新たに何か対策を講じるか否かを検討しているといった感じと思います。

 相続税がかかるなどとは夢にも思っていなかったサラリーマンのかたにとっては、そもそも、相続税の仕組みそのものにも馴染みが薄いでしょう。

 そのような方達に対して、来年からの基礎控除額減額の影響で相続税がかかってきますよ、その対策として生命保険に加入しましょうとか、2世帯住居を建てましょうかとか、といったような営業の攻勢が始まることが予想されます

相続税対策ブームに流されるな

 当然、その手法は王道の節税の手法ですから、是非とも、その提案には乗っておくべきでしょう……なのですが、一概にそうともいいきれず、2世帯住居ですむことが、親子とも希望してのことなのか、もしかしたらお母さんはお父さんが亡くなった後の老後は自分の生まれ育った故郷で親が相続で遺してくれた家で住みたいと思っているかもしれません。

 あまり、聞かないケースですが、例えば故郷が熱海とかで、老後は温暖な気候の土地で温泉につかりながら、のんびりと兄弟のそばで暮したいということもあるかもしれません。

 たとえば、そのような思いがあった時に、税金の節税のためにあえて、東京に2世帯住居を建てて暮らしていくのが幸せなのか、も考えなければならないでしょう。

 ここで、よくある落とし穴は、税金対策という世の中のブームに煽られて、つい、その時流に乗ってしまうということがあります。消費増税の時の住宅の駆け込み購入などは、よい例でしょう。

 時流にのってしまう前に、そもそも、小規模宅地等の特例の適用がなかった場合には、相続税はいくらかかるのか、その相続税は土地を売却しなくても支払うことは出来るものなのか、もっと言えば、そもそも論として、子供が息子と嫁いだ娘の2人だったとして、どのように遺産分割するのか、家は長男に遺すのか、遺言は書くのか、遺留分は侵害しないか、遺留分を侵害するときには代償分割の資金の手当てはできるのか…等々。

 いきなりの節税対策を講じてしまう前に、まずは、遺産分割を考えるべきでしょう。円満とはいかずとも円滑に遺してあげたい財産を遺してあげたい人に遺せるように手立てを講じておく。公正証書遺言を遺しておく。さらには自分の気持ちや必要なことをエンデイングノートに書き記しておくなど。

 そして、何もしなければ相続税はかかってしまうものなのか、いくらかかるのか、かからないために2世帯住宅に住むのか、節税のための2世帯住宅で家族全員が幸せなのか、いろいろな場面を想定して、税金の負担などを比較しながら決めていくべきでしょう。

 もしかしたら、5年後には、相続税の更なる改正があり抜本的に仕組みが変わってしまうかもしれません

 節税も大切ですが、まずは、その節税対策が皆の希望するものなのか、否か、とはいえその節税対策を講じないと税金が1000万円もかかってくるとした場合にどうするか、今回の相続税改正に向けての準備は、とにもかくにも、相続税の仕組み、特に小規模宅地等の特例のように大きな節税効果が期待できるものの適用要件を、まずは、知ってみることからはじめてみてはいかがでしょうか

 まずは、いろいろなことを知る。そのうえで最適と思われる手段を選択していくということが、何の後悔も残らないものと思います。(執筆者:荒木 達也)