国民生活白書によると、18歳から34歳の未婚女性が理想とするライフコースのうち、「子育てのため一旦退職、落ち着いたら再就職」と考えていても実際に理想通り再就職ができているのは6割弱なのだそうです。
働きたい事情の5割近くは、経済的理由という結果がでていながら育児の負担が大きいため半数は4年以上のブランクができてしまい、やっと再就職しても6割はパートなのです。
正社員として再就職した割合はブランク1年未満で2割弱、2年を超えると1割に遠く及びません。
転職が珍しくない時代ではありますが、高いハードルであることを独身時代から認識し正規非正規問わず「今、雇われの身であることのメリット」を出産・育児に関する給付金制度から認識しておきましょう。知らずに退職するのと、制度を知ったうえで検討して退職するのでは大違いです。
目次
妊娠中や出産にかかわる給付金
以下に3つ挙げますが、すぐ下の2つは国民健康保険や扶養家族である場合には適用されない「雇われの身であるメリット」です。
≪傷病手当金≫
職場で健康保険に加入しているのであれば、妊娠中切迫流産などで入院や自宅療養となった場合、給料が出なくなって4日目以降1年6か月の間、収入の3分の2が保障されます。
≪出産手当金≫
産休中にもらえる手当です。傷病手当金と同じく収入の3分の2が保障されます。収入は1日当たりで換算します。
たとえば
→日額9000円×{産前6週間(42日)+産後8週間(56日)}=58.8万円
しかも、出産手当金をもらっている間は健康保険料・厚生年金保険料は届け出をすることで免除されます。
≪出産育児一時金≫
こちらは国民健康保険でも貰えます。出産は病気とは違うという考えが元になっていて、かかった医療費が全額自己負担になる分の埋め合わせとして支給されます。産科医療保障制度がある病院だと42万、そうでない場合は39万です。
出産する本人が保険料を払っていない場合は、ご主人の健康保険から同額が支給されます。この場合呼び方が変わって”「家族」出産育児一時金”になります。42万、もしくは39万より出産費用が安ければ差額が手元に入ります。
育児中の給付金
≪育児休業給付金≫
産後8週間が過ぎた日から雇用保険より給付されます。事業主を通じハローワークで手続きが必要です。こちらは健康保険とは別物ですから、国保の方も雇用保険に加入していれば使えます。給付額は下記の通りです。
賃金日額が9000円なら×50%×(365-56日)=139万となります。
もちろん1歳になるまで待たずに働きに出ることは可能です。その場合は仕事を休む期間が短縮されますので給付金も減ります。
※今年の4月から最初の半年(180日)は67%に増額されています。
会社員ママの場合は健康保険からは出産手当金と出産育児一時金の両方がもらえます。雇用保険からは育児休業給付金がもらえます。出産の為退職をした方には7年前から出産手当金の給付はありません。
いわゆる扶養内パートで雇用保険料を引かれていたママは復帰前提でパートを休む場合にご主人の健康保険から家族出産育児一時金をもらい、雇用保険から育児休業給付金をもらうことになります。
専業ママの場合はご主人の健康保険から家族出産育児一時金だけもらうことになります。
育児時短勤務中の制度
≪厚生年金3歳未満の子の養育特例≫
時短勤務で収入が下がり、将来の年金額も減ってしまうところですが、届け出ることにより、保険料は減った報酬をベースに少なく支払い、将来もらえる年金額は産休前の高い報酬をベースに計算されます。
事例の月収27万の方でいえば、産休・育休をとる場合と退職してしまう場合とでは200万以上の差が生じます。復帰後の収入、将来の年金に至るまで経済的には産休・育休からの復帰がもっとも有利です。身体第一で退職しなくても休職(傷病手当金)を利用することで身体もいたわり、財布もいたわることができるのです。
制度を知らずに安易に退職してしまうのはあまりにも勿体ないと思います。花嫁さんになる前にぜひ知っていただきたい制度と思い紹介させていただきました。(執筆者:前田 菜穂子)