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相続増税 ~タワーマンションを活用した節税対策のリスクと注意点~

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相続増税 ~タワーマンションを活用した節税対策のリスクと注意点~

遂に平成27年が到来し、相続に関連する分野の方々にとっては大きなビジネスチャンスの幕開けと考えていらっしゃる方も多いようです。


 ご存じの通り、平成27年以降に発生した相続については、従来に比べ相続税が増税となります。平成25年度税制改正というかたちで纏められていますが、大きくは全7項目の改正がある中で、明確に増税の要因となっているのは、『基礎控除額の4割カット』、『税率(最高税率含む)の改定』の2項目です。そして、これらが適用されるのが、平成27年以降に発生した相続となります。

 この改正により、課税割合といって相続発生件数に対する相続税納税件数の割合が、現状で4.3%(100件中4件程度)であるものが、全国平均で7%前後になると予想されており、東京都内では、10%前後、都内23区では20%前後、都心5区では25%前後と予想されている方もいらっしゃるようです。

 では、なぜ都心5区、都内23区、東京都内は全国平均と比較して課税割合が高いのかというと、単純に富裕層が多いからという回答もありますが、実は、そうではなく、地価が高いことが要因の1つといえます。

 そのため、都内のサラリーマン世帯であっても、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例などの適用要件にあてはまれば、結果的に相続税を納税しなくてもよい場合でも、相続税の申告自体はしなければならないという方が少なくありません。むしろ、都内では、このような方が、圧倒的に増加するため、都内で資産税に強い税理士さんにとっては嬉しい悲鳴かもしれません。

最も有効な節税対策は?

 とはいえ、富裕層にとっては、基礎控除額の削減をはじめ税率の改定は、非常に痛い悩みであり、節税対策を必死に検討される方が非常に多い状況にあります。では、節税対策を行う上で、最も効果的なものは何か? というと、多くの場合、その対象は、不動産となります。

 これは、土地・建物(不動産)についての相続税法上の評価と、実際に市場で流通する価格の乖離が大きく、土地に関していえば、都内であれば、多くの場合に利用される相続税路線価と市場流通価格の乖離が、概ね3割程度もあること、また、建物についても、相続税法上は、固定資産税評価額がベースとなるので、同様に時価と比較すると3割程度の乖離があります。

 更には、建物を賃貸していれば、土地・建物ともに評価減となったり、ご自宅として利用されている場合は、小規模宅地の特例等が適用できる場合は、8割減の評価になる等、トータルで考えると、かなりの評価減となります。

 その中でも、最も注目を浴びているのが、タワーマンションの購入による節税対策です。実体経済では、マンションの住戸の価格とは、1フロア上がるごとに100万円近く増額され、最上階などとなると、最上階プレミアムが生まれ、1フロア異なるだけで、数百万円価格が高い等ということはよくあることです。

 では、相続税法上は、どのような評価になるのでしょうか? 実は、相続税法上は、その対象となる建物が1階であろうが、55階の最上階であろうが、マンション全体の固定資産税評価額に、共有持ち分を乗じた価格が建物の評価となり、土地についても、一段の土地の評価額に共有持ち分を乗じた価格が土地の評価額となります。

 様々なタワーマンションにおいて、実際の市場流通価格と相続税法上の評価額を統計でみると、中には9割程度も評価減を受ける住戸もあり、一般的には8割前後の評価減となります。つまり、2億円もするマンションが相続税法上の評価額では2千万円になる可能性もあるということで、当然、この話を聞けば、多くの富裕層は、この話に飛びつきます。

タワマン節税のリスクと注意点

 確かに節税効果は高いですが、決してプラス要因ばかりではありません。

 判例でも、被相続人がお亡くなりになる直前に、相続人が被相続人の名義で億ションを購入し、相続税の申告が完了した後、すぐさま売却したというケースにおいて、相続税法上の時価の定義について争われた判例もあります。

 一般的には、財産評価基本通達に従うため、上述のような評価方法が妥当とみなされますが、このケースの場合、この億ションの購入目的が節税目的であるということがあからさまであったということも含め、市場で流通した価格(つまり2億円で売れた場合は2億円が)が相続税法上の時価であるという判決がでました

