いよいよ、来年1月1日から相続税の基礎控除減額による相続増税時代の幕開けです。東京や大阪などの大都市圏内においては、不動産は戸建住宅のみといった方達も相続税がかかってくると予想されています。

 たまたま、何代にもわたって都心部に住んでいた…その不動産は、住むためのものですから、何も利益を得るものでも、儲けを期待するものでもない…それでも、路線価が高ければ、相続税はかかってくるわけです。高い財産価値のあるものを親から継承し財産が増えたという事実に対して相続税は課税されます。

 収入を得ない財産を相続で取得したことに対して税金が課されると、当然ながら、その納税には苦慮することとなります。毎年、毎年、一定の収入を得られる財産に対して税金が課されるのであれば、まだしもですが…。

小規模宅地等の課税価格計算の特例とは

 そこで、国は、住むための不動産を相続で取得した場合に、相続税を軽減できる小規模宅地等の課税価格計算の特例の規程を設けています。最大330㎡までの居住用の建物の敷地に供されている宅地は、最大限80%まで、軽減できます。

 そして、この時用が受けられることの出来る要件が、いくつか定められています。基本は、親と同居している子供が適用の対象となります。(それ以外の要件もありますが)

 こうなってくると、ハウスメーカーは2世帯同居住宅の売り込みに攻勢をかけてくることになります。相互の世帯に快適な独立空間を保ちながら、何かあった時には相互協力できる住み方ができる、そして税金を軽減できるメリットもある。まさに、いたれりつくせり…というような単純な話の訳にもいかず、そこには、いろいろな問題が潜んでいます。

 姑と嫁の関係…2世帯同居にして離婚にでもいたったら、それこそ本末転倒なこととなってしまいます。

節税目的の安易な同居に注意

 そして、何といっても気をつけなければいけないのが、遺産分割の方法を考えておくことでしょう。

 長男と二男、長女の3人の子供がいて、長男が2世帯住居で同居していた場合で、遺言等の何の準備もなく2次相続が発生した場合、父親の相続の時には母親が間にはいって問題は表面化せずとも、母親の相続のときに遺言書等の準備がなされていないと、兄弟間の遺産分割協議の話合いで、2世帯住居の敷地となっている母親の名義の土地に相当する金額までをも均等に分けろと求めらることも考えられます。

 そうなってくると、遺産分割協議をまとめるためには、その土地を含んだ相続財産を均等に分けないとならないでしょう。そのときに、他の兄弟に代償して支払える金融資産があれば2世帯住宅は維持できますが、それがないと売却して区分するといった事態になりかねません。

 2世帯住居を建てれば節税につながるといったことの時勢の流れにのって、親と同居するのだから問題は起きないだろうとの希望的観測でことをすすめるのはご法度でしょう。

 遺産分割までも考えて、遺言書を遺しておくとか、他の子供にも配慮した分割を考えるとか、そういった準備が必要です。

 もしかしたら、税金を払うことになっても、嫁や姑の関係を考えた場合に無理して2世帯住居に住まないほうが幸せな暮らしができるかもしれません

 相続への備えは、子供への分割を考える、何の軽減もない場合の相続税の予想を立ててみる、そして納税は可能か検証してみる、そして節税対策が幸せにつながるものかいなか考えてみる。

 もしかしたら、同居よりも、老後は自分の故郷でのんびり温泉三昧の人生というのもありかもしれません。相続にむけての老いじたくには、分割、納税、節税の三位一体で考えてみてください。(執筆者:荒木 達也)