 節税目的で購入されると、そのマンションの利用やその後の活用方法にも難点が出てきます。最も注意していただきたく忘れがちなのが、東関東大震災の直後、都内の高級タワーマンションにお住いの超富裕層が、こぞって、低層マンションに引っ越されたことです。

 それまでは高層マンションの最上階にお住まいで鼻高々であった彼らは、見事な程に城南五山と呼ばれる山手線「目黒」から「品川駅」にかけての島津山、池田山、御殿山、花房山、八ツ山の高台エリアへと引っ越されました。何を隠そう、あの大地震により、多くのタワーマンションは免震構造のため、上層階に行けばいくほど、揺れが大きくなるため、「耐え難い恐怖だった」と多くの方が仰っていました。

 また、エレベーターもストップし、40階にお住まいだった方は、階段で地上まで降りようとしましたが、30階手前迄、降りたところで気が遠くなり、再び40階迄、折り返し昇ったようで二度とタワーマンションに住みたくないという言葉も耳にしました。また、福島原発の問題等があったことも起因し、外資系企業そのものが東京撤退や日本撤退等もあり、タワーマンションに居住していた多くの外資系の方々も同様に引っ越され、タワーマンションは空室率が大幅に上昇し、当然、賃料も大幅に下がりました。

不動産売買時のリスク

 別の角度から言えば、相続コンサルティングを専門にしている不動産業者の中には、既存の不動産を売却し、節税対策としてタワーマンションを購入し、相続税の申告が完了した後、各相続人の好きな不動産への買換えを推奨するケースも多いようですが、実は、こちらについても幾つかの懸念事項があります。

 代表的なものとして、そこに要する流通コストです。不動産の売却、及び購入には不動産仲介業者に対して支払う仲介手数料が生じます。上記のケースでいえば、既存不動産の売却、タワーマンションの購入&売却、買換え不動産の購入の4度にわたっての仲介手数料が生じますし、取得に当たっては、司法書士の報酬、登録免許税、不動産取得税等のコストも要し、塵も積もった流通コストの合計額は、かなりの額に該当します。

 それだけでなく、タワーマンションをいざ売却しようとした際、このような高額な物件を購入される実需の場合、多くの方は、新築を好まれ、中古で構わないという方は、多くありません。同様に賃貸に供するつもりでも、高額な賃料を支払う方が、上記の通り、東関東大震災以降、顕著に減少していることから、単に節税目的の為にタワーマンションを利用するというのは、机上のシミュレーションでは確かに効果はあるように思えるかもしれませんが、実際に売買した際の成約価格は、需要と供給という流通市場にて決まるため、現時点と比較し、売却時期が長期になればなるほど、その価格は神のみぞ知る領域になる可能性があり、一般のマンション、戸建住宅と比較して、その乖離は非常に高いといえます。

節税効果は高いがリスクも高い

 とはいえ、タワーマンションは、節税効果が高く、窓から見えるあの絶景は何物にも代えがたいものがあり、そのような意味で魅力的であることは間違いありません。但し、常日頃からお話ししているように、『節税の為に~』というのは、本来の在り方としても? です。

 実際に本当に、タワーマンションに住みたいという希望があったり、タワーマンションを購入して富裕層向けに高額で賃貸したい等という節税とは別の動機が強いのであれば、それは結果的に節税となるため、上記のようなリスクがあることを認識されたうえで、検討されるのであれば、否定的になる必要はないと思いますし、私自身も必ずしもタワーマンションの購入に否定的なわけではありませんが、非常にリスクも高いということは頭の片隅に留めていただければと思います。本年最初の相続コラムとなりますが、本年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。(執筆者:佐藤 雄樹)

《佐藤 雄樹》
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佐藤 雄樹

一般社団法人東京都相続相談センター 理事 学習院大学卒業後、財閥系不動産会社にて6年半勤務。企業をはじめ、地主・富裕層へのコンサルティングに従事。平成19年以降、会社更生・民事再生・破産案件に対して法律事務所と一体となり企業再生業務に従事。平成23年に相続コンサルティングに特化した(株)brandsを設立。平成25年には相続の実務家と(一社)東京都相続相談センターを設立。法律・税金・不動産等の各専門分野における垣根を超えた相続コンサルティングは各士業から絶大な支持を得ている。 <保有資格>:NPO法人相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産証券化協会 認定マスター、AFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、土壌環境リスク管理者、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、終活カウンセラー 寄稿者にメッセージを送る

